京都大学経済学部で経済学を専攻した島田氏は卒業後、大学の友人と共同でサイバーセキュリティ会社を創業し、CTO(最高技術責任者)をつとめた。その後、会社を退き、イギリスに渡航。開発した囲碁の強化学習プログラムがプロ棋士を破ったことでも話題となったDeepMind社の創業者らも在籍していたUCL(ロンドン大学)で機械学習によるタンパク質の機能予測について研究を行った。「未知のタンパク質のアミノ酸配列情報のみからそのタンパク質の酵素機能が特定できるようになると、疾患に関わるタンパク質の探索や、新しい有用合成生物の開発が可能になる」(島田氏)として、大学での研究成果をもとに2018年、AI創薬を手掛けるSyntheticGestalt社をロンドンと東京で設立した。
同社のAIシステムは、機械学習によって新薬に繋がる候補化合物を発見しようというもの。従来の数千倍にもなる40億個程度という膨大な量の化合物ライブラリーから、最短で1、2日で20~50個の候補化合物を探索し、その後、実験を通じて2、3個に絞り込めるという。前臨床候補化合物として有望な化合物を作り出すのには従来は4年~5年半の時間と20億円の費用がかかっているが、同社のシステムでは、研究期間を数カ月に短縮し、費用を50分の1~100分の1に圧縮することが可能になる。
「今ある難病の中には、莫大な開発費用がかかることから薬を創ることがネグレクトされているものもある。AIの力で費用を抑えることにより、薬を創出できれば、そうした難病に苦しむ人々にとって助けとなりうる」と島田氏は強調する。
創業してから間もないが、すでに製薬会社と新型コロナ治療薬の創出で提携。2021年には医療ベンチャー、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(名古屋市)と炎症・中枢神経疾患に対するキナーゼ阻害薬の共同研究契約を結ぶなど、早くも実績を上げつつある。