2.業務の標準化を図ったうえで、非効率な商慣習と従来型の来店促進型小売経営を見直す
小売業ではベテランの従業員による業務の属人化も問題視されている。業務の属人化が進んでしまうとベテランの従業員の不在時や退職後、店舗運営が行き詰まってしまう。また、業績拡大などで対応量が倍増した場合は、一人や数人の従業員で対応できる量は限られているから遅滞が生じてしまう。そこで、誰でもすぐに業務ができるように、業務の標準化を進めると共にマニュアルを作成することも大切だ。
小売業では、非効率な商慣習が残っていることも問題だ。非効率な商慣習としては、3分の1ルール*が知られているが、消費者にとってメリットがある一方、食品ロス問題の原因ともなっている。そこで経済産業省と農林水産省が3分の1ルール見直しを呼び掛けており、メーカーや卸、小売りなどが連携して見直しが進められ、食品業界全体で2分の1ルールへ緩和する取り組みが進んでいる。また、メーカーも賞味期限の年月日表示から年月表示や日まとめ(例えば10日単位の年月日表示)といった大括りへの変更を進めている。中小規模の小売業も、こうした動きに合わせて、商慣習の見直しを進め、業務の効率化につなげるべきだろう。
*3分の1ルール……食品の流通過程において、製造者(メーカー・卸)、販売者(小売り)、消費者の三者が、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつ分け合うというもの。メーカーが製造した商品を卸が納品期限(最初の3分の1)までに小売りに納入できなかった場合は卸からメーカーへ返品され、販売期限(次の3分の1)までに小売りが消費者に販売できなかった場合は、小売りから卸に返品される。消費者には商品購入後少なくとも3分の1以上の賞味期間が残ることになる。
さらに、従来型の来店促進型小売経営も見直すべきだろう。人口減少や高齢化、単身世帯の増加、地元小売業などの商店街の衰退により、全国各地で食品アクセス(買い物弱者等)問題が生じている。顧客が店に来店するのを待つだけでは、労働生産性は上がらない。ネットスーパー、宅配、買い物代行サービスや移動販売などの取り組みも行うべきだろう。こうした取り組みも大手小売業が先行しているが、大手が対応していないエリアや扱わない商材もあるため、中小規模の小売業にも参入の余地がある。商品の配達だけでなく、御用聞きとして身の回りの困りごとに対応することで高齢者層との関係を強化することも有効だろう。
オンラインでのPRや販売も重要になる。実店舗への来店を促すためにSNSを利用するべきなのは言うまでもない。SNSの活用により、商品やサービスを地域外へも発信できる。地域内に向けても、新商品やセールなどの最新情報をリアルタイムに提供できる。情報拡散により、潜在顧客の掘り起こしにもつながる。双方向のコミュニケーションにより、顧客に信頼感や特別感を与えることができ、ファン獲得につなげることもできる。
さらに、実店舗と合わせてECサイトを開設することも有効だ。経済産業省の令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)によると、BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、2年に19.3兆円、3年に20.7兆円、4年には22.7兆円と年々上昇し続けている。
また、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を示すEC化率も、書籍、映像・音楽ソフトでは、3年の46.20%から4年に52.16%へと上昇。EC化率が低い食品、飲料、酒類でも3年の3.77%から4年に4.16%へ上昇している。書籍、映像・音楽ソフトのようにEC化率が高い分野の商品を主に扱う小売業の場合は、ECサイトの開設は不可欠と言ってもよいだろう。
ネットスーパーやSNS、ECサイトの運用も当初は、新たな人材が必要になるが、早期に業務の標準化を進めると共にマニュアルを作成し、誰でも対応できるようにすべきだ。