起業マニュアル

起業後に発生する税金

起業後に発生する税金

起業後に発生する税金は多くあります。全てを知るのは難しいかもしれません。ただ、起業家として特に知っておきたいのは、国税である法人税、所得税、消費税、印紙税と、地方税である住民税、事業税、固定資産税です。
今回取り上げた7つの税金の概要だけでも知っておくと金融機関や税理士とのやり取りもスムーズになります。

全体概要

税金は国税と地方税に大別できます。
国税とは、国に納める税金で、所在地を管轄する税務署が窓口となります。
地方税とは、都道府県や市町村に納める税金で、都道府県であれば都道府県税事務所、市町村であれば市町村の税務関連部署が窓口となります。
不明な点があれば、遠慮なく担当窓口か税理士に相談してください。

国税

実務で扱うことが多い、法人税、所得税、消費税、印紙税について説明します。

1. 法人税

法人税は、株式会社や合同会社など法人の所得(利益)に課される税金です。したがって、個人事業主は無関係な税金です。
税率は、一律で約2割です。しかし、資本金1億円以下の法人(以下「中小法人」といいます。ただし、資本金5億円以上の大法人の子会社などは除きます)は、年800万円以下の所得について税率が15%となる優遇措置があります。また、中小法人であれば、本来損金(法人税では費用のことを「損金」といいます。以下、同じ)に入れられない交際費も、年800万円まで損金にできる優遇措置があります。
その他、青色申告するとさらに優遇措置があります。設備投資や従業員を雇用した場合などは、優遇措置があるか調べてみるといいでしょう。また、個人事業主と異なり、社長など役員の報酬を損金にできるのもポイントです。

2.所得税

所得税は、個人の所得に課される税金です。
不動産所得や給与所得など10種類の所得があり、個人事業主の事業の儲けは「事業所得」といいます。原則として複数の所得があればすべて合算します(分離課税する所得は除きます)。
一方で、所得税には「所得控除」といって所得を減らせる制度があります。例えば、個人で支払った社会保険料は「社会保険料控除」、小規模企業共済に支払った掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引けます。
原則として、所得の合計額と所得控除の合計額を差し引いた金額に税率を乗じると、納付すべき所得税が計算できます。税率は、所得によって異なり5~45%と幅があります。
個人事業主であれば、青色申告の承認申請を検討しましょう。青色申告を行うと青色申告特別控除などの税制優遇を受けることができます。
法人の役員も役員報酬は所得税の対象です。法人で年末調整した場合は原則として確定申告は不要ですが、複数から給与収入を得ている場合や医療費控除など年末調整できない所得控除を行う場合は確定申告が必要です。

3.消費税

消費税は、商品やサービスの消費に課税される税金で、法人、個人事業主両方に関係する税金です。
税務署に納付すべき消費税の計算方法は、原則、売上のときに「預かった消費税額」から仕入や設備購入などで「支払った消費税額」を差し引いて計算します。ただし、一定の基準に該当する事業者は「簡易課税」といって、預かった税額に一定のみなし仕入率を乗じた金額を「支払った税額」とみなすことができる、簡単な計算方法も選択できます。
また、個人事業主は、原則として前々年、法人は前々事業年度の課税売上高が1千万円以下のとき、消費税の納税義務が免除されます(以下「免税事業者」といいます)。したがって、設立1年目と2年目は原則として納税義務がありません(一定の場合は初年度から納税義務があります)。ただし、「預かった消費税額」より設備投資などで「支払った消費税額」が多いときでも、免税事業者は消費税の還付が受けられないので注意してください。還付を受けたいなら、期限までに「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出する必要があります。大きな設備投資をするときは早めに税理士に相談しましょう。

4.印紙税

契約書や領収書など一定の文書を作成したときに課税される税金です。印紙税が課される文書やその金額は、「印紙税額一覧表」で確認できます。例えば、領収書であれば、5万円以上のものは収入印紙を貼り付け、印鑑などで消印する必要があります。うっかり収入印紙を貼り忘れると過怠税というペナルティが課されるので注意してください。
なお、郵便局であれば全種類の収入印紙を購入することができます。

地方税

実務で扱うことが多い、住民税、事業税、固定資産税について説明します。

1. 住民税

個人と法人の所得などに課される税金で、1月1日に住所や事務所がある都道府県と市町村に納税します。税率は、都道府県や市町村によって異なります。
また、「均等割」といって個人、法人に課される定額の税金もあり、赤字でも納税しなければなりません。法人は、個人より均等割はかなり高く、都道府県分と市町村分を合わせて最低でも7万円はかかります。
個人事業主は、国(税務署)に確定申告をしていれば、改めて申告する必要はありません。法人は、管轄の都道府県税事務所と市町村(東京都23区の場合は都税事務所のみ)に法人税とは別に確定申告します。

2. 事業税

事業税は、個人や法人の事業の所得に課される都道府県の税金です。個人は個人事業税、法人は法人事業税として課税されます。税率は、都道府県によって異なります。
納めた事業税は、個人事業主なら租税公課として必要経費となり、法人なら法人税申告時に調整することで所得を減らせます。
個人事業主は、国(税務署)に確定申告をしていれば、改めて申告する必要はありません。法人は、管轄の都道府県税事務所に法人税とは別に確定申告します。

3. 固定資産税

毎年1月1日に土地、家屋、機械装置などの固定資産を所有する個人・法人に課税する市町村税です。毎年、納付書が市町村(東京都23区の場合は東京都)から発送され、年4回に分けて納めます。
機械装置や器具備品など減価償却している固定資産があれば、1月末日までに市町村(東京都23区の場合は都税事務所)に申告する必要があります。
事業に関係する固定資産税は「租税公課」として費用計上できます。

今後のヒント

税金は専門性を必要とする部分がかなりあり、素人判断は禁物です。間違って滞納をした場合は、融資や中小企業支援施策が受けられないこともあります。
もし自分では難しいと思ったら、税理士に早めに相談・依頼してください。決算期や税務申告期限の直前では税理士が対応できない場合もありますので注意してください。

同じテーマの記事