2021年10月 4日
1.事業内容をおしえてください

福井県鯖江市は日本で製造される眼鏡の9割以上を手掛ける「めがねのまち」だ。1905年、実業家の増永五左衛門が豪雪地帯の農閑期でもできる副業として少ない初期投資で現金収入が得られる眼鏡づくりに着目したのが始まりとされる。やがてパーツごとに分業体制を取りながら眼鏡がつくられるようになり、いつしか日本を代表する眼鏡産地となった。
この鯖江で眼鏡メーカーとして1984年に起業したのが当社だ。当時、鯖江にある眼鏡工場の多く︎国内外のデザイナーによる眼鏡のOEM(相手先ブランドによる生産)を手掛けていたが、当社はファッション性とデザイン性に優れた眼鏡を目指し、独自技術に裏打ちされた機能性をもつ日本ならではの眼鏡を鯖江から世界に発信したいと考え、1996年に自社オリジナルブランド『JAPONISM』をリリースした。スタートから25年経ったいまも、国内外のお客様から愛され支持され続けていると自負している。
2.強みは何でしょう

高いデザイン力を持つ眼鏡を自社でデザイン・企画して独自の販路で販売できることだ。この強みを創業以来活かし続けられているのは、インハウスのデザイナー5人の成長はもちろん、日頃から「多様性を許容し、社員から愛される会社でいること」を心掛けているからだ。
たとえば、従業員の半分を占める女性が育休後に復職しやすい体制を整備したり、男性の育児休暇取得の推進や個人の事情に合わせた働き方に柔軟に対応する取組みを導入したりしている。2020年度には「鯖江市ワーク・ライフ・バランス賞」を受賞している。また、エンドユーザーの半分は女性なので、女性ならではの豊かな感性をデザイン企画に活かしながら経営やブランディングをすることも大事だと考えている。
こうした当社の社風に魅かれる人も少なくない。先日、ボストンクラブの眼鏡を鯖江の直営店で2本買ってくれた若い人が面接を受けに来た。購入して、実際に掛けてみて、デザイン性と掛け心地の素晴らしさに魅力を感じ、ぜひボストンクラブで働きたいと申し出があった。給与や条件よりもやりがいを重視する人が増えているそうだが、こういう熱意のある人に働きやすいと思ってもらえる社内環境づくりも大事だ。
3.課題はありますか

眼鏡の産地として世界中に認識されるようになった鯖江だが、中国や韓国で生産された安価な眼鏡が数多く出回るようになったため、鯖江で作られる眼鏡の生産量は現在、1990年代ピーク時の約半分にまで落ち込んでしまっている。
ただ、国内外の需要は確実にある。実際、コロナ禍においても海外から新規の受注があった。直接会ったことのない海外企業だったが、WEB上でボストンクラブの眼鏡を探し出し、「Made in Japan」の眼鏡の価値を理解した上で、メールでのやり取りだけで商談が成立している。
アジアでの眼鏡の主な生産国は中国、韓国、日本だが、それぞれ期待される役割が異なる。日本に発注が来る意味を理解し、丁寧なモノ作りと確かな技術力を守っていけば、発注・生産双方にとってプラスの関係が築けるだろう。チタンの難しいプレス加工や微細加工ができる技術は鯖江にしかない。こうした技術力や品質の確かさが今後の大きなチャンスにつながることは間違いないと思っている。
4.将来をどう展望しますか

眼鏡産業の発展段階でいえば、1.0が医療用の視力矯正器具、2.0がファッション性だ。次は3.0としてウェアラブルデバイスとしての眼鏡の時代が来るだろう。当社が2017年に発売した『neoplug』は、デバイス機器を簡単に着脱できる眼鏡フレームだ。スマートフォンやスマートウォッチが当たり前になったように、ウェアラブルデバイスとしての眼鏡が当たり前の世の中になり、「スマートグラス」 がなくてはならない必需品になることは十分考えられる。眼鏡の可能性が広がることはとてもおもしろいと思う。眼鏡そのものの将来は明るく可能性も無限大だ。
5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか
福井県眼鏡工業組合の理事長も務める私が大事にしているのは「産地」としての鯖江だ。産地があるからこそ眼鏡が作れるし、働く場所があると考え、産地の活性化のために、いろいろな取組みをしている。
その一つが学生への教育だ。小学5年生社会の教科書に思いを伝えるコメントを出し、地元の中学生向けに眼鏡デザイン授業を実施している。京都精華大学では将来のメガネデザイナーを育成する日本初の産学連携プロジェクト『あいうぇあ デザイン あいうえお』に参画し、未来のデザイナーも育てている。
鯖江市で成人式を迎える約700人全員に鯖江製眼鏡をプレゼントするプロジェクトにも参加している。若い人たちに鯖江の眼鏡を知ってもらうことで地元に誇りを持ってもらい、一度は県外に出てもいずれ地元に戻ってきたいと思ってもらえるようにしたい。
眼鏡を作る人と使う人の双方が楽しめる鯖江にすることにも積極的に取り組んでいる。当社の本社に隣接した4階建てビルに、自社ブランドの歴史や技術を知ることができるミュージアムを併設した直営ショップを2017年に開設したのもその一環だ。
福井県眼鏡協会が2014年にスタートした『めがね好きのための、めがねづくしの2日間。めがねフェス』にも実行委員長として携わっている。「音楽と眼鏡」「食と眼鏡」など眼鏡に関する企画を実施する眼鏡のお祭りで、来場者は色々な眼鏡をかけながら2日間を楽しむ一大イベントだ。
2019年に発足した『36プロジェクト』にも参加している。地元の銀行や鉄道会社とともに眼鏡産業が活発な地の利を生かした持続可能なまちづくりを検討する事業で、産地ならではのつながりを醸成することが眼鏡を作る人のモチベーションアップにもつながる。産地はモノを作るだけ、という時代は終わろうとしている。地域のコミュニティを重視したい。
6.応援士としての抱負は
産地の将来、当社の今後を考えると、チャレンジしたいことはまだまだある。若い世代が第一線で活躍できるよう教育をしながら、社長である自分は時代の先を見据えながら半歩先を行く判断して決断することが肝要だと考えている。そのためには中小機構のアドバイスが必要だ。実績を積んで応援士として他の企業のみなさんにも伝えていきたい。
- 企業名
- 株式会社ボストンクラブ
- Webサイト
- 設立
- 1985年10月
- 代表者
- 小松原一身氏
- 所在地
- 福井県鯖江市三六町1-4-31-2
- Tel
- 0778-52-9337




