こうした中で、産学官連携で電気自動車を開発するプロジェクトが立ち上がった。2012年の東京スカイツリー開業に合わせ、墨田区内の中小企業、早稲田大学、墨田区の産学官連携で環境に配慮した次世代モビリティを開発する話である。クルマの製作には、部品加工だけでなくて設計から組立てまでモノづくりの工程すべてが入っている。これを会社の事業構造を変えるための機会とし、開発にチャレンジしようと思った。
区内の10社を超える企業が共同開発したこの電気自動車は地元ゆかりの浮世絵師、葛飾北斎にちなんで「HOKUSAI」と命名され、大きな話題を呼んだ。「HOKUSAI」プロジェクト(09~12年)のほかにも、同社が参画した異業種交流・産学官連携事業は、深海7800メートルの3D画像撮影に成功した深海探査艇「江戸っ子1号」(09~13年)など多岐に及ぶ。
連携プロジェクトは新しい技術を勉強できるだけではない。人脈が広がり、ネットワークができて様々な情報が入ってくる。会社には溶接や板金など専門分野の従業員しかいなかったのに、設計や組付けなど広範な人材が集まるようになった。各プロジェクト単位での収益確保はもちろん、従業員教育や採用、従業員の満足度やモチベーション向上、メディアによる企業PR、新規取引先の開拓など得られるメリットは多い。
浜野氏は「父の代は部品加工が100%だったが、いま部品加工業務は全体の約6割。残りは設計・開発とかものづくり周辺のマネジメントやコンサルティング、製品製作など。あと3~5年後には業務の約8割を開発品や設計品にして約2割を付加価値のある難易度の高い加工品にもっていきたい」と話す。