コロナ禍でがんばる中小企業

抗菌手袋で自社製品の開発・生産に挑戦【有限会社大勝製造所】(高知県土佐市)

2020年10月19日

優れた抗菌性能を持つ「抗菌手袋」
優れた抗菌性能を持つ「抗菌手袋」

1.コロナでどのような影響を受けましたか

当社は手袋と靴下を下請けで製造しており、手袋の一大産地である香川県東かがわ市の白鳥地域にある大手メーカーへのOEM(相手先ブランドによる生産)が収益の柱だ。工場には手袋編み機を41台、5本指靴下の編み機を27台備える。ただ暖冬や海外製品におされて受注量は年々減っており、4年前に会社を存続するために家族経営に切り替えた。直近の2020年1月期は約4000万円を売り上げている。

しかし予想もしなかった新型コロナウイルス感染症の影響で、受注量は一気に激減した。例年なら5月から11月にかけては1年間で最も忙しい時期。ところが今年は、5月は前年に比べて90%も減少し、6月から9月にかけて前年同月比で80%も減少した。

受注が激減するなか、まず1日の稼働時間を従来の3分の1程度に切り替えた。資金面でも逼迫する状況となり、事業を存続するために、持続化給付金と新型コロナウイルス感染症対策融資を活用した。

2.どのような対策を講じましたか

工場を背に大勝俊作代表取締役(右)と妻で企画・営業担当の理江さん
工場を背に大勝俊作代表取締役(右)と妻で企画・営業担当の理江さん

「新型コロナウイルス感染症には手洗いや消毒が効果的」というニュース報道にヒントを得て、今まで経験のない「自社製品の開発」に取り組もうと決断した。以前から下請けだけの経営では存続が厳しいと思いながらも、なかなか行動に移せなかった。しかしコロナ禍の受注激減を機に、これまでに培ったノウハウを最大限に活用した「抗菌手袋の開発」にチャレンジすることにした。

早速、繊維会社に問い合わせたところ、抗菌・制菌・防臭効果のある糸があることが分かった。またニュースで「銅に抗菌・抗ウイルス効果がある」ことを知っていたことから、この糸と銅繊維とを一緒に編み込んだ手袋の開発に着手した。

商品化に当たっては、より多くの人にとって使いやすく、安価で、ストレスがかからない点を重視した。薄手で手にフィットし、伸縮性に優れた手袋を目指し、独自の編み方を取り入れた。通常の手袋よりも手首を長めに仕上げ、手首周りの締め付けを工夫することで、ストレスを軽減するなど、試行錯誤しながら商品化に成功した。

素材の内訳は、レーヨンシルク70%、銅繊維15%、ポリエステル、ナイロン、ウレタンが各5%。公的検査機関に黄色ブドウ球菌を使った抗菌性能の試験を依頼した結果、洗濯を10回繰り返したにもかかわらず、洗濯前の手袋と同等の抗菌性能を維持していたことが明らかになった。また通電効果のある銅繊維を使っていることから、手袋を付けたままでスマートフォンや現金自動預払機(ATM)を操作できるなど、さまざまな作業が可能だ。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

工場内には手袋や靴下の編み機が68台並ぶ
工場内には手袋や靴下の編み機が68台並ぶ

当社は下請けに特化してきた町工場であり、販売ノウハウがない。そこで高知県産業振興センターや高知県よろず支援拠点の支援を受けながら、商品パッケージの作成や販路開拓を進めている。

衛生意識の高まる首都圏市場での販売を目指しており、近く東京・銀座の高知県のアンテナショップ「まるごと高知」で取り扱いを始める予定だ。さらに高知県産品の販路開拓で取引のある大手雑貨店や百貨店にも抗菌手袋を売り込む計画だという。

現在は新たな商品を開発している。技術力には自信があり、さまざまなアイデアが浮かんではトライする毎日だ。今後は他社にない高品質な自社製品の開発・販売に力を入れ、会社の規模も徐々に大きくしていきたいと考えている。

企業データ

企業名
有限会社大勝製造所
Webサイト
設立
1985年8月1日
代表者
大勝俊作 氏
所在地
高知県土佐市高岡町丙383
Tel
088-852-1315

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