設計やプログラミングなど関連技術に対する理解も必要
ハードウェアの開発が日進月歩のため一定の先行投資は必要
開業の5ステップ
VR/AR技術を習得するためには「独学」か「学校に通うか」の選択肢があるが、幅広く関連分野の知識を習得するためにも、まずは専門学校や大学に通うことが望ましい。VR/AR技術の応用分野は幅広く、まずは様々な知見を身に付けておくことが、その後の職務での発想や応用力に役立つからだ。
卒業後は、制作会社・ゲーム会社などに就職するのが一般的である。そこで経験や実績を積みながら、多くの関係者に自分の仕事を評価をしてもらうことで力をつけていく。規模の大きい案件に、チームの一員として携わることも貴重な体験となるだろう。また、建築設計やCGキャラクターのクリエイターが、その仕事の延長として、VR/ARの手法も取り込んで手掛けるケースも多い。
収入
求人情報サイトを運営するIndeedによると、関連企業に就職した場合は月給25万円から90万円程度である。個人事業の場合は、仕事の量や規模によって収入の幅は大きくなる。
「IT人材白書」(独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター発行)によると、先端IT従事者の70%以上が年収500万円と回答。そのうち、1000万円以上は、約19%であった。
▼先端IT従事者、先端IT非従事者の年収
(「IT人材白書2020」 独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター 2020年)
必要なスキル
どの様な分野にVR/AR技術を提供するかによって、習得すべきスキルは異なる。実写動画を主体とするコンテンツであれば、パノラマやウォークスルーの撮影技術が求められるし、フルCGで表現する場合にはそのためのアプリケーションの習得が求められる。専門分野での活用を検討するなら、3D CADや機械設計の知識が求められる場合もある。
1. 実写映像制作スキル
パノラマ動画撮影用のカメラなど、機器の操作や撮影のスキルが必要。さらに動画編集やVRデータの作成など提供方法に応じて習得すべきアプリケーションも様々だ。まずは、どの様な分野や顧客に向けて技術を提供するのかを想定してから、それに最適な手法を習得した方が効率的だろう。
2. プログラミングスキル
VRゲームやアプリケーションを開発するには、目的に合わせた開発言語を学ぶ必要があり、「Unity」や「Unreal Engine」といったゲーム開発用のソフトウェアを扱う技能は欠かせない。それぞれにメリット・デメリットの特徴があるため、これから取り組もうとしている業界や先行事例、トレンドなどを踏まえ、自分が身に付けるべきソフトウェアを十分検討のうえ選ぶ必要がある。
3. デッサンスキル
フルCGの仮想空間でリアルに物体を再現するためには、物の形・光や陰影を正確に把握し表現する力が要求される。多くの場合は専用アプリケーションが自動的に計算し表現してくれるが、それらを総合的に組み合わせてひとつの世界観を構築しようとするときに、基本的なデッサンスキルに裏付けられた表現力は、欠かせないものとなる。
4. チーム内コミュニケーション能力
コンテンツ制作の現場には多くの専門人材が関わっている。チームで良いものを作るには協調性や交渉力などのコミュニケーション力が求められる。独りよがりにならないよう、どのような作品が求められているのかを把握する力が必要である。
5. 新しいVR/AR技術関連の情報収集能力
VR/ARの世界は進化し続けているので、常に新しい技術やトレンドを取り入れる能力も必要だ。また、リリース後にもきちんとユーザーの反応をリサーチするマーケティング的な視点も重要である。
また、日本バーチャルリアリティ学会により、VRを正確に習得したかどうかを証する「VR技術者認定試験」が毎年開催されている。
個人事業主として活動するためのポイント
1. 安定したクオリティとスピード
ゲームやアプリ向けのVR/ARコンテンツ制作の現場では、業務委託として月ごとに決まった金額で仕事を依頼されるケースも多く、安定したクオリティで作品を納品する必要があり、クライアントと円滑なコミュニケーションが重要だ。また、締め切りに間に合うスピードで作品を仕上げる能力も要求される。
2. オリジナリティを磨く
VR/AR技術の応用分野は幅広く、自分の得意分野を持ち、個性を磨くことが大切になってくる。
3. 世界観を作り上げるストーリーテリング力
視聴者の好奇心をくすぐり、その世界に引きこむ体験を提供するためには、独自の世界観を作り上げるストーリーテリング力が必要である。そのためには、古典を始めとする小説や映画などのコンテンツにも日頃から興味を持って接することが必要だろう。
4. ポートフォリオを作成する
クリエイター系の業界で個人事業主としてやっていくには、ポートフォリオを作成することが重要である。オンライン/オフラインで参照可能な作品集を作るだけでなく、動画共有サイトで作品の一部を公開することも効果的だ。これらはクライアントが仕事を発注する際の判断材料としても欠かせない。
5. クラウドソーシングサイトに登録する
フリーランスで案件を獲得するには、クリエイター系のクラウドソーシングサイトなどにVRクリエイターあるいはCGクリエイターとして登録する方法もある。
【初期費用例】
新しいデジタル表現の追求には、高性能のパソコンが欠かせない。CG制作や撮影したデータの処理、編集やエフェクトなどの作業には高スペックの機種を揃えたい。また、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などVR体験を検証するための機器も必要となるだろう。そのほか、カメラや専用の撮影機材をそろえることも必要である。機材レンタルのサービスも充実したものが多いので、予算に応じて活用を検討したい。
VR/ARクリエイターに関連する業界として「映像・音声・文字情報制作作業」の経営データを紹介する。映像・音声・文字情報制作作業と比較するとVR/ARクリエイターは個人事業主が多いため、必ずしもVR/ARクリエイターに当てはまらない部分もあるが、参考としてご覧いただきたい。
▼映像・音声・文字情報制作業の黒字企業の経営指標
※収入、初期費用の数値は、開業状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)