業種別開業ガイド
ハンバーガーショップ
- ハンバーガーは20世紀初頭にアメリカにて発祥し、日本においては戦後まもなく佐世保等の米軍基地周辺の飲食店で提供されたのが始まりとされている。1971年に東京・銀座にマクドナルドが上陸すると同時に日本でも人気が出て、その後テリヤキバーガーなど、日本独自にアレンジした製品も数多く開発されたこともあり、日本人の日常生活の中に広く普及していった。
- 社団法人 日本ハンバーグ・ハンバーガー協会の調べによると、協会に加盟しているチェーン店でのハンバーガーの販売量と店舗数は【図1】のように推移している。
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店舗数に関しては、2010年にマクドナルドが戦略的に500店舗近くを閉店させたことで総店舗数が大きく減少したが、その後は横ばいで推移している。また、家計消費金額については、近年、外食支出額全体が減少傾向にある中、ハンバーガー店への外食支出額は堅調に推移してきている【図2】。
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- 家計のハンバーガーへの外食支出額を月次で見ると、1月と8月がピークであり、6月がボトムとなっている【図3】。1月の支出額平均(433円)と6月の支出額平均(298円)との間の乖離は1.45倍である。
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所得階層別に見ると、家計のハンバーガーへの外食支出額は、年収588万円以上810万円未満の世帯において最も多くなっている【図4】。ハンバーガーショップは、中流世帯をメインターゲットとした飲食業態であると考えられる。
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- ハンバーガーショップは、大手チェーンが市場を占有する業界ではあるが、佐世保バーガーなど様々な「ご当地バーガー」が各地で開発・販売されており、裾野の広い業界であるといえる。また、高価格メニューを提供する海外大手チェーンの日本上陸や、ボリューム満点のハンバーガーが開発・販売されるなど、話題性のある業界でもある。
1.起業にあたって必要な手続き
1)食品衛生法に基づく営業許可
飲食店を開業するには、「飲食店営業」の申請を行ない、許可を得る必要がある。
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2)食品衛生責任者の配置
食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。食品衛生責任者には、調理師、栄養士、製菓衛生師いずれかの資格を持つ者が必要である。資格者がいない場合は、地域の保健所が実施する食品衛生責任者のための講習を受講し、テストに合格しなければならない。なお、食品衛生責任者の資格は、各都道府県内のみ有効となっている。
3)その他の手続き
個人であれば税務署での開業手続き等が必要となる。法人であれば必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きを行なう。
2.起業にあたっての留意点・準備
・店舗コンセプトの明確化
出店にあたっては既存のフランチャイズチェーンに加盟する方法も考えられるが、ここではオリジナルのハンバーガーショップを開業する場合を考える。
ショップコンセプトについては、産地にこだわった素材を使う、ボリューム感を出す、女性やお年寄りでも食べやすい小ぶりでヘルシーなハンバーガーにする、など色々考えられるが、看板メニューに注文がある程度集中するとオペレーションが楽になるだけでなく、材料費のコストダウンにもつながる。このため、1品でも良いので「売り」となるメニューを開発し、それを明確に打ち出すことが重要である。
他店との差別化においては、他に、店舗雰囲気やサービスに特徴を出す方法も考えられる。一般的なファストフード店ではランチ需要が高いが、夕食時でも来店してもらえるようアルコールやおつまみメニューを取り揃えることも1つの方法であろう。
いずれにしても、既存店をよく観察し、大手で提供できていないもの(利用動機・利用価値)は何であるかをしっかりと研究した上で、自店の打ち出し方を決めるべきである。
・立地
立地については、駅前など繁華街のビルイン型、住宅地のロードサイド型の2種類があると考えられる。
ビルイン型の場合は、賃料が高く近隣に競合店も多いだろうが、販売量が多く、回転率・坪効率が良い。繁華街の中で比較的高単価のメニューを提供する場合は、空中階など賃料を安く抑えられる立地での開業が良いだろう。ただし、その場合は、広告宣伝を工夫して新規顧客を取り込むと同時に、リピーターを獲得する方法を検討することが非常に重要となってくる。
ロードサイド型の場合は、賃料は安いが、駐車場の確保やドライブスルーの導入などで初期投資額が高くなる点に注意を要する。また、地域で長期間にわたって操業を維持するためには、定番メニューだけでなく新メニューを随時導入するなど、飽きられてしまわない工夫を凝らす必要もある。
3.必要資金例
繁華街に店舗面積20坪のハンバーガーショップを開業する場合の必要資金例
必要資金例
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4.ビジネスプラン策定例(モデル収支例)
1)経営形態
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2)損益計算のシミュレーション
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- ※初期投資一括計上分は、開業費の金額
- ※減価償却費は、設備工事費・什器備品費の額を5年で償却したもの
- ※必要資金、売上計画、シミュレーションの数値は、状況によって異なります。
また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)
最終内容確認2013年7月