中小企業応援士に聞く

従業員の結束力で成長【株式会社三義(さんよし)漆器店(福島県会津若松市)代表取締役・曽根佳弘氏】

中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年8月16日

曽根佳弘氏
曽根佳弘氏

1.事業内容をおしえてください

揃いのユニフォームで作業する従業員
揃いのユニフォームで作業する従業員

当社は1935年に初代社長の曽根義雄が会津漆器の塗師として個人創業、1965年に株式会社三義(さんよし)漆器店として法人化した。福島県会津若松市で地元伝統の会津漆器をはじめ、電子レンジや食洗機に対応した樹脂製漆器などデザイン性と機能性に優れた食器類の製造・販売を行っている。

私は1984年に入社し専務取締役を経て2008年に社長に就任した。就任後、経営管理について学び、2014年の会社51期目から毎年経営方針書を策定し、経営を進めてきた。今年で58期目を迎えるが、それまで超えられなかった企業規模や従業員数50人の壁を突破するなど会社は成長を続けている。今後も経営理念や将来ビジョンを明確化し、社内展開・浸透を図り、目指す姿をはっきりさせる経営の積み重ねを大事にしていきたい。

2.強みは何でしょう

生分解性プラスチックを使用した「紫翠盃」
生分解性プラスチックを使用した「紫翠盃」

従業員やパートナー企業、協力企業など沢山の方の力があって経営が成り立つと考え、様々なステークホルダーを意識した経営を心がけてきた。これまでの積み重ねで培われた仲間を認め合い信じ合う「結束力」が当社の強みだ。

社内には美化、5S、社風、向上、親睦、広報と6つの委員会があるが、これらは社員の声で始まった。「会社に花壇を作りたい」という従業員有志が社内に花壇を設置したり、「このカラーコピーは本当に必要なのか」と社員が指摘して、コピー機の前に毎月の印刷枚数やコストの一覧が張り出されることで改善意識が醸成されてコスト削減につながったりしている。これらは従業員が「こういう会社にしたい」と自分達の会社だと思っているからこそ出てきた行動と結果だと思う。

今後もお客様・地域社会・従業員にとって良い会社を目指し、社内外を含めた結束力を高めていく努力を続けたい。

3.課題はありますか

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、会議や商談の在り方、消費者の行動様式など様々な環境が変わってしまった。こうした目の前の課題には早期対応を心がけた。以前は全員で集まって行っていた社内会議をオンラインに切り替えて実施するなど全社的なオンライン対応を図ったほか、巣ごもり需要やキャラクター絵柄の食器需要を取り込むことで売上の確保にも取り組んでいる。

中長期的な課題は職人の高齢化に伴う技術の承継だ。人材育成に加え、ロボット化も同時に行うことで対応していきたい。IT人材の確保も課題で、人材採用を含めて検討している。

4.将来をどう展望しますか

多種多様な漆器製品群
多種多様な漆器製品群

今期から従来の経営方針書に加え、中期経営計画書を策定し、経営を推進していく。中期経営計画書の策定では、中小機構のハンズオン支援で習得した「計画経営」の知識を活かし、緻密な現状分析を行って重点施策を立案するとともに、売上高、営業利益などの経営管理指標を前面に出すことを心がけた。

次世代に向け当社の付加価値をさらに生かすための独自技術や新製品開発にも取り組んでいる。近年、コンポストや土の中で水と二酸化炭素に分解される「生分解性プラスチック、ポリ乳酸」を使用した「紫翠盃」の販売を開始したところだが、今後も脱炭素化やカーボンニュートラルの観点から環境意識の高い漆器を作ることでSDGsに繋がる活動を積極的に推し進めていきたい。

5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか

世の中の人々に喜びや感動を与えられるように活動していきたいと考えている。人々に喜びや感動を与えることの先には「幸せ」が待っている。笑顔の仲間に囲まれている自分がいたら幸せだ。笑顔になれる同士が1人でも多く増えることを願っている。トップが変われば会社が変わり、会社が変われば地域が変わる。地域を良くするためには社長の同志を増やすことが重要だと思っている。

6.応援士としての抱負は

応援士として、経営に対する悩みを抱く他社の社長に対し、悩みに寄り添いながら自らの実体験を発信していきたい。同じ思いを持った同志を増やすとともに、中小機構が中小企業支援の輪を広げるために役立ちたい。「中小企業応援士」の名に恥じない活動を行っていくつもりだ。

企業データ

企業名
株式会社三義漆器店
Webサイト
設立
1965年4月16日
代表者
曽根佳弘氏
所在地
福島県会津若松市門田町大字一ノ堰字土手外1998-3
Tel
058-215-0066

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