中小企業応援士に聞く

植物の成分研究を医薬品・食品などに応用【OHTA合同会社(石川県野々市市)研究所所長・太田富久氏】

中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年5月17日

研究所所長の太田富久氏
研究所所長の太田富久氏

1.事業内容をおしえてください

金沢大学名誉教授の私が、これまでに研究してきた薬学的な研究成果や知的財産を活かし、より良い健康社会の実現に貢献するため、商品化や受託研究を行っている。特に地元・石川県内の植物に含まれている天然成分を抽出し分析することで、化粧品や食品、医薬品への応用を中心に展開している。

2.強みは何でしょう

同社が入居するインキュベーション施設「i-BIRD」
同社が入居するインキュベーション施設「i-BIRD」

まず天然物化学(Natural Product Science)を専門とする研究者の私自身が、商品化に関わっていることだ。グレープフルーツの医薬品相互作用の研究をきっかけに食品の有効成分の活用に着目し、その後、ハーブ、いちご、ハトムギなど、さまざまな植物の成分研究を行っている。これまでに取得した特許は20件を超えており、医薬品、食品、環境、衣服、住まいのそれぞれの場面に応じて薬学的見地からアイデアを提供できる。例えばイチゴのポリフェノールやハトムギに含まれる成分を抽出して、ダイエットや美白に効果のあるサプリメントを開発した。

次に、石川県内の大学や企業などと連携していることだ。当社は中小機構が石川県野々市市に整備したインキュベーション施設「i-BIRD」に入居しており、隣接する県立大学や他の入居企業とのコラボレーションにより多くの商品開発が進んでいる。例えば大学と共同研究した大豆のミクロパウダーを元に、肉や魚、卵、乳製品などの動物性食品を食べない「ヴィーガン」の人に対応したマヨネーズを開発している。

3.課題はありますか

営業部隊がいないことが課題だといえる。だがi-BIRDに入居していることで、中小機構の支援メニューを用いた販路開拓やインキュベーション施設に常駐するスタッフ(インキュベーション・マネージャー)のコーディネート力に期待している。

4.将来をどう展望しますか

世の中に知られている野菜や果物にも、実はまだ社会に知られていない新たな健康効果があることを明らかにしていきたい。また、これらの健康効果を生かした商品を、食品に近い形でできるだけ多くの方に提供したい。

5.経営者として大切にしていることは何ですか

新たな健康機能の発見に取り組む太田氏
新たな健康機能の発見に取り組む太田氏

まずは地場産品を有効に活用することだ。例えば加賀野菜として知られる金時草には、非常に多くの有効成分が含まれている。地元でなじみのある野菜などに、秘められた効果があることを知ってもらいたい。またi-BIRDでの企業間連携の成果として、能登半島在来種の大豆や能登の塩を使用している。

次に、地元企業との連携の輪をさらに広げることだ。石川県内の企業との連携の場として、i-BIRDを積極的に活用したい。現在、i-BIRDの入居企業や県立大学と連携し、SDGsにも貢献できる新たなプロジェクトの立上げ準備を行っており、地域一丸となり新たな産業の創出につなぐことを目指したい。

企業データ

企業名
OHTA合同会社
Webサイト
設立
2018年4月
代表者
西郷智純氏
所在地
石川県野々市市末松3丁目570番 いしかわ大学連携インキュベータ309号室
Tel
076-204-9885
研究所所長
太田富久氏

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