業種別開業ガイド
ネットショップ(電子商取引・EC)
2022年 6月 8日
トレンド
「外出自粛要請」「巣ごもり需要の拡大」などが市場を直撃!
ネットショップ(電子商取引・EC)業界は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた代表的な市場の一つだ。経済産業省によると、2020年の国内におけるBtoC向け電子商取引の市場規模は、前年比0.43%減の19兆2779億円となり、同調査を開始した1998年以来初めて減少に転じた。しかしこれは、旅行などを含む「サービス分野」の商取引が同36.05%減となったことによるもので、そのほかの「物販系分野」は同21.71%増、「デジタル分野」は同14.90%増と、いずれも大幅に増加。コロナ禍における政府や自治体からの外出自粛要請や、不特定多数の人との接触機会をなるべく減らそうとする市民意識の高まりなどは、EC業界に大きな転機をもたらした。
2020年の「物販系EC市場」では、スマホ経由が50.9%とPCを逆転
また、上記の「物販系分野」のうち、スマートフォンを経由した市場規模は同46.1%増の6兆2269億円にのぼり、全体に占める割合も50.9%と初めてPCを逆転。スマートフォンがEC市場の主役に躍り出た格好だ。ECを活用した便利かつ高効率な新しい生活様式がある程度定着した今、今後も業界は成長していくというのが大方の見立て。中でも近年は、個人同士を結びつける「個人間(CtoC)EC」や、取引相手が国境をまたぐ「越境EC」の市場の成長も著しい。
ビジネスの特徴とヒント
実店舗なしで初期投資を抑えながらの開業・運用も可能
インターネットを介して商品やサービスの売買取引を行うビジネス。実店舗を持たずとも運営できるため、PCとECサイトの開設・運用スキル、販売する商品やサービスなどがあれば、最低限の運用費で1人での運営も可能だ。ただし、こうした参入障壁の低さがECサイトの乱立につながっており、数ある類似ショップ・商品の中から自社をいかに選んでもらうかがビジネス成立のポイント。市場調査やそれを踏まえたコンセプトの明確化には取り組んでおく必要があるだろう。
また、実店舗と違って、24時間365日稼働が可能な点も特徴だが、問い合わせ対応や商品の製造(あるいは仕入れ)、発送などにおいて、人的リソースを必要とするプロセスは少なからずある。顧客の混乱を防ぎ、スムーズな運営を実現するためにも、実店舗と同様に営業日や営業時間などは最低限設定しておきたい。
開業のポイント
開業タイプは「自社サイト」「モールサイト」の主に2種類
開業タイプは、「自社サイトの構築」と「ショッピングモールサイトへの出店」の主に2種類。前者の場合はそのデザインやシステム構築などに対する初期投資が膨らむ傾向にあるとされてきたが、近年はASPサービスやパッケージソフトなどが充実しており、比較的安価かつスピーディーにシステムを構築できる仕組みが整いつつある。ただし、サイト構築後のプロモーション等も全て自社で行う必要があることにも留意しておきたい。
後者の「ショッピングモールサイトへの出店」は、すぐにそのサイトの集客力と商品販売の仕組みを活用できるのが最大のメリットだ。初期投資も比較的安価で済むケースが多い。ただし当然、モールによって販売マージンや手数料の金額に差があるほか、モール内における多くの類似競合店舗との競争が激しいという側面もある。
「0円開業」も不可能ではないが、「運用面」を踏まえた選択を
当然、販売する商品等の製造・仕入れにかかる経費はあるが、「インターネット上にECサイトを構えること」に関しては、出店費用がかからないモールサイトに登録することにより初期投資ゼロでの開業は可能だ。また、自社サイトの構築でも、無料のASPや安価なパッケージソフトを利用すれば、初期投資を最小限に抑えて開業することはできる。ただしモールサイトは出店後の運用にかかる手数料に注意が必要で、自社サイト構築ではプロモーションやセキュリティ対策などにかかる経費もある。こうしたビジネスの運用面を考慮して、どのようなECサイトをいかに構築するかを検討すべきだろう。
個人事業主としての届出は必須
必要な資金の調達と事業計画の作成など、一般的な開業のステップ(詳しくは、「起業マニュアル」ページを参照)を踏んだ上で、ECサイトを構築すれば開業は可能だ。なお、個人でECサイトを運営する場合、個人事業主として税務署に届け出た上で、事業所得の届け出と納税が必要になる(詳しくは、「個人事業の開業手続き」ページを参照)。また、販売免許等を必要とするものを取り引きする場合は、保健所や税務署などへの必要書類の提出も必須となる。
必要スキル
サイト構築の知見は重宝されるが、なくても問題はない
自社サイト構築の場合は、レンタルサーバーやサイトデザイン、決済システム、受発注システムなどを含むECサイト設計に関する全般的な知識や経験が重宝されるのは間違いない。ただ近年では、そうしたシステム設計を網羅したパッケージソフトや、ECサイトをクラウド上で手軽に構築できるASPサービスが充実しているほか、ECサイトの構築・運用を提供する制作会社なども豊富にある。あるいは、モールサイトへの出店を選択すれば、上記のようなステップを飛び越えることも可能だ。ECサイトビジネスのスタート時に必要なスキルは、基本的にいくらでも補いようがあると考えられる。
取引する商品・サービス自体の「企画開発」に目を向ける
いかにECサイトが優れていても、そこで取り引きされる商品やサービスが魅力的でなければ、売り上げを維持することは難しい。消費者ニーズやトレンドを踏まえた商品やサービスの企画開発力は、ECビジネスを成立させる上で最重要課題の一つといえるだろう。
「SNS」などスマホユーザーを意識したプロモーション
競争が激しい中で自社のサイトや商品を選んでもらうには、より効果的なプロモーションが欠かせない。前述の通り、近年はECサイトの主役がスマートフォンとなっていることもあり、特にSNSでの広告・宣伝は抑えておきたいポイントだ。あわせて、検索上位に表示されるためのSEOの知識や、コンテンツマーケティングの知見なども、ビジネス成功の近道となり得る。
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