コロナ禍をきっかけに事業を見直し、再構築するための7つのステップ

第4回 ステップ(3) 貴方のご商売でのこだわりや心がけはなんですか

2021年1月20日

ステップ(1)では「資金繰り計画を立てて自社の余力を知ることの重要性」を、ステップ(2)では「売上だけではなく利益・資金に着目して事業を再構築することの重要性」をご説明しました。ステップ(3)では「事業見直し・再構築の肝となる自社の強み」について考えてみます。 事業者の皆さまが、補助金、経営革新計画などの支援施策を活用しようとした際に、経営相談窓口を訪れて必ずといって良いほど訊かれることのひとつは「自社の強みは何ですか?」であろうと思います。そして「SWOT(スウォット)分析をしましょう」と言われているのではないでしょうか。

自社の「強み」「弱み」、市場の「機会(追い風)」「脅威(向かい風)」を洗い出すSWOT分析の図

なぜ訊かれるのかといえば、ビジネスチャンスになりそうな世の中の追い風に「自社の強み」を活かせれば、再構築事業を確度高く採算化が出来るからです。

しかし、「自社の強みは何ですか?」と訊かれて「これとこれです」と明確に答えられる事業者は多くありません。自身のことはよくわからないものです。

自社の強みを問われて悩む男性の図

しかし、「商品・サービスの提供で『こだわっていること』『心がけていること』『大切にしていることは何でしょうか』」と問いかけると、「仕入れている材料は○○から特別に仕入れているよ」「他より値段は高くてもアフターフォローは徹底しているよ」「ランチタイムは注文を受けたら2分以内に食事を提供するようにしているよ」などと、様々な答えが返ってきます。 もしこれらの「こだわり・心がけ・大切」がお客さまから支持を受けていて、競合よりも当社を選んでいただける要因になっているとすれば、それこそが「自社の強み」です。

1.業務の流れを洗い出しプロセス毎に「強み」(こだわり・心がけ・大切)を書いてみましょう

「強み」を見える化する手法は数多くありますが、ここでは経済産業省が提供する「ローカルベンチマーク」を活用します。

Excelシートで作成されたローカルベンチマークツールは、「財務情報」「非財務情報(商流・業務フロー)」「非財務情報(4つの視点)」を入力するようになっています。ここでは「非財務情報(商流・業務フロー)」を取り上げます。

ローカルベンチマーク「参考ツール」利用マニュアル 製品製造、サービス提供における業務フローと差別化ポイントの図

上記図表は、業務の流れと、業務の流れを通じて「お客さまにどういう価値を提供しているか」を書き出し、それぞれの業務における競合との差別化ポイント(こだわり・心がけ・大切)を整理したものです。お客さまから見た価値は、「お客さまが当社の商品・サービスを選択してくださる理由」と言い換えることも出来ます。
漠然と「強み」を考えるよりも、業務の流れを洗い出して、業務のプロセスに応じて「こだわり・心がけ・大切」を書き出した方が、「強み」を整理しやすくなります。

2.商流を洗い出し「強み」(こだわり・心がけ・大切)を書いてみましょう

自社の業務の流れだけではなく、仕入先、協力先、得意先等との関係性の中にも「強み」は存在します。

ローカルベンチマーク「参考ツール」利用マニュアル 商流把握の図

仕入先や協力先を選定している理由や、得意先やエンドユーザーから当社の商品・サービスが選ばれている理由を見える化します。

このように見える化した「強み」(こだわり・心がけ・大切)は、事業の見直し・再構築を検討していく上で最も重要な要素になります。

また、業務の流れや商流を見える化することで、事業継続リスクに気がつくことも出来ます。
「当社だけにこだわりの部材を卸してくれるこだわりの仕入先」があるとしましょう。当社の商品・サービスの価値は、その仕入先が提供してくれる価値に大きく依存しています。もし、その仕入先に「後継者がいない中で社長が急逝した」「大規模災害で当社に部材を卸すことが出来ないような被害を受けた」などのリスクが発生したらどうなるでしょうか。
1社依存の下請け業も、その得意先に事業継続リスクが発生した場合には大きな影響を受けることになります。
「強み」を見える化するとともに、事業継続リスクについても考えてみましょう。

次回第5回は、「ステップ(4) 顧客や世の中のニーズの変化を読み取ろう」をテーマに考えていきます。

文責

中小機構 中小企業支援アドバイザー 古川忠彦