起業後、最初に決めなければならなかったのは、デブリをどうやって除去するかという方法論だった。手探りの研究が始まった。技術を理解し、仮説を組み立てるために関連論文700本に目を通し、300本を精読した。論文に付いている著者の連絡先のメールアドレスに質問を送り、仮説を携えて各国の学者を訪ね歩き、1年間で世界を3度巡った。
宇宙ゴミは地球の周りを秒速7~8キロで飛んでいる。方向もいろいろだ。宇宙空間で光るいろいろなもののなかから「ゴミ」を見極め、近づいて相対速度をゼロにしてつかまえる。その後に回転速度もゼロにする。ゴミをつかまえ、安定させ、大気圏に入れて燃やす技術が必要だ。専門スタッフの支援も得て、衛星打ち上げ前に金属製の軽量プレートを付け、磁石でゴミを捕獲する方法にたどりついた。
東京・錦糸町に自社工場を建て、人を増やし資金も日本円で約160億円調達した。衛星はほとんど完成していま最終試験中。新型コロナウイルス感染拡大でオフィスはシャットダウンしたが、衛星試験の最終段階は多くをリモートでできるようにしたので影響はほとんどなかった。
デブリ除去の第1号衛星は今年中にロシアからソユーズで打ち上がる。ロケットの打ち上げ失敗は20回に1回、成功率は90%前半だ。打ち上げ失敗の確率はゼロではないが、必ず打ち上げを成功させて軌道上で実証実験を終えたいと念じている。
宇宙空間に漂うゴミに近づいて行って捕まえる自社技術が活かせれば、衛星寿命延長サービスも提供できる。静止軌道上には衛星が約500あるが、打ち上げ15年目くらいに燃料が切れ寿命を迎える。だがそうした衛星のなかには正しい位置に軌道制御してやればまだ使えるものがある。一方でゴミを除去し、他方で正しい位置を保持して寿命を延ばす「軌道上サービスで食っていく」考えだ。
設立後、スペースデブリの除去を掲げる競合企業が世界中で何社も出てきたが「技術でもビジネスプランでも、各国の宇宙政策作りへの貢献でも、うちがダントツ」と自負をのぞかせる。いま47歳。10年後にはデブリ除去をあたりまえにしたい。「朝生ゴミを出したら昼にはなくなっていたみたいな感じに」。スペーススイーパー(宇宙の掃除屋)のパイオニアはそう言って笑った。