業種別開業ガイド

ECコンサルタント

2022年 9月 7日

トレンド

コロナ前後でECサイト「物販系分野」の市場規模は大きく拡大

EC業界にとって、新型コロナウイルス感染拡大が大きな転機となったことは、業種別開業ガイド「ネットショップ(電子商取引・EC)」編でも解説した。中でも非接触を求める消費者意識の変化などによって、需要が大幅に拡大しているのが「物販系分野」。今回のコロナ禍のような不測の事態に備える意味でも、ネットを通じた販売チャネルを持つことを検討するBtoC企業は、今後ますます増加していくことが予想される。このような社会のニーズを受け、ECサイト開設手法の簡素化や低価格化が進むと同時に、ECサイトの効果を最大化するための方法などを提案・アドバイスするECコンサルタントの需要も、拡大傾向にあるとみてまず間違いないだろう。

「構築」と「運用」は別。コンサルニーズが高まる条件がそろう

物販系分野のBtoC-EC市場規模およびEC化率の経年推移
出典:経済産業省「令和2年度電子商取引に関する市場調査」

経済産業省の調査によると、前述の「物販系分野」におけるEC経由の消費割合を表す「EC化率」は、2013年以降毎年0.3〜0.7ポイントずつ緩やかに成長してきたが、2020年には一気に前年比1.32ポイントアップの8.08%。このような社会的ニーズの急激な高まりを受け、ECサイトの構築を急きょ検討した企業もあるだろう。しかし、特に自社サイトの場合、構築をサポートするツールは充実傾向にあるが、それを適切に運用して売上を継続することは容易ではない。構築と運用には別の専門性が求められる。こうしたことからも、ECコンサルタントに対するニーズは今後より高まっていくことが予想される。

ビジネスの特徴とヒント

「経験」と「実績」が何より求められるビジネス

基本的には各ECサイトの課題を解決し、「集客」および「売上増」といった運用者の目的達成をアシストするビジネスだ。サイト構築の段階からサポートするケースもある。いずれにせよ、クライアントが持っていない知識や技術、ノウハウなどの専門性が求められるため、ECサイト構築の豊富な経験や、運用サポートで残した実績などがビジネスを成功に導くカギとなる。報酬は、月額契約や、サイト構築・メンテナンスなどにかかる費用などを設定するのが一般的だが、成果に応じて報酬が変わる成果報酬型というケースもあるようだ。

ECサイトの構築・運用を代行するか、部分的にサポートするか

ECコンサルタントの業務には、大きく分けて二つの方向性がある。一つは、構築から運用までのECサイトに関わるトータル業務を、クライアントに代わって「代行する」というスタイル。クライアントが大企業の場合などにこのケースが多く、高額な報酬も期待できるが、その分業務範囲が広がり、結果に対する責任も高まる。もう一つは、ECサイトの運用改善に向け、業務の一部を「サポート」するスタイルだ。こちらは、クライアントが自ら行うECサイトの運用上の課題を分析するなどして、最適な運用方法をアドバイスする。全業務を代行するケースに比べると報酬は小規模になるが、その分業務範囲や責任も限定的になる。

開業のポイント

「オールラウンド型」「特化型」「越境型」の主に3種類

ECコンサルタントの開業スタイルは、「オールラウンド型」「特化型」「越境型」という主に3種類。「オールラウンド型」は、ECサイトに関わるトータル業務を代行あるいはサポートできるのはもちろん、すでに複数のECサイトを運用している場合などには、それぞれの課題を洗い出し、それらを組み合わせて全体のパフォーマンスを最大化することなどまで対応できることが望ましい。ECサイトの構築・運用業務に対する幅広い知識を有しているのはもちろん、業界全体の情報にも精通している必要があるだろう。「特化型」は、楽天やAmazonといった特定のモールサイトに特化したECコンサルタントだ。それぞれのモールサイトが持つ特徴や仕様などを熟知し、運用改善に向けた適切なサポートを行えるかがポイントになる。そして最後の「越境型」は、近年増えてきた海外向けECをサポートするスタイルだ。現地の法規制や税関、多言語対応、決済方法の整備、物流、海外向けプロモーションなどを適切にサポートすることが主な業務となり、特定の地域や言語、業務範囲に対する専門的な知識を有していることが強みになる可能性も高い。前述したEC化率は、日本よりも海外の方がさらに高いという背景もあり、今後この越境型のニーズはさらに拡大する可能性を秘めている。

入り口は「コンサル企業」か「モール運営企業」か「制作会社」か

ECコンサルタントイメージ01

前述した通り、ECコンサルタントとして開業し、ビジネスを成立させるためには、業務経験は必須といえる。では、将来的な独立開業を目指してその経験をどのように獲得するかという点に関しては、おおむね次の三つの選択肢が考えられる。まず一つ目はECコンサルティング事業を展開する企業に勤める方法だ。ECコンサルとしての幅広い経験を積みたい場合におすすめの選択肢といえる。次に考えられるのは、大手ECモールを運営する企業に所属する方法。「特化型」のECコンサルへの近道となりそうだ。最後はECサイトの制作会社に入り、多くのサイト構築・運用の実務経験を積むという選択。実際に自らの手で多くのECサイトを作り上げた経験は、ECコンサルとして独立した後の強みの一つになるだろう。最終的にどのようなコンサルタントになり、どんなビジネスをしたいかを検討した上で、自分に適したファーストステップを選択することが、目指すべきゴールを早期に実現できる決め手になりそうだ。

個人事業主としての届出は必須

ECコンサルタントの独立開業に必要な免許や資格はないが、個人で開業する場合は、個人事業主として税務署に届け出た上で、事業所得の届け出と納税が必要になる(詳しくは、「個人事業の開業手続き」ページを参照)。そのほか、開業に関わる一般的な情報は当サイトの「起業マニュアル」ページを参照。

必要スキル

ECサイトの構築・運用における確かな実績

繰り返しになるが、ECコンサルタントとして独立する上で欠かせないのが、これまでにECサイトを構築・運用した豊富な経験と確かな実績だ。その経験や実績が輝かしいものであればあるほど、独立系コンサルタントに欠かせない「信頼」を獲得できる。将来の独立開業を目指す上では、理想の姿をできるだけ鮮明にイメージした上で、そこまでの道筋もより具体的に思い描いておく必要がありそうだ。

「コミュニケーション能力」と「説得力」

ECコンサルタントイメージ02

あらゆるコンサルタントに共通して「コミュニケーション能力」と「説得力」は必須のスキルといえる。相手にメリット・デメリットを過不足なく説明し、状況をきちんと理解してもらった上で、目的達成に向け最善な選択肢を選んでもらう。この繰り返しで実績を積み上げていくのはECコンサルタントも同様だ。ただし、これらは必ずしもトークスキルとイコールではない。確かな調査、分析に基づく資料作成など丁寧な下準備によって補える部分もある。また、特に説得力は実績を積まない限り伸ばすことが難しいため、現時点での自分の能力を自己判断して悲観する必要もなければ、当然楽観もできないことは理解しておきたい。

資格取得も含む「継続的な学び」への意識も

昨今のコロナ禍で市場が急変したように、EC業界は今後も時代と共に変化・成長していくことが予想される。そのような業界でコンサルタントとしてビジネスを確立していくには、常に業界の最先端情報にアンテナを張り、貪欲に情報を吸収していく意識が必要だろう。また、公的な資格や免許が必要でないからこそ、関連する資格の取得で信頼性アップを実現する方法もある。いずれにせよ、どれだけ学ぶ姿勢を持ち続けていられるかが、事業継続のポイントになりそうだ。

最終内容確認日2022年9月

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