桜庭氏は埼玉大学大学院で理学博士号を取得後、01年から理化学研究所でゲノム分野の研究に携わってきた。最先端のゲノムの研究者がビジネスの世界に転身したのは、08年に米国に留学して「本当に社会貢献ができているのか」という思いが湧いてきたからだという。「社会貢献をより実感したい」と、日本で新型出生前検査を手がけるGeneTech(東京都港区)に11年に入社し、イルミナに移った。
起業後、2年半は桜庭氏1人で医療機関に営業したが、「題材(サービス内容)が良く、分かりやすかったのか、訪問すればほぼ成約できた」と話す。「新型コロナウイルス感染症の拡大がいつまで続くかによって大きく変わる」と前置きしながら、20年中に単年度黒字化を果たすとともに、株式公開(IPO)の準備に入り、早ければ3年後に上場を目指す計画だ。
今後の課題は2つある。一つは海外進出だ。現在、グローバルカンパニーと交渉しており、「日本で培った日本発の技術を海外に提供できると確信している」。もう一つは、一般向け事業への進出である。ゲノム検査キットを一般の人向けにも提供する検査サービスを始めることで他社と交渉中だという。
日本で不妊治療の成功率が低いのは、体外受精をしている人のピークが40~41歳と、欧米より5歳も高いためである。「最近も40歳半ばで出産した有名人が話題となったが、奇跡に近い。多くの人に間違った情報を与えてしまっている」と嘆く。「私の知る範囲でも、若い時に正しい知識を持たず、今になって後悔する女性は多い。若い人に正しい情報を提供する必要がある」と話し、その啓蒙・啓発手段として一般向けサービスに期待をかけている。
※掲載している内容は、4月7日に発令された緊急事態宣言前に取材したものです。