中小企業応援士に聞く

華やかな貴婦人キャラクターと植物由来のピンク商品群で地域ブランド創生【ブリリアントアソシエイツ株式会社(鳥取県鳥取市)代表取締役・福嶋登美子氏】

中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2022年 2月 7日

貴婦人キャラクターとピンク商品群で地域ブランド創生を目指す福嶋登美子氏
貴婦人キャラクターとピンク商品群で地域ブランド創生を目指す福嶋登美子氏

1.事業内容をおしえてください

独自に設定した「華貴婦人」4姉妹
独自に設定した「華貴婦人」4姉妹

2004年の創業以来、「想いを形にする」観光と食のプロデュースを通じて、「食と健康」の両面から鳥取発の地域ブランドを創生することを目標に掲げている。また、鳥取のブランドであるマンガの手法をベースにした女性ターゲットの新商品開発や、「貴婦人になれる町・鳥取」のコンセプト設定など、地域活性化策と顧客ニーズに対応した新サービスの開発を目指している。

マンガの活用では、「華貴婦人(はなきふじん)」4姉妹という独自のキャラクターを設定した。「ゲゲゲの鬼太郎」「名探偵コナン」などマンガ王国である鳥取でも、女性を主人公とするイメージが浮かばない。そこで、鳥取市内にある白亜の洋館で、国の重要文化財となっている「仁風閣(じんぷうかく)」をモチーフに、4姉妹が登場する「とっとり山の手物語 華貴婦人」というオリジナルのマンガを制作した。ロココ調の華やかないでたちの4姉妹を活用し、鳥取発のブランド「華貴婦人」として商品・サービスのブランドイメージを広げている。

商品としては、鮮やかな赤が特徴のビーツの色素を使ったピンクの商品群を販売している。2014年に第一弾として「ピンク華麗(カレー)」を発売した。鳥取県は1世帯あたりのカレーの消費量・購入金額が多いことから、カレーで鳥取を盛り上げようという県の呼びかけに応えたもの。ピンクはもちろん貴婦人をイメージした色。続いて「ピンク醤油」を開発し、2015年7月にパリで開催された「ジャパンエキスポ」では、鳥取県ブースで2つの商品を展示した。ピンクはインパクトがある色だが、見た目の華やかさだけでなく、味や健康面でもしっかりとした商品に仕上げている。植物由来の色づけとなっており、みやげ商品として人気が高く、海外からも好評価をいただいている。

このほか、わさびやマヨネーズ、酒などがあり、昨年12月には、ピンクの化粧品「ブリリアントオランジュリー」を発売した。「ジェンダーレス」をキーワードにし、女性だけでなく、皮脂が多く水分が少ない男性の肌も意識して開発された商品だ。鳥取県の平井伸治知事にも「ぜひ使ってください」とプレゼントした。

2.強みは何でしょう

鳥取県産ビーツを使った「ピンク華麗」
鳥取県産ビーツを使った「ピンク華麗」

鳥取発の地域ブランド創出という創業の想いに共感してくれたスタッフ、連携している地域の事業者とともに積極的な取り組みを進められることが強みと言える。マンガと貴婦人をテーマにする取り組みと、ビタミン豊富な鳥取県産ビーツを使って美と健康にも通じるピンク商品群とが地域ブランドとして認められ、自治体と連携した各種イベントへの参加が求められるようになっている。

ピンク商品群の開発についても地元農家などの協力があって実現できた。ビーツはボルシチなどロシア料理ではよく使われているが、日本ではあまりなじみのない食材。実は鳥取県ではビーツは生産されていなかったため、鳥取市内の農家に依頼して生産してもらうことにした。ピンクカレーやピンク醤油をはじめとしたピンクの商品群は今では20種類にのぼり、地域資源を活用した地域ブランド化を進めることができている。

3.課題はありますか

2021年12月発売の化粧品「ブリリアントオランジュリー」
2021年12月発売の化粧品「ブリリアントオランジュリー」

鳥取県産ビーツを使ったピンクの商品群について、農商工連携事業としての国の認定を得られるか、また、国内外での販路拡大をどう進めていくか、という点で課題があった。そこで、中小機構の専門家支援制度の紹介を受け、事業計画のブラッシュアップを行うととともに、各種の情報提供も受けた。その結果、円滑に農商工連携事業の認定が得られ、沖縄大交易会への出展など新たな販路開拓にも取り組むことができ、以降の展開に自信を持つことができた。

一方、観光事業はコロナ禍で大きな影響を受けている。鳥取市内の回遊性を創出し、とくに市中心街の活性化を目指した仕組みづくりとして、2010年に「とっとり山の手物語 貴婦人プロジェクト」を発足させた。翌年からは、鳥取空港を起点に、当社が運営する飲食店やアートギャラリーなどを結ぶ周遊バス「貴婦人号」を運行していた。また、三輪自転車タクシーによるエコツーリズムも行っていた。しかし、コロナ禍で今はストップした状態となっている。コロナが収束したら、なんとか復活させたい。

4.将来をどう展望しますか

賀露地区に開所した「マリンフィールド・ラボ」
賀露地区に開所した「マリンフィールド・ラボ」

ピンクの商品群については海外展開を積極的に進めたい。具体的には、「ピンク桜葵美(わさび)」をアメリカで販売していきたい。昨今の和食ブームもあり、ロサンゼルスやニューヨークなど大都市で販路を開拓したい。またロシア向けにもPRしていきたい。ピンクの素となっているビーツはロシアではなじみのある食材。その点をアピールしていければと思う。

地域資源の活用もさらに進めたい。ピンクの商品群では、ビーツなどの農産物を活用しているが、2006年に鳥取港海鮮市場「かろいち」内に開設した「市場料理 賀露幸(かろこう)」では水揚げされたばかりの新鮮な海産物を提供している。そのなかにハタハタを使った「華鰰鮨(はなはたずし)」という独自メニューがある。ハタハタは秋田県が有名だが、実は漁獲量は鳥取県の方が多い。このように地域の資源を活かした企画で地元を元気にしていきたい。

2017年に認定された国の「地域未来牽引企業」に続き、2018年には地域経済牽引計画が鳥取県に承認されたことによって、商品開発の拠点整備を進めてきた。当社の本社所在地では引き続き市中心街の活性化拠点として充実させる一方で、空港にも近い賀露地区では、2020年2月に開所した商品開発の拠点施設「マリンフィールド・ラボ」によって今後の展開に向けた機能強化を図っており、地域活性化の新たな企画も進めていきたい。

5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか

当社の経営理念は、「食」「美」「健康」「地域資源」をテーマに「幸せ文化」商品とサービスの提案を通じて、顧客と社員、関係者と喜びを分かち合い、地域社会に貢献すること。そして、お客さまも迎えるスタッフも共に笑顔で「輝く」地域を目指したいと思う。さらに、地域の皆さんと一緒に、地域に眠る資源を活かした商品化を図るとともに、起業を考える皆さんを支援していきたい。

6.応援士としての抱負は

「こんなのあるんだ!大賞2015」を受賞し取材を受ける福嶋氏
「こんなのあるんだ!大賞2015」を受賞し取材を受ける福嶋氏

起業家、とくに若い女性の起業家をサポートしていきたい。私は元々、サラリーマンの妻として専業主婦だったが、夫が起業し、その後、私も起業することになった。夫も私も起業してからは中小機構をはじめとした支援機関、行政、地域の方々から多くの支援を受けてきた。その恩返しとして、起業家などに対し、活用できる支援策について情報を発信していきたい。

私は、「中国地域女性ビジネスプランコンテスト(SOERU=ソエル)」の審査員をつとめているが、受賞者のなかには鳥取県の女性も数多くいる。私自身、女性が起業することの大変さはよくわかっているので、そんな彼女たちを応援していきたい。こうしたお手伝いが地域の活性化につながっていけばうれしい。

企業データ

企業名
ブリリアントアソシエイツ株式会社
Webサイト
設立
2004年6月2日
代表者
福嶋登美子氏
所在地
鳥取県鳥取市大榎町3-3
Tel
0857-32-6030

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