ビジネスQ&A

客単価を向上させるにはどのような工夫をすればよいか教えてください。

駅前で婦人服の店舗を経営しています。現在の客単価は3,000円なのですが、低価格のチェーン店などの出店により、客単価が年々低下しています。どのような工夫をすれば、客単価を向上できるのでしょうか。

回答

客単価向上の視点は、買上点数の増加と、商品単価の向上になります。品揃え、接客、POP、ディスプレイなどもう一度店舗のオペレーション業務を見直して、項目ごとに客単価向上の取り組みを実行し、継続して取り組みましょう。

近年のデフレ傾向や消費者行動の変化などさまざまな要因により、多くの業界で客単価が低下しています。経営者としては、どのように客単価を高めるのかを戦略的に検討する必要があります。店舗政策として、「品揃え」、「接客」、「POP」、「ディスプレイ」に関して、客単価向上の取り組みを説明いたします。

<客単価向上の視点>

  1. 買上点数の増加
  2. 商品単価の向上

【品揃え】

お店の品揃えも、客単価向上において見直すべき項目の1つです。お店のスペースは限られていますので、常に売れ筋商品を仕入れて商品回転率を向上させる必要があります。また、自社のコンセプトを考慮しながら、単価の高いブランド品やコーディネートする小物なども商品ラインに加えることで、高価格商品の販売や商品点数の増加につながり、客単価が向上します。

しかし、あまり商品ラインを広げすぎるとお店の特徴が失われる場合がありますので、お店のコンセプトや顧客ニーズなどを考慮して、判断する必要があります。

●PI(Purchase Incidence)

商品アイテムごとの、顧客の購買率を表す指標にPIがあります。PIは、購買指数もしくは支持率と呼ばれ、「Purchase」 は購入、「Incidence」は発生率の意味になります。PIには複数ありますが、代表的なものに数量PIがあります。数量PIの算出方法は、図1のようになります。

数量PI算出式 数量PI算出式
図1 数量PI

たとえば、Aブランドシャツの総販売点数が50枚、客数が1,000人(レシート数)の場合にはPI値が5%となり、来店客数の20人に1人がAブランドシャツを購入していることが分かります。PI値が高いほど、購入客数が高い商品アイテムになります。POSシステムの単品データから、商品アイテムごとのPI値を算出して、品揃えに活用してください。

【接客】

客単価向上の1つの方法としては、店舗スタッフの接客力の向上があります。婦人服の場合には、パンツやインナー、小物などのコーディネート提案により、多くの商品点数の購入(組み合わせ販売)が実現すれば、客単価が向上しますので、店舗スタッフは提案型の接客力を身に付ける必要があります。

しかし、接客を嫌うお客さまもいますので、お客さまの態度をうまく把握して、柔軟に対応する必要があります。次のような従業員教育により、接客スキルを高めましょう。

  1. 定期的なロールプレイングによる顧客対応力の向上
  2. コーディネートや最近のファッションに関する勉強会の開催
  3. 販売力の高い店舗スタッフからの接客ノウハウの伝授
  4. 専門雑誌などの購読

また、接客をとおしてお客さまと親しい関係になれば、お店の固定客になってくれる可能性が高くなります。一般的に固定客の場合は、セール品などよりも高付加価値品を購入してくれますので、客単価が向上します。店舗スタッフ全体で、固定客化に対する高い意識付けを行いましょう。

【POP(Point of Purchase)の活用】

POPを工夫することで、客単価は向上します。たとえば、「高級カシミヤ100%の軽量コート」など、洋服の素材や品質などをPOPで説明することにより、お客さまはどのような商品なのかがひと目で判断できます。インパクトのある文句を付けると効果的です。また、関連する別の商品を紹介するなど商品単体にとどまらない工夫を行えば、お客さまの購入意欲をさらに高め、客単価も向上するでしょう。

POPに写真を付けることや、文字の色を工夫して作成してみてください。一般的に色は3色以内(黒、赤、黄など)が望ましいです。現在では、パソコンなどでPOPの作成は可能ですが、わざと手書きで作成することで、雰囲気を出すなどの工夫も有効です。競合他店やほかの業界の店舗を視察して、うまくPOPを活用しているところを参考にしてみましょう。

【ディスプレイ】

マネキンなどのディスプレイはお客さまがとくに注目しますので、こまめに変更する必要があります。マネキンが着ているものは、お客さまがコーディネートとしてイメージしやすいため、セットで購入してもらえる可能性が高くなります。POPなども工夫して、単品の価格とトータルの価格を合わせて表示することが望ましいと言えます(図2)。

また、いつも同じディスプレイの場合には、お客さまに新鮮なイメージを与えることができません。同じ種類でも色を変えるなど、できるだけこまめに変更しましょう。

単体とトータルの価格表例 単体とトータルの価格表例
図2 単体とトータルの価格表示

店舗のオペレーション業務をもう一度見直し、顧客重視の接客を行うなどの客単価向上の取り組みを実行していきましょう。また、業績を上げている小売店も成功事例として参考になりますので、実際に見て調べてみましょう。

回答者

中小企業診断士 沢田 一茂

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