コロナ禍をきっかけに事業を見直し、再構築するための7つのステップ

第1回 コロナ禍でも事業を骨太に継続させるための肝を考えよう

2021年1月7日

新型コロナウイルスが世に出現してから1年が経過しました。第1波、第2波、第3波、といわれるような感染拡大の波が周期的に訪れ、最近では変異型と呼ばれるような感染力が高まったウイルスも出現しています。

この間、緊急事態宣言が発せられたり、いわゆる「三密」を避ける行動様式が求められたり、都道府県境を越える移動に自粛要請がなされたりと、中小・小規模事業者を取り巻く経営環境は、大きくそして目まぐるしく変化しています。残念なことに、昨年後半からは自殺者も増加傾向にあり、コロナ禍の影響も無縁ではなさそうです。
本シリーズでは、「いつまでも今のまま立ち止まってはいられない」「コロナ禍を逆手にとって事業を発展させよう」という前向きな姿勢で事業に取組もうとする中小規模事業者の皆さまに向けて、事業を見直し、再構築するためのヒントとして7つのステップを連載でご紹介していきます。

第2回 ステップ(1) 資金繰りの見通しを立て、再構築に向けた自社の余力を知ろう
第3回 ステップ(2) 売上だけではなく、利益と資金から再構築を考えよう
第4回 ステップ(3) 貴方のご商売でのこだわりや心がけはなんですか
第5回 ステップ(4) 顧客や世の中のニーズの変化を読み取ろう
第6回 ステップ(5) 事業再構築の方向性は大きく4つあります
第7回 ステップ(6) 再構築の方向性を経営革新計画などで「見える化」しよう
第8回 ステップ(7) 再構築のための資金流出を最小化するために支援制度を活用しよう

第1回となる今回は、7つのステップの前提として、コロナ禍でも事業を骨太に継続させるための肝について考えてみます。

1.プロサーファーは波の変化を無視してプロサーファーたり得るのか

サーフィンやウインドサーフィンは、自然現象であるが故に気ままな「波」や「風」の変化を読みながら、自身の磨き上げた「技」を最大限に表現していく世界です。

どんなに「技」があったとしても、波の状態や風の状態が凪ぎであれば、豪快な技を表現することは極めて困難になります。
中小・小規模事業の経営においても同じことが言えるのではないでしょうか。コロナ禍によって起きた経営環境の大きな変化を冷静に読んでこそ、技が活かせるポイントやタイミングが見えてくるというものです。
あなたが営む事業の周りにどんな変化が起きているでしょうか。どこが競合で、その競合はコロナ禍でどう事業を見直しているでしょうか。7つのステップに入る前に、周りの環境変化を観察してみましょう。

2.老舗はなぜ老舗なのか

株式会社帝国データバンクが2019年1月に公表した「老舗企業の実態調査(2019年)」によれば、2019年中に業歴100年となる企業を含めた「老舗企業」は全国に3万3259社存在するとのことです。

株式会社帝国データバンクによる老舗企業の実態調査(2019年)

これらの100年以上続く「老舗企業」は、なぜ永く事業を継続することが出来たのでしょうか。100年と言えば、この間には第2次世界大戦やバブル崩壊、リーマンショックなどの環境変化を経験してきた世界です。
1907年に創業し日本で初めて板ガラスの工業生産を開始した旭硝子株式会社(現AGC株式会社)は、様々な外部環境の変化に対応してきた結果、今では社名から「硝子(ガラス)」の文字も消え、エレクトロニクス、化学品、セラミックスを中心としたメーカーに変貌することにより、従業員数55,000名超、グループ企業213 社、売上高15,180億円の巨大企業に成長しました。
変化への対応の重要性に、上場企業であるとか、中小・小規模事業者であるとか、事業規模は一切関係ありません。筆者が贔屓にしている江戸時代に開業した寿司店は、戦時中は洋食を提供することで苦難を乗り切ってきたとのことです。

老舗が老舗たる所以は、外部環境の変化に対して、心折れることなく前向きに変化への対応を継続してきた点にあるといえます。

次回第2回は、「ステップ(1) 資金繰りの見通しを立て、再構築に向けた自社の余力を知ろう」をテーマに考えていきます。

文責

中小機構 中小企業支援アドバイザー
古川忠彦