1973年(昭和48年)に宮城県内の歴史ある4つの酒蔵が企業合同して誕生し、今年でちょうど50周年を迎えた。大崎市の本社蔵を拠点に南部杜氏の伝統の技を継承し、手造りの仕込みによる高品質の酒造りを続けている。中小機構とは昔から縁が深く、企業合同して一ノ蔵を設立した際、中小機構の前身である中小企業総合事業団の高度化資金を活用した。
伝統的な手造りによる製造方法のもとに醸造した「無鑑査本醸造」は1977年の発売以来、全国の日本酒ファンに評価をいただいている一ノ蔵を代表する商品だが、近年では伝統と技術を守りながら固定観念にとらわれない新しいタイプの日本酒も提案している。アルコール分を清酒の約半分にした「ひめぜん」や発泡するシャンパンタイプの日本酒「すず音」は新たなファン層を獲得し、人気ブランドに成長した。
「一ノ蔵」という社名には、4つの酒蔵が一つになったこと、日本一の酒を目指す、という2つの意味が込められている。創業以来4つの酒蔵の創業家が持ち回りで社長を務めており、私は7代目。創業家の4人とも代表権を持っており、合議制で会社を運営している。
「家族ぐるみでつき合い、喜びも悲しみも分かち合う。力を合わせて新しい蔵を作り、できるだけ手づくりの仕込みを残した高品質の酒を造る」。創業時の初代社長の経営理念を大切に守っている。4人それぞれに得意分野があって、その得意分野を生かし、補完しあっている。「4人で一人前」という心がけで経営に当たっている。
現在の経営陣は、先代たちから事業を引き継ぎ経営者となるため、みな中小企業大学校のお世話になった。私は1年間毎月、東京校で経営管理者研修を受講し、実践的な経営ノウハウを習得した。3人の代表取締役も同様に経営管理者研修や経営後継者研修でみっちりと学んでいる。
中小企業大学校に通ったことで、経営陣で経営課題を共有できた。例えば、これまで仙台港の冷凍倉庫を借りて商品を保管していたが、財務の視点から設備投資して自社で日本酒を保管する冷凍倉庫を持つ方がよいとスムーズに判断できた。大崎市の本社内に免震耐震構造の冷凍倉庫が完成したのが2010年10月。その5か月後に東日本大震災が起きた。新設した倉庫に保管していた酒は瓶が割れることがなく無事だった。大学校での学びにより迅速な経営判断ができたおかげだと思っている。
現在も経営者向けの研修だけでなく、社員を対象にしたオーダーメード研修も積極的に活用している。