2009年5月、ミネラルウォーター「い・ろ・は・す」が日本コカ・コーラから発売され、またたく間にヒット商品となった。それ以前から同社では「森の水だより」(2000ml)、「アクアセラピーミナクア」(500ml、終売)を販売していたが、さらに新しいミネラルウォーター商品を開発したのは、新しい切り口で消費者に訴求すれば、国内市場はまだまだ伸びるという読みからだった。
日本ミネラルウォーター協会の統計によれば、国内市場は、水道水への不安や小型ペットボトルの解禁を追い風に1990年代初頭から右肩上がりの伸長をたどる。が、2006年ごろには個人消費の低迷とミネラルウォーターに対する話題性の喪失から伸びが鈍化した。ところが日本コカ・コーラはそれを逆手にとる作戦に打って出た。
日本が世界でも有数な天然水資源に恵まれた国であるとしても、その1人あたりの年間消費量は08年時点で19.7lにすぎない。それは米国の101.4l、ドイツの148.5l、フランスの125.7l、イタリアの178.5lなどには及びもつかない低水準であった。
同社はこの市場を攻略するにあたり、どのような話題性をもって迫るかを模索し、その重要なポイントとして浮かび上がったキーワードが「環境」だった。
事実、08年に消費者の環境意識を調査してみると、「温暖化防止行動を実践した/している」が58%、「温暖化防止行動を実践したい」が39.8%とその関心度が極めて高いことがわかった。同時に温暖化防止に何か貢献しようと思っても、何をどうすればよいのかわからない人が半数以上もいるという実情も浮かび上がった。
さらに踏み込んで調べてみると、かつて環境問題への取組みは「きまじめ」「ストイック」「おしゃれじゃない」と堅苦しいイメージで捉えられがちだったが、2000年代半ば以降になるとロックミュージシャンによる環境イベントや市民団体による街頭清掃活動、さらにはサーファーによる海岸清掃活動などにより、一転して環境への活動が「前向き」「簡単」「身近な」「おしゃれ」とポジティブで身近なイメージがめばえつつあった。
その世間の動向をとらえ、商品開発の焦点は「環境」へとおのずから絞られていった。