コロナ禍をきっかけに事業を見直し、再構築するための7つのステップ

第5回 ステップ(4) コロナ禍で変化した顧客や世の中のニーズを読み取ろう

2021年1月26日

1年以上続くコロナ禍で、人々の生活様式は「新しい生活様式」に変わり、顧客や世の中のニーズは大きく変化しました。「必要資金や利益の見える化」「自社の強みの見える化」を踏まえ、事業見直し・再構築に取組む上で極めて大切になるのが、顧客や世の中のニーズがどのように変わったのかを読み取ることです。 世の中、ニーズのあるところにはお金が集まります。コロナ禍で注目されているパルスオキシメーター(血中酸素濃度の計測器)を例に考えてみましょう。

血中酸素濃度の計測器のイラスト

自宅で血中酸素濃度を計測したいというニーズの高まりで、ネット上では様々なパルスオキシメーターが売れており、大手メーカーからは「呼吸器の持病を持つ人に行き渡らなくなるため個人購入を控えて欲しい」とのメッセージが出ているほどです。しかし、パルスオキシメーターといっても製品によって大きな価格差があります。医療機器認証を受けているものや日本製のものは総じて高価で、医療機器認証がなく海外製のものは総じて安価です。その価格差は機種によっては10倍を遙かに超えるほどです。
売り切れて在庫がなくなっているものの多くは、高価な医療機器認証を受けているものが中心です。なぜでしょうか。
それは「安価なものが欲しいのではなく、高価でも性能が保証されているものが欲しい」というニーズがあるからです。高価なものも安価なものも、材料費などの原価には販売価格以上の差はないと思われます。
顧客や世の中のニーズを読み取り、そのニーズを満足させる商品・サービスを提供すれば、利益が確保できる事業に再構築することができます。

1.「新しい生活様式」でどのようなニーズが生まれましたか

厚生労働省は、「新しい生活様式」の実践例を以下のように示しています。

厚生労働省の新しい生活様式の実践例

従来の生活様式から「新しい生活様式」に変えようとするのですから、当然世の中のニーズは変わります。コロナ禍でも売れている商品・サービスは、この「新しい生活様式」によって生まれたニーズに応えたものばかりです。

2.コロナ禍で厳しい飲食店で考えてみましょう

例えば食事に関しては「持ち帰り」「出前・デリバリー」が奨励されていますが、「持ち帰り(テイクアウト)」が良いのか、「出前・デリバリー」が良いのかは、取扱商品・サービスの内容そして地域の属性によっても異なります。
一例を挙げれば、高齢化が進んでいる地域ではお店に買いに来てもらう「持ち帰り」よりも「出前・デリバリー」の方がお客様のニーズに合っているかも知れません。駅前立地でブランド力があれば「持ち帰り」の方が帰宅時に買えて手軽かもしれません。

デリバリーのイラスト

どちらにしても大切なことは、この局面では「安いものを買いたい」というニーズよりも、「ストレスが溜まる巣ごもり生活の中でも外食のような美味しさを味わいたい」というニーズの方が強い場合が多いということです。ニーズにマッチした商品・サービスは、多少価格が高くても売れ筋になることが出来ます。パルスオキシメーターの例を思い出してください。

3.ホテル・カラオケボックス・鉄道事業者が競合に

テレワークが強く推奨されている中で、都市部ではホテル、カラオケボックス、JR東日本などの鉄道事業者が競合になっています。ホテルやカラオケボックスは次々とテレワークプランを打ち出し、JR東日本は駅ナカに「STATION WORK」というブランドでテレワーク用の個室を展開しています。

写真:STATION WORK ホームページ
写真:STATION WORK ホームページ

「家族が巣ごもりしている自宅ではテレワークやWeb会議をやりづらい」というニーズに対して、ホテル、カラオケボックス、鉄道事業者という異なる業種が競い合っているわけです。
ここでご理解いただきたいことは、「業種の枠にとらわれず、変化した世の中のニーズに自社の強みを活かす」という視点です。

コロナ禍で、貴方の事業の得意先にどのようなニーズの変化が生まれていますか?
コロナ禍で、貴方が事業を営む地域にどのようなニーズの変化が生まれていますか?
コロナ禍で、世の中にどのようなニーズの変化が生まれていますか?

厚生労働省の「新しい生活様式」の実践例を今一度読みながら、書き出してみましょう。

次回第6回は、「ステップ(5) 事業再構築の方向性は大きく4つあります」をテーマに考えていきます。

文責

中小機構 中小企業支援アドバイザー 古川忠彦