業種別開業ガイド
リラクゼーションサロン
2021年 9月10日
トレンド
(1)市場規模
株式会社矢野経済研究所が2020年1月発表した「国内リラクゼーション市場調査結果」を見ると、2018年の国内リラクゼーション市場規模は1,196億円となっており、2014年以降増加傾向となっている。
(2)専門店化の傾向
一昔前はクイックマッサージなど手によるマッサージが主体であったが、近年では、酸素バー、ゲルマニウム温泉、ヘッドスパ、スポーツストレッチなどをメインとした店舗も増加している。ゲルマニウム温泉など、器材を設置してする運営するサービスはある程度の規模が必要だが、施術者の技術は不要なため、安定したサービスを提供できるメリットがある。
(3)フランチャイズ店舗の増加
リラクゼーション業界では、新規参入が増えていることで低価格化が進んでいる。かつての相場は10分1,000円であったが、「60分2,980円」という看板を出す低価格のフランチャイズが増え、60分6,000円以上の価格を維持し、事業を継続するのは困難さが増している。
フランチャイズを展開している企業には以下が挙げられる。
- Re・Ra・Ku(リラク) 〈株式会社メディロム〉
- ほぐしの達人 〈株式会社オリエンタルシナジー〉
- MUU 〈株式会社癒しの手〉
- アジアンリラクゼーションヴィラ 〈株式会社ヴィラ〉
- 全身ほぐし整処ゆるり 〈株式会社HCC〉
- 手もみ屋本舗 〈株式会社 ミツバファクトリー〉
- サロンドチャチャ 〈ハワイアンフォレスト株式会社〉
ビジネスの特徴
リラクゼーションサロンは比較的小資本で開業できる業種である。また、開業に際して特別な資格もないため開業のためのハードルもそれほど高くはない。しかしながら、施術者の技術力に拠るところが大きい典型的な労働集約型の業種である。したがって、技術力の裏付けがないとリピータの獲得が難しいことは念頭に置いた方がよい。
開業タイプ
(1)賃貸の貸店舗物件を借りて開業
貸店舗、賃貸マンションを借りて開業するため、ターゲットを明確に絞り込んで立地を選べるメリットがある。
(2)自宅で開業
自宅に施術ベッドやシーツ、オイル等を設置するので、開業資金を抑えて開業できる。施術内容にもよるが、家賃がかからず経費が抑えられるため、売上のほぼ全額が利益となる。また子供連れでも通いやすいことがメリットとなる。
(3)レンタルサロンで開業
レンタルサロンとは、施術に必要なベッドを備え、使いたい時に好きなだけ借りられる施術場所を提供するサービスである。物件を借りて開業した場合には敷金・礼金に加え、事業の場合は保証金が必要になるが、それらがかからず、初期費用を抑えて開業することができる。
(4)出張で開業
場所や時間など顧客の望む都合に合わせて施術者が出張し施術を行う。顧客は主に高齢の人や、お店に通えない人が想定される。
(5)フランチャイズで開業
未経験でも経営ができ、集客面や技術面でのサポートがある。また、個人店に比べて知名度とブランドイメージで信頼を得られることもメリットとなる。
開業ステップ
(1)開業のステップ
(2)必要な手続き
特に必要な手続きはないが、税務署へ開業届を提出する必要がある。原則として開業後1ヶ月以内に最寄りの税務署に提出する。同時に白色申告もしくは青色申告の場合、青色申告承認申請書を提出する。
宣伝と集客
宣伝活動は、ホームページやSNSの活用、広告掲載、生活圏内としている地域へのチラシの配布などが挙げられる。
集客方法としては、ホームページ経由の他に、外部サイトの予約システムを活用したWEB集客がある。外部サイトは費用がかかるが、すでにユーザーがいるため多くの利用者へアプローチができる。また、アクセス解析ツールを活用することで、閲覧している客層など情報収集も行える。
必要なスキル
開業に免許や資格等は不要だが、資格があるほうが望ましい。基本的には施術者の手技による施術が主な提供サービスとなる業態であるため、高い技術や、機器並びに用具等を補助的に用いる場合には専門的な知識が求められる。また、まつエクや眉毛カットなどの美容行為や、あん摩マッサージや鍼灸などの医業類似行為は、それぞれに関する法律において定められた国家資格が必要となる。民間資格では、日本セラピスト認定協会の資格や、整体セラピスト、アロマセラピストなどがある。
開業資金と損益モデル
チェーン加盟の場合の損益モデルについては、各フランチャイズ本部から説明会などで説明されるため、ここでは初期投資が比較的かからないレンタルサロンで、独自ブランドでの新規開業をモデルとして取り上げる。
(1)開業資金
【レンタルサロンを使用してリラクゼーションサロンを開業する場合の必要資金例】
(2)損益モデル
a.売上計画
年間営業日数、1日平均来客数、平均客単価を以下の通りとして、売上高を算出した。
b.損益イメージ
上記a.売上計画に記載の売上高に対する売上総利益および営業利益の割合(標準財務比率(※))を元に、損益のイメージ例を示す。
※標準財務比率はエステティック業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。
c.収益化の視点
収益化には、第一に集客を増やすことが重要であり、そのためには固定客のリピート化と新規顧客の開拓が必要となる。広告宣伝にかけるコストが膨らみがちとなるが、ターゲットに訴求効果の高い方法を選択するなど、収益を圧迫しすぎないよう留意したい。また、個人事業の場合、1人で施術できる人数には限界があるため、客単価は安価になり過ぎないように設定する。基本メニューのほかにオプションメニューを複数用意し、合わせて利用できるようにしておけば客単価のアップがしやすいと思われる。
※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討する際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)