業種別開業ガイド

立ち飲み居酒屋

  • 外食業界、とりわけ居酒屋業態が不況の中で、気軽に立ちながらお酒を飲んだりつまみを食べたりする立ち飲み居酒屋が増えている。
  • 立ち飲み居酒屋は、以前より大阪など関西地方を中心に多く存在し、主に中高年層に低価格の飲み屋として利用されていたが、現在急増しているのは、若者や女性をターゲットにした店である。大手外食企業のほか、ラーメン店を展開する「トモス」やたこ焼き店を展開する「ホットランド」など、他業種からの参入も目立っている。
  • 一口に立ち飲みスタイルと言っても異なる業態が存在している。中高年をターゲットとして主に串焼きなどを提供する旧来型、同じように串焼きや串揚げなどを提供するもののレトロ感を打ち出して若者や団塊ジュニア世代をターゲットとするタイプ、また、アイリッシュパブやスペインバルなど専門性を高めてスタイリッシュな内外装で女性をターゲットとするタイプなどがある。
  • ブームを受けて似たような店舗が続々と出店しており、一方で大手居酒屋チェーンがさらに値下げ競争を繰り広げている中、立ち飲みというスタイルだけで他に特徴のない店は今後淘汰されるという見通しもある。

1.起業にあたって必要な手続き

1)食品衛生法に基づく営業許可

飲食店を開業するには、「飲食店営業」の申請を行い、許可を得る必要がある。

飲食店開業に必要な申請書類と申請先を説明した表

2)食品衛生責任者の配置

食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者には、調理師、栄養士、製菓衛生師いずれかの資格を持つ者が必要である。
資格者がいない場合、地域の保健所が実施する食品衛生責任者のための講習を受講し、試験に合格しなければならない。
なお、食品衛生責任者の資格は、各都道府県内のみ有効となっている。

2. 起業にあたっての留意点・準備

上述のように、立ち飲み店は「立って飲む」というスタイルでの分類であり、提供する料理や飲み物、雰囲気、サービスによって様々な業態が存在している。小さな店舗であり、経営者の想いを凝縮しやすい業態とも言えるので、開業にあたってはまずはコンセプトとターゲットを明確にした上で具体的な店作りを進めることが重要である。

専門性の高い業態ではダイニングバーと変わらない価格でサービス提供している店もあるが、基本的には低価格で気軽に飲めることが立ち飲み店に求められていると考えると、できる限り低価格でサービスを提供できるための工夫が必要になってくる。具体的には、有力な食材や飲料のルートを確保し安く仕入れる、居抜き物件を活用して設備投資額を低く抑える、などの工夫である。

立地は重要である。原則として繁華街の1階で、入りやすいオープンな雰囲気が望ましい。店頭のスペースにテーブルを出したり、和の雰囲気を打ち出している場合は焼き台を外に見えるようにしたりすると賑わいが演出できる。
(ただし、物件によっては不可能であったり、クレームとなる場合があるため周辺には配慮すること。)

内部は居心地がよい空間を演出しつつ、回転を高める工夫が必要である。たとえば、足元に片足を乗せられるスチールパイプを設置したり、荷物置き場を設置すると居心地が良くなる。回転を高めるためにあえて高めのカウンターを設置している店もある。

サービスについては、対面商売で顧客との距離が近くコミュニケーションが取りやすいため、低価格であってもハイタッチな接客ができることが特徴である。客単価が上昇しすぎると満足度が下がるため、低客単価でも客がファンとなり頻繁に通ってもらうことが売上を維持・向上させるためには必要である。そのためには印象に残る接客サービスで顧客満足度を上げることが非常に重要となる

立ち飲み居酒屋の特徴的なサービスとして、注文ごとにその場で料金を支払うキャッシュオンデリバリーがある。会計の手間が省け、顧客にも手軽に利用しやすいという雰囲気を演出することができるが、採用にあたっては計算しやすい価格設定にしたり、支払いやお釣りの受け渡しのオペレーションをスムーズに行えるよう、あらかじめ工夫が必要である。サービスの根幹となる仕組みでもあるため、店のコンセプトや顧客層と照らし合わせて採用を決めること。

立ち飲みとはいえ、最近人気の店舗はメニューが充実している。アイテム数は、少なくともドリンクで20点、フードで20~30点は揃えると、顧客を飽きさせず来店頻度の向上につながる。

3. 必要資金例

繁華街に10坪の「立ち飲み居酒屋」を開業する場合の必要資金例

4. ビジネスプラン策定例(モデル収支例)

1)売上計画例

2)損益計算のシミュレーション

  • 人件費は、社員1名、アルバイト1名体制
  • 初期投資一括計上分は、開業費の金額
  • 減価償却費は、設備工事費・什器備品費等の額を5年で償却したもの
  • 必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。

    また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。

最終内容確認日2014年2月