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社会保険に加入する

社会保険とは

「社会保険」とは、健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険の総称です。 なお、健康保険と厚生年金保険の2つをまとめて「社会保険」と呼び、労災保険と雇用保険の2つをまとめて「労働保険」と呼ぶこともあります。

本項では、狭義の社会保険(健康保険・厚生年金保険)について説明します。

健康保険の概要

健康保険は、保険に加入している被保険者とその家族に対して、

  • 病気やケガをした場合の治療費の補助
  • 病気やケガ、出産により休業した場合の生活費の補助
  • 出産、死亡に際してかかる費用の軽減

などを主な目的としています。

  • 日常生活上の傷病などが対象で、たとえば仕事中や通勤途中の事故などによるケガには労災保険が適用されます。給付の種類と内容は次のとおりです。

給付の種類と内容は次のとおりです。

  • 退職後の出産手当金の給付については、平成19年4月より廃止されました。出産育児一時金については、退職前に1年以上健康保険に加入していた人が6カ月以内に出産した場合に支給が受けられます。
  • 平成20年4月より、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)が創設され、75歳以上または65から74歳で一定の障害の状態にある場合は、長寿医療制度(高齢者の国民健康保険)に加入することとなります。この場合、現在加入している健康保険の被保険者・被扶養者ではなくなります。

厚生年金保険の概要

厚生年金保険は、被保険者または被保険者だった人が、老齢・障害・死亡のいずれかの状態になった場合に、本人またはその家族や遺族の生活保障を行うことを主な目的としています。
厚生年金には次の3つの種類があります。

老齢厚生年金・・・被保険者の老後の生活保障

障害厚生年金・・・被保険者期間中に障害をもった場合の生活保障

遺族厚生年金・・・被保険者が死亡した場合の遺族の生活保障

適用事業所

社会保険は、法人企業であれば必ず加入しなければなりません。現在、一部の個人事業(※)を除き、全面的に強制適用となっています。具体的には、株式会社などの法人企業では1人でもいれば(従業員がおらず、社長1人であっても)社会保険の加入手続きをとらなければなりません。加入は事業所(本社、支社、工場など)単位で行います。

なお、常時5人未満の個人経営の事業所やサービス業(旅館業、飲食業、ビル清掃業など)は、加入を義務付けられてはいませんが、希望をすれば許可を受けて加入することができます。これを、任意包括適用事業所と言います。

<任意包括適用事業所の加入>
任意包括適用事業所が適用事業所になろうとするときは、従業員の2分の1以上の同意を得たうえで年金事務所に申請を行い、認可を受けます。この認可を受けると、社会保険加入に同意をしなかった従業員も強制的に被保険者となります。
また、被保険者の4分の3以上の同意を得て事業主が年金事務所に申請を行い、認可を受けたときは、その事業所の被保険者全員が社会保険から脱退することができます。

被保険者となる人

正規の従業員以外であっても、一定の条件を満たす場合には被保険者となります。

<例>

a)パートタイマーなどのうち、勤務時間・日数ともに正規の従業員の4分の3以上勤務する者
b)季節労働で継続して4ヵ月を超えて勤務する者
c)臨時的な事業で継続して6ヵ月を超えて勤務する者
d)日雇いで1ヵ月を超えて勤務する者
e)2ヵ月以内の期間を定めて勤務する者のうち、その期間を超えて勤務する者

  • 身分ではなく、常に使用関係があるかどうかによって判断されます。

被扶養者の範囲

被扶養者として認められるのは次の範囲の親族です。

a)直系尊属
b)配偶者(内縁関係の者も含む)
c)子、孫および弟妹
d)それ以外の3親等内の親族

  • a)~c)は、主として被保険者により生計を維持されていれば被扶養者と認められます。d)については生計維持関係に加えて同一世帯に属していなければ被扶養者と認められません。

加入の手続

加入の手続きは以下のとおりです。

社会保険の加入手続きを説明した表
  • 任意包括適用事業所の場合、提出書類は上記のものに加えて「健康保険任意包括被保険者認可申請書/厚生年金保険任意適用認可申請書」「従業員の同意書」を準備します。
  • 届出用紙などは年金事務所に備え付けられています。また、提出書類や添付書類は管轄の年金事務所によって異なることがありますので、詳しくは管轄の年金事務所もしくは社会保険労務士にお問い合わせください。

社会保険料

社会保険料は、事業主と従業員(被保険者)がそれぞれ折半して負担します。標準報酬月額(※保険料の計算を容易にするために月給額を固定したもの)に保険料率を掛けた額が月額保険料になります。

従業員負担分は毎月の給与から控除することになりますが、「保険料額表」という早見表で金額を確認すると簡単に求めることができます(次頁参照)。

一方、賞与にかかる社会保険料については、実際に支給された賞与額(1,000円未満を切り捨てた額)に保険料率を掛けて算出します。健康保険の賞与額の上限は年間540万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)、厚生年金は1ヵ月当たり150万円となっています。

現在の保険料率:

健康保険 都道府県によって9.26~9.42%(全国平均9.34% 平成22年3月より)
介護保険 1.5 %(平成22年3月より)
厚生年金 16.058%(平成22年9月より)

■平成22年3月分からの健康保険の保険料率

47都道府県の健康保険料率の一覧表
  • 厚生年金保険の保険料率の改定について
    平成16年の年金制度改正で、厚生年金の保険料率が毎年0.354%ずつ引き上げられ、平成29年9月以後は18.3%に固定されることになっています。

<平成22年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険の保険料額表>

厚生年金保険料率の一覧表
  • 上表では、坑内員・船員の保険料を省略しております。坑内員・船員につきましては、
    全額16.696%、折半額8.384%となっております。

(監修:社会保険労務士 富岡英紀・加藤美香)

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