起業マニュアル

NPO法人

NPOとNPO法人

NPOはNon-Profit Organizationの略称で、非営利組織と訳されます。つまり、利潤追求や利益配分を行わず、自主的・自発的に活動する、営利を目的としない組織・団体の総称です。

ボランティア活動や個人の自発的な社会貢献活動などを行っているボランティア団体、市民活動団体やNGOなどの組織を指します。NGOとは、Non-Governmental Organizationの略称で、非政府組織と訳されます。NPOの中でも、特に国際交流を中心に活動している団体をNGOと呼んでいます。

ただし、通常、民間非営利組織といった場合に含まれることのある消費生活協同組合のような共済組織や伝統的に存在する町内会などの地縁組織は含みません。NPOの活動分野は、社会福祉から環境保全、教育・文化までと幅広いものとなっています。

NPOI法人の対象となる公益性のある活動(特定非営利活動)

以下の17分野において特定非営利活動が可能です。

  • 保健、医療または福祉の増進を図る活動
  • 社会教育の推進を図る活動
  • まちづくりの推進を図る活動
  • 文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動
  • 環境の保全を図る活動
  • 災害救援活動
  • 地域安全活動
  • 人権の擁護または平和の推進を図る活動
  • 国際協力の推進
  • 男女共同参画社会の形成促進活動
  • 子どもの健全育成を図る活動
  • 情報化社会の発展を図る活動
  • 科学技術の振興を図る活動
  • 経済活動の活性化を図る活動
  • 職業能力の開発または雇用機会の拡大を支援する活動
  • 消費者の保護を図る活動
  • 以上の活動を行う団体の運営または活動に関する連絡助言または援助の活動

NPO法人の要件

NPO法により法人格を取得することが可能な団体は、「特定非営利活動」を行うことを主たる目的とした、次の要件を満たす団体です。

  • 利用対象者が不特定多数に開かれていること
  • 営利を目的としないこと(対価を得ることは可、配当は不可)
  • 社員(総会で議決権を有する者)の資格の得喪に関して不当な条件を付けないこと
  • 役員のうち報酬を受ける者は、役員総数の3分の1以下であること
  • 宗教活動や政治活動を主たる目的とするものでないこと
  • 特定の公職者(候補者を含む)または政党を推薦、支持、反対することを目的とするものでないこと
  • 暴力団もしくはその構成員の統制の下にある団体でないこと
  • 10人以上の社員を有するものであること

法人格を得ることによるメリット・デメリット

以下に、「法人格」を得ることで受けるメリット・デメリットについて紹介します。

法人格の取得で得られるメリット

(1)団体として、団体名であらゆる取引を行うことが可能

法人格がない団体の場合、なにかの取引を行う際には、代表者個人の名前か、あるいは構成員全員の名前で行わなければなりません。
しかし、法人格が認められれば、団体名で土地や車などの資産をもったり、事務所を借りたり、銀行口座を開設したり、備品などの売買行為を行ったりすることができます。

(2)組織としての永続性が増す

団体の名前で資産をもったり、取引が行えるようになることは、組織としての活動が構成員の変更などによる影響を受けなくなることを意味します。すなわち、従来必要であった資産の引き継ぎなどがなくなり、代表者の権限委譲が行いやすくなるのです。したがって、組織としての永続性は増すことになります。

(3)組織としての社会的信用力が増す

法人格を取得することで、単なる個人の集合である組織と異なり、ある日突然、活動を停止してしまうという危険性が少ないとみなされます。
このことは、他団体や金融機関との取引を開始するにあたって信用を得やすくなりますし、この団体の活動を手伝おうと考えている人材に対しても安心感を与えることになります。

(4)その他

地方公共団体が発注する委託事業の契約先選定や、活動資金を得るための寄付や助成の申請にあたって、「法人格」の取得が条件とされていることがあります。

法人格の取得で発生するデメリット

(1)外部報告義務が発生する

NPO法人は、毎年度終了後3カ月以内に、事業報告書、財産目録、収支計算書および役員と10人以上の社員についての住所氏名を所轄庁に提出するとともに事務所に備え置き、利害関係人に閲覧させなければなりません。

(2)現在のところ税制上のメリットは特に得られない

収益事業に対する課税は、通常の営利法人と同様になります。

課税所得が800万円超   25.5%

課税所得が800万円以下  15%
(平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する事業年度においては18%)

地方税の均等割課税は、収益事業を行っていなくとも納めなければなりません(自治体によっては、地方税を減免しているところもあります)。

(3)新たな費用が発生する

団体名の印鑑や、団体名入りの各種文書類などの備品類や、法人設立活動のための諸費用など新たな費用が発生します。

認定NPO法人となるメリット・デメリット

2001年10月1日に認定NPO法人制度が施行されました。一定要件を満たし、都道府県知事又は、指定都市の長の認定を受けたNPO法人には、「認定NPO法人」という地位が与えられます。

認定NPO法人となるためには、すでにNPO法人であり、その運営組織および事業活動が適正であり、公益の増進に資するための次の9つの要件を満たすことが必要とされています。

  1. パブリックサポートテストについて
  2. 活動の対象について
  3. 運営組織および経理について
  4. 事業活動について
  5. 情報公開について
  6. 不正行為等について
  7. 設立後の経過期間について
  8. 所轄庁の証明について
  9. 所轄庁への書類について

それぞれについて詳細な基準があり、ここですべてを紹介することはできません。詳細は下記のホームページをご覧ください。

■国税庁ホームページ:認定NPO法人制度の手引

認定NPO法人の制度は徐々に緩和されつつあり、「有効期間の延長」、「パブリックサポートテスト」などに関する要件が緩和されています。詳細は、国税庁のホームページをご覧ください。

認定NPO法人には、次のようなメリット・デメリットがあります。

認定NPO法人となるメリット

(1)個人から寄付を受けた場合、その個人が寄付金控除を受けることができる

個人が認定NPO法人に寄付をした場合、特定寄付金とみなして寄付金控除を適用することができます。寄付金の支出額から2,000円を控除した金額を、寄付をした方のその年分の総所得金額などの合計額から控除することができます。

ただし、特定寄付金の合計額がその方の総所得金額等の合計額の40%相当額を超える場合には、その40%相当額から2,000円を控除した金額が、総所得金額などから控除できる金額となります。

(2)法人から寄付を受けた場合、その法人が寄付金に対する特例措置を受けることができる

法人が認定NPO法人に寄付をした場合、特定公益増進法人に対する寄付金とみなされます。特定公益増進法人に対する寄付金は、一般の寄付金に対する損金算入限度額とは別枠で、同額の損金算入限度額が設けられています。そのため、寄付が受けやすくなると考えられます。

(3)相続人などが相続財産などを贈与した場合、その寄付財産が非課税となる

相続や遺贈で財産を取得した人が、その財産を認定NPO法人に寄付した場合、その寄付をした財産の価額は相続人または遺贈にかかる相続税の課税価額の計算の基礎に算入されません。

(4)みなし寄付金制度が適用される

NPO法人内の収益事業で得たお金を非収益事業に寄付した場合、収益事業の所得の20%までの寄付金を収益事業の損金に算入することができます。

認定NPO法人となるデメリット

(1)運営面での負担が増える

毎年、所轄庁に対して提出する書類(寄付者名簿、取引書類など)を作成しなければなりません。さらに、公認会計士または監査法人の監査を受けていること、または青色申告法人と同等の記帳および帳簿書類の保存をしていることが必要になります。

(2)一定の情報が外部に公開される

職員給与に関する情報を外部に公開しなければなりません。

NPO法人申請

申請書類

NPO法人を設立するためには、次に掲げる資料を添付した申請書を所轄庁に提出し、設立の認証を受けます。所轄庁は、主たる事務所が所在する地の都道府県です。ただし、2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合には、主たる事務所の都道府県が所轄庁となります。認証審査は2ヵ月をかけて行われ、認証・不認証が決定されます。

NPO法人の認証審査にあたっては、活動内容などの事前審査はなされず、書類審査だけで認証が行われるので、必要書類の整備に関しては、法人設立の企画段階から、所轄庁の関係窓口に相談することが重要です。

<必要書類>

  • 設立認証申請書
  • 定款
  • 役員名簿および役員のうち報酬を受ける者の名簿
  • 各役員の就任承諾書および宣誓書の写し
  • 各役員の住所または居所を証する書面(住民票など)
  • 社員のうち10人以上の者の名簿(社員のうち10人以上の者の氏名《法人の場合名称および代表者の氏名》および住所または居所を記載した書面)
  • 確認書(宗教活動・政治活動を主目的としないこと、選挙活動を目的としないこと、および暴力団でないことに該当することを確認した書面)
  • 設立趣旨書
  • 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
  • 設立の初年および翌年(または当初事業年度および翌事業年度)の事業計画書
  • 設立の初年および翌年(または当初事業年度および翌事業年度)の収支予算書

定款記載事項

定款には、以下の事項に関する記載を行わなければなりません。

  • 目的
  • 名称
  • 特定非営利活動の種類および当該特定非営利活動に係る事業の種類
  • 主たる事務所およびそのほかの事務所の所在地
  • 社員の資格の得喪に関する事項
  • 役員に関する事項
  • 会議に関する事項
  • 資産に関する事項
  • 会計に関する事項
  • 事業年度
  • そのほかの事業を行う場合には、その種類その他、当該そのほかの事業に関する事項
  • 解散に関する事項
  • 定款の変更に関する事項
  • 公告の方法
  • 設立当初の役員

そのほか、NPO法人の設立には、以下のような要件を満たすことが必要です。財政的規模についての要件はありません。

a.10人以上の社員を有すること
b.役員として、理事3人以上および監事1人以上を置くこと

認定NPO法人申請

認定NPO法人となるためには、所轄庁に申請書と下記の添付書類を提出することが必要です。申請書および添付資料は3通を提出しなければなりません。

認定NPO法人申請の添付書類

(1)直前2事業年度などの事業報告書など

(2)役員名簿などおよび定款など
I.役員名簿(前年において役員であったことのある役員の氏名および住所を記載した名簿)
II.役員名簿に記載された者のうち前年において報酬を受けたことがある者全員の氏名を記載した書面
III.社員のうち10人以上の者の氏名および住所または居所(法人の場合には名称および代表者の住所)を記載した書面
IV.定款
X.NPO法人の申請に応じ所轄庁が認証する場合に交付される認証書の写し
XI.登記簿謄本の写し

(3)国税庁長官の認定を受けるための要件を満たしていることを説明する書類

(4)寄付金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類

(5)申請をするNPO法人が法令、法令に基づく行政庁の処分または定款に違反する疑いがあると認められる相当の理由がないことについて所轄庁が交付した証明書

認定の有効期間は、国税庁長官の定める日から5年間とされています。認定を延長または更新する制度はありませんので、認定期間を途切れさせないためには、認定期間内に次回の認定を受けることになります。

<<本資料のご利用にあたって>>

法律にはその内容により、さまざまな特則や例外があります。したがって、個別の事例については、弁護士あるいは各地の弁護士会の法律相談所などにご相談ください。

最終内容確認 2014年3月