業種別開業ガイド

ゲーム開発

2020年 12月 11日

トレンド

(1)ゲームアプリを中心に国内市場は拡大傾向

2020年7月にKADOKAWA Game Linkageが発行した『ファミ通ゲーム白書2020』によると、2019年の国内ゲーム市場は1兆7,330億円と過去最大規模となり、中でもスマートフォンやタブレット向けのゲームアプリなどのオンラインプラットフォームが7割以上を占め、直近10年の推移では家庭用ゲームソフトなどに比べ大きく拡大している。

世界市場をみても同様の傾向であり、特に東アジアにおけるオンラインゲームの好調が牽引力となって、今後も成長が期待される。

(2)新型コロナウイルスの影響による変化

新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛による「巣ごもり消費」の拡大で、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」が2020年3月だけで1,000万本以上を売り上げるなど、世界的大ヒットとなった。一方、アップアニージャパン(株)が2020年6月に行った調査では、在宅勤務の定着による移動時間の減少で、ゲームアプリの利用時間や課金収入が伸び悩んでいるとの結果が出ている。動画配信やe-ラーニングなど他のスマートフォンアプリとの競合が、今後の課題の1つとなっている。

(3)VRの進化

VRは「Virtual Reality」の略で、「人工現実感」や「仮想現実」と訳される。臨場感あふれる3D映像を楽しめる「VRゴーグル」の急速な普及によりラインナップも充実し、リーズナブルなモデルも多く販売され、ゲーム開発メーカーも力を入れている。

ビジネスの特徴

コンピュータプログラムのうち特にエンターテインメントに特化した「ゲームソフト」の企画・開発・販売を行う。ゲームセンターなど業務用のアーケードゲーム、家庭用ゲーム専用機器、パソコン、携帯端末用とプラットフォームは広がっている。

個人でも参入しやすいとされるスマホゲームアプリ開発の場合、アプリリリース後の売上の発生は、次の3パターンとなる。

  • 有料アプリとして販売する
  • アプリ内課金によって料金を得る
  • アプリに広告を表示させ、クリックしてもらうことで広告収入を得る

開業タイプ

(1)ゲームデベロッパー(ゲームソフト開発)

ゲームソフトの開発を専門に行う。スマホゲームアプリの開発で開業する場合は、アップル社運営の「App Store」やグーグル社運営の「Google Play」などのアプリマーケットで販売する形式が主となる。1人であれば自宅での開業も可能。副業から始め、軌道に乗れば専業化するという方法もある。

(2)ゲームパブリッシャー併用型

ゲームソフト開発とゲームソフト販売元を兼ねた業態。開発だけでなく流通ルートの確保、広告・宣伝費、営業に関わる人件費等、拡大に伴う労力やコストの増大に備え、開業前に十分なリスクヘッジをとっておく必要がある。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

開業ステップ

(2)必要な手続き

ゲームソフト開発事業を個人で開業する場合に、公的機関への許認可といった特別な手続きは不要である。

ゲームソフトの内容や表現が青少年に与える影響への配慮から、多くのゲームソフトメーカーは成人用ソフトウェア等の自主規制を行うために、「コンピュータソフトウェア倫理機構」に加盟し、「18歳未満販売禁止」「R指定(15歳未満販売禁止)」などの自主規制を行っている。業界団体のコンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)では、ゲームソフトの表現内容によって対象年齢をパッケージに表示する「レーティング制度」を制定している。

プロモーションの重要性

スマホゲームのアプリ開発は個人でも参入しやすい分野だが、ダウンロードされない限りは売上につながらないため、ゲームアプリの認知度を上げることが重要課題となる。そのためには積極的なプロモーションが不可欠である。具体的な手段として、メディアへのプレスリリース送付、SNSやブログ、YouTubeでの宣伝、コンテストやイベントへの出展などが挙げられる。

必要なスキル

  • 企画力、マーケティングスキル
    ゲーム開発において斬新な発想やオリジナリティ豊富なアイデアはもちろんのこと、思いついたアイデアを元に、ストーリーやシナリオ作り、キャラクターデザインなどゲームの内容を具体化していく企画力も求められる。また、業界に限らず幅広い分野にわたって関心を持ち、トレンドを把握することも重要である。
  • 技術力
    最近ではゲームエンジンというツールを使用してゲーム開発を行うことが主流になっており、ゲームエンジンの機能を活用して効率よく作業を行うことが求められる。また、高度な開発やカスタマイズを行う場合にはプログラミング言語の知識が必須となる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

自宅での開業を想定。

開業の場合に必要な資金例の表

(2)損益モデル

a.売上想定

有料アプリ売上:単価100円が2本、年間各5,000ダウンロード(70%が収入)
アプリ内課金収入:月5,000ダウンロードでうち1/3が200円課金(70%が収入)
クリック型広告収入:月5万ダウンロードで広告収入5万円が3本、月10万ダウンロードで同20万円が1本

売上想定の表

b.損益イメージ(参考)

損益のイメージ例の表

※標準財務比率は「受託開発ソフトウェア業」に分類される企業の財務データの平均値を掲載。出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

個人がスマホゲームアプリの開発で収益を上げるためには、ダウンロード数の向上が必須であり、副業から脱却を図るためには数万単位のダウンロード獲得が可能なアプリが複数あることが望ましい。費用対効果の高いプロモーションツールを活用する一方で、リピーターやファンを獲得できるようなゲームを継続して開発する持続力が重要となる。ゲームの場合、国内だけでなく海外のユーザーに対してもアピールできるよう、英語対応版をリリースすることも手段の1つである。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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