省エネQ&A

窓への省エネ対策はどんなものがありますか?また、その効果算定方法は?<建築物省エネその3:窓の二重窓化>

回答

日射の室内に注ぎ込む割合を日射熱取得率と呼び、小さいほど遮熱性能が高いことを意味します。日射熱取得率を小さくすると室内が暗くなるため、ある程度日射取得率を低く保ちつつ可視光透過率を大きくするとともに、複層ガラス化(二重窓化)して熱伝達抵抗を高めています。

建築物の省エネ性能を向上させた際の省エネ効果量の算定方法に関わる3回目として、窓の二重化を取り上げます。

窓は採光を得るために設置するものであることから、屋根や壁とは異なり、日射光が室内に注ぎ込みます。下図は、6mmの透明板ガラスからの日射の割合を示しています。

6mmの透明版ガラスからの日射の割 6mmの透明版ガラスからの日射の割

図から、透過率は81.5%であり、吸収したものの再放熱割合を加味すると、日射量の85.4%もが室内に注ぎ込むことが分かります。室内に注ぎ込む割合を日射熱取得率と呼び、「μ値」と呼ばれています。

μ値が小さいほど遮熱性能が高いことを意味し、特に建物の冷房負荷の大小を示す指標となっています。日射熱取得率を小さくすると室内が暗くなるため、ある程度日射取得率を低く保ちつつ可視光透過率を大きくするとともに、複層ガラス化(二重窓化)して熱伝達抵抗を高めています。

加えて、例えばエアフローウィンドウ(下図:出典は板硝子協会 ビルと複層ガラス)とし、室内空気を窓内に通してその空気を外気に捨てたり、空調機に戻すなど、システム化することで大幅な省エネを実現しています。

エアフローウィンドウについて エアフローウィンドウについて

板硝子協会の「ビルと複層ガラス」の表2.1では、「複層ガラス、高性能熱線反射複層ガラス、Low-E複層ガラスの光学・熱特性」の一例が掲載されています。

表:複層ガラス、高性能熱線反射複層ガラス、Low-E複層ガラスの光学・熱特性の例

構成

熱貫流率【W/m2K】※1

日射熱取得率【-】※2

可視光透過率【%】

透明単板ガラス

5.8

0.85

88

透明複層ガラス

2.9

0.74

79

高性能放熱線反射複層ガラス

2.3

0.17

8

日射遮蔽型Low-E複層ガラス

1.6

0.42

67

日射取得型Low-E複層ガラス

1.9

0.64

73

※1 室内外気温差が1℃であるとき、高温側から低温側へ1m2あたり流出する熱量。
※2 受照日射量に対する、ガラスを通じて室内に流入する熱量の割合。

表の熱貫流率はU値と呼ばれる数値であり、Ro,R,Riとは、

1/U=Ro+R+Riの関係があります。

なお、窓のU値は国立研究開発法人建設技術研究所 外皮の計算方法の表4にも記載されていますが、μ値が記載されていないため、板硝子協会の資料で計算を行っています。

【試算と結果】

東京での冷暖房期の8時から18時までの平均外気温度は、気象庁データより、
6~9月:27℃
12~3月:9.7℃

東京での冷暖房期の全天平均垂直日射量は、NEDOの「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」より、
1)6~9月の4か月の平均値は2.12kWh/m2(平方メートル)/日
2)12~3月の4か月の平均値は1.71kWh/m2(平方メートル)/日

冷房期の削減入熱量は、遮熱効果と断熱効果に分けて、
遮熱効果:(0.85-0.42)×2.12kWh/m2(平方メートル)/日×100m2(平方メートル)×100日/年=9,116kWh/年
断熱効果:(27-26)℃×(5.8-1.6)W/m2(平方メートル)/K×100m2(平方メートル)×1,000h/年=420kWh/年
合計:9,116kWh/年+420kWh/年=9,536kWh/

暖房期の削減入熱量も、遮熱効果と断熱効果に分けて、
遮熱効果:-(0.85-0.42)×1.71kWh/m2(平方メートル)/日×100m2(平方メートル)×100日/年=-7,353kWh/年

注記)マイナスとなるのは日射量が減るためです。

断熱効果:(22-9.7)℃×(5.8-1.6)W/m2(平方メートル)/K×100m2(平方メートル)×1,000h/年=5,166kWh/年
合計:-7,353kWh/年+5,166kWh/年=-2,187kWh/年

注記)冷房と暖房の両方が必要な地域では、二重窓化により暖房期は増エネとなる傾向があります。

以上から、年間の空調機の削減電力量は、
(9,536-2,187)÷2.7=2,722kWh/年と求められます。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均