ビジネスQ&A

お客さまが店内に入りやすい飲食店の店舗レイアウトについてアドバイスをお願いします。

地場の居酒屋チェーンに加盟しているFC店の店長です。売上を増加させたいのですが、満席でないときでも店内を覗いただけで入らないお客さまが多いので、改善しようと思っています。客席の構成が悪いのかと思ってチェーン本部に相談したのですが、これといったアドバイスもなく、サービス強化を要請されただけでした。何かヒントはないでしょうか。

回答

開放感があり、外からの透視度が高く、明るい店づくりを目指しましょう。また、従業員動線にも気を配りながら、囲いや背もたれのない席を減らし、テーブルの向きや形状も工夫しましょう。

店舗設計にあたって大切なことは、お客さまの視点から入りやすく、歩きやすく、見やすく、分かりやすいレイアウトにすることです。飲食店の場合は、さらにくつろぎやすさが求められます。

【入りやすさ・歩きやすさ】

まず、初めてのお客さまの気持ちになってお店の外観を見てみることをお勧めします。

ファサード(店舗外装正面)に開放感はありますか。

入口は多く広くしたものを店頭開放型、逆のものを店頭閉鎖型と呼びます。敷地の形状にもよりますが、エントランス(入口廻り)は広くとる方が一般的には入りやすくなります(もちろん、お店の個性を出すために、あえて閉鎖型にする場合もあります)。

そのほか、物理的には、道路面との段差の解消、自動ドアの設置、店名や店頭メニューパネルが読みやすい明るい照明、200cm程度の出入口の鴨居なども、一般的に入りやすさの条件になります。

心理的には、活気のあるBGMや店内雑音、魅力あるサンプルケースなども大切な要素です。また、特徴のある看板や暖簾、日除け、壁付けサインなどをアイキャッチャーとして活用することも検討してみてください。

【見やすさ・分かりやすさ】

エントランスまたは路上からの店内の見通しを透視度と呼びます。一般的に、気軽に入れるお店は透視度を高くするようにして、従業員の動きやお客さまの入り具合が外から確認しやすい工夫をしています。店内のカーテンを外してみるだけでも、印象が変わるのではないでしょうか。

また、店内照明も重要です。高級感や個性的な雰囲気を出すために、全体の照度を抑えてスポットライトなどによるポイント照明を中心とする場合もありますが、一般的には、直接照明と間接照明を組み合わせたベース照明で店内を万遍なく明るくする方が、お客さまは心理的に入店しやすいでしょう。

奥行きの深い店舗やL字型店舗の場合は、客席稼働率をあげるために、中間の席に変化をもたせたり、壁面POPや照明を工夫したりして、お客さまを奥まで誘導しやすくしましょう。

【くつろぎやすさ】

飲食店のレイアウトを考えるときに、もっとも重要なポイントの一つは客席構成です。

人は、本能的に安全で見晴らしがよい場所を選ぶものなのでしょうか。一般にお客さまは、窓際、壁際、両端、奥から順に席をとっていく傾向にあります。ですから、外から見える席にお客さまを優先的にご案内することによって、お店の側も賑わいの演出が図れ、同時にお客様のくつろぎやすさも得られるのです。

逆に、背もたれのない席だけのテーブルや、囲いのない中島の席、厨房や手洗いの側などの落ち着かない席などは、敬遠されがちです。もしあなたのお店にそういう席が多くあるようなら、客席稼働率の改善のために、スクリーンや観葉植物などで、囲いや背もたれの代わりをつくってみましょう。この場合、店が狭く感じないように高さや材質を工夫してください。

また、テーブルの向きを縦横ミックスにすると、お客様同士の視線の交差を防ぐことにより、くつろぎやすさが生まれることもあります。よく似た理由で、丸型テーブルは、お客さまのグループ内の閉鎖性が高まるので有効な場合があります(ただし、スペースの無駄が生じ、客席数が確保しにくいという欠点はあります)。

それから、テーブルを床に固定しない可動式テーブルにしておくと、客数に応じてテーブルを移動させることもでき、柔軟に対応できます。テーブル内空席を減らすため、2人席も用意できるようにしておくことが望ましいでしょう。

近頃では「お一人様席」も求められるようになってきました。

さらに、最近は嫌煙者が増えていますので、店内分煙を工夫して禁煙席を明示しましょう。入ったとたんに煙がモウモウというのでは、新規のお客さまを逃してしまうかもしれません。

以上、店舗レイアウトのヒントを述べてきましたが、お店の店員の動きやすさ、つまり従業員動線も重要なポイントです。あまり複雑なレイアウトを組み合わせた結果、従業員動線が長くなり、サービスが低下することなどがないように、よく検討してみてください。

回答者

中小企業診断士 岩佐 大

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