業種別開業ガイド
ゲームセンター
2019年 11月 7日
トレンド
(1)足元での市場は回復傾向
一般社団法人日本アミューズメント産業協会『平成29年度 アミューズメント産業界の実態調査』(2018年11月)より「オペレーション売上高」を抽出したところ、ゲームセンターの市場規模は2017年度で4,859億円となっている。近年では2014年度の4,222億円を底に3年連続で市場は回復している
これはヒット機器のリリースがあったことに加え、2016年6月の改正風営法の施行により各都道府県条例が改正され、保護者同伴の場合、16歳未満でも18時以降最長22時までゲームセンターに入店可能になった(一部地域を除く)ことが背景にある。
ただし、ヒット作もスマホゲームなどで人気のコンテンツを活用したものが目立っているのが現状である。今後はVR(Virtual Reality:バーチャル・リアリティ)やe-Sportsといった新たな分野を成長させることができるかどうかが業界の課題となっている。
(2)フランチャイズ加盟やシングルロケによる開業
ゲームセンターはスマホゲームの影響で来店者数が減少、大手事業者でも難しい経営を強いられ、大手ゲームメーカーによる系列化や大手流通会社の系列会社の台頭も進んでいる。このような環境の中、ゲームセンターの店舗数は減少しているものの、売上は全体として回復している。この要因としては、店舗の淘汰が進む一方で、集約・大型化が進むことで一店舗あたりのゲーム機器の設置台数が増加していることがある。
こうした中では、個人がゲームセンターを専業で新規開業するのは容易ではない。理由としては、通常100円というプレイ料金に対する運営費用の増大がある。次いで、ネットワーク通信型のアーケードゲーム機が増えて1プレイに対するデータ通信料負担が生じているがある。また、消費増税の影響によって実質収入が目減りしたことで、利益率が下がっていることがあげられる。これらの理由もあって、利益をあげるためには大規模化が必要になっている。
さらに、人気機種の高機能化による高価格化が挙げられる。大規模化とあわせるとリースも含めた初期投資額が大きくなる傾向にある。
そのため新規開業としては、後掲の開業タイプに示すように(1)法人によるフランチャイズ加盟による開業、(2)業界で「シングルロケ」と呼ばれる遊技場営業許可が不要な副業的な開業が代表的なタイプになる。
ビジネスの特徴
ゲーム機の導入コストが高く、人気新規機種には数千万円するものもある。またメンテナンス費用に加え、近年のネットワーク通信型機器の導入に関わる通信料負担の増加など、ランニングコストも高くなる傾向にある。
このような状況に対し、クレーンゲームに代表されるプライズゲーム機やメダルゲーム機に特化するビジネスモデルが拡がっている。
こうしたビジネスモデルは、店舗側での原価率のコントロールが可能であり、幅広い世代をターゲットとすることができるため、商業施設内立地や副業的な開業(シングルロケ)において一定の成功を収めている例もある。
ただし、商業施設内の立地については大手系列会社との競合もあり、副業的な立地については本業の店舗との相性によって開業可能性が左右される。
開業タイプ
(1)フランチャイズ加盟による開業
大手事業者のフランチャイズ加盟に応募する形で開業することが1つの開業タイプとなる。現在のゲームセンター事業は初期投資や更新負担、開業後のランニングコストの負担も大きいため、フランチャイズ加盟による開業が望ましい。
大手のフランチャイズに加盟することにより、大手の様々なノウハウを導入できるメリットがあるが、大規模商業施設内への立地が可能になることが最大のメリットである。
初期投資の早期回収やその後のランニングコストの負担を考えると、集客が見込める大規模商業施設への立地はかなりの魅力である。
(2)シングルロケ
ボウリング場や飲食店といった本業の店舗に、副業的にゲーム機器を設置する形で運営するタイプである。こうしたタイプも、狭義でのゲームセンターの開業にあたる。
開業ステップ
(1)開業のステップ
フランチャイズ加盟による開業を前提としてステップを示す。
(参考:株式会社タイトー ホームページ)
(2)必要な手続き
ゲームセンターの開業に当たっては、風営法により多くの規制が存在する。都市計画法の用途地域で営業不可とされる地域があり、学校等から一定の距離内では営業不可となる。また、都道府県によっても手続きが異なるため、行政書士などの専門家に相談することが望ましい。
a.必要な許可
- 風営法に基づく都道府県公安委員会の営業許可(シングルロケの場合を除く)
- 飲食店営業に関する保健所の許可(喫茶スペースを設ける場合や飲食店併設の場合)
b.営業許可を受けられない人(個人または法人)
- 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
- 1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
- 風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
- 営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
- 法人の役員、法定代理人が上記1から6までに揚げる事項に該当するとき
商品の品揃えなど
ゲーム機器には様々な分類が可能であるが、代表的な分類で種類を挙げると、ビデオゲーム、メダルゲーム、音楽ゲーム(音ゲー)、体感ゲーム、トレーディングカードゲーム、プリクラ、プライズゲーム(クレーンゲーム)といったものがある。
長期間の継続利用が見込まれる機種は購入し、短期間での入れ替えが予想される機種はリースとすることが一般的である。ゲーム機器の目利きができる場合には中古機器を購入することも選択肢となる。
必要なスキル
フランチャイズ加盟による開業の場合には、フランチャイズ本部による研修の中で一定のスキルを習得することができる。大きく分けて店舗運営に係るスキルと機器のメンテナンスに係るスキルがある。
店舗運営のスキルで特に重視すべきなのは、原価管理のスキルである。プライズゲームでは店舗側が原価率を設定できるため、客の満足度と店舗の利益を考慮した最適な原価率の設定が重要になる。
機器の日常点検に係るスキルに関しては、極力自力で点検できるようにすることがメンテナンスコストの低減につながる。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
法人のフランチャイズ加盟による開業タイプを前提としたものを記載する。
投資負担が重いため、一定以上の集客により高稼働を実現する必要がある。繁華街や商業施設内、商業施設近隣といった、集客力のある立地がビジネスの成立要件になる。
また、資金調達に懸念がある場合は、初期投資負担の軽減を図るべく、中古機器やリースの利用も積極的に考えるべき手段となろう。
(2)損益モデル
a.売上計画
1日あたりの客数、平均客単価、営業日数を以下の通りとして、売上高を算出した。
b.損益イメージ
標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。
※財務標準比率のうち売上総利益率については、一般的にゲームセンターの変動費率が20~30%程度といわれていることを前提に75.0%とした。
営業利益率については、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」のゲームセンターに分類される事業所の財務データの平均値を記載。
c.収益化の視点
人気機種は集客力もあるが、リース料を含めたコストも大きくなる。立地条件にもよるが、地味でも収益性の高い機種を見極め、利用促進を図ることが収益化につながる。
また、機種の中にはいわゆるマニアックな人気を持ち、固定客がつくものがある。こうした機種についてはリースではなく購入、さらに可能であれば中古機器購入とし、長期継続的な利用と購入によるコスト削減を図ることで、収益の底上げを図ることが可能となる。
定期的な日常点検については、フランチャイザー任せにせず、自社に技術蓄積を図ることが大切である。これによりメンテナンスコストの低減だけでなく、客が利用できない時間を少なくすることができ、収益化に貢献する。
※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)