建築基準法への適合が難しく、耐震・断熱性能の確保に高度な技術が必要になる。
工期や費用の予測が難しく、高い精度の事業計画を立てることが難しい。
開業のステップ
営業、不動産契約、設計、施工、設備、販売、運用といった多くのプロセスのうち、どの部分をコア事業とするかで、業務内容が大きく変わってくる。ここでは施工を外注する企業を想定し、開業のステップを紹介する。
STEP 1:事業計画の策定
どの地域でどのような価格帯をメインにするのか、ターゲットを明確にして事業計画を立案する。受注先、外注先、仕入れ先などを明確にし、月にどの程度の規模の物件を何件くらい扱えば黒字化するかを算出する。
STEP 2:立地選定
事業計画に基づいて、業態に合った事務所用の物件を探して契約する。ショールームの機能を持たせたい場合は、改装の可否や現状復帰などの条件を確認する。
STEP 3:資金計画の立案
空き家再生の出費は、物件取得費用と施工・改修費、営業費が中心になる。古民家再生の場合も基本的な構造は同じだが、構造補強や伝統工法の再現が求められる分、施工・改修費が膨らむ傾向にある。そのため、余裕を持った資金計画を立てることが重要である。事業計画に基づいて開業時に必要な資金を明確にし、場合によっては公庫や銀行から借入を行う。
STEP 4:設計および施工体制の構築
物件を取得してから、スムーズに設計と施工を行える体制を整える。物件ごとに状況・状態が異なるため、得意分野別にいくつかの提携先があると安心。
STEP 5:開業準備とスタッフの採用
事務所の内外装工事や設備導入をして開業を目指す。採用が必要な場合は開業前から求人を行い、スタート時から活躍できるように研修を行う。
STEP 6:許認可、法的手続きの確認
建築基準法、景観条例、文化財保護法など、再生業には法的制約が多い。また、不動産売買や建築確認などには資格が必要になるため、その準備を行う。
STEP 7:営業および広報戦略の準備
空き家・古民家再生業の仕入れは物件になる。そのため、仕入れのための営業ルートの開拓や、インターネットを活用した直接仕入れができる体制を整えておく。
STEP 8:開業
開業してすぐに行うのは、物件の仕入れとそれに伴う設計および施工。そして、続く案件の獲得を事業計画どおりに目指す。
空き家・古民家再生業に必要な資格
開業するために必須の資格はないが、不動産取引や建築(設備を含む)の実務を行うことになるため、現実的にはこれら業務の資格や許可が必須と言える。業務に役立つ資格は多数あるが、ここでは主要なものに絞って紹介する。
不動産取引に必要な資格
宅地建物取引士(宅建士)および宅建業免許:空き家の売買や賃貸を自社で行うためには、宅建業免許が必要になる。申請の条件は、事務所の設置、5人に1人以上の宅地建物取引士の雇用、営業保証金の準備である。宅地建物取引士は、重要事項説明や契約業務を遂行するために必須の国家資格で、取得の難度が高い。
建築業やリフォーム業に必要な資格
建築士(一級・二級・木造):建築士は取得している等級により業務領域が異なる。一級建築士は公共施設やビルなども含めたすべての建築物の設計と工事監理が可能で、二級建築士は一般的な規模の住宅や店舗などの業務が可能。木造建築士は小規模な木造建築物のみに限定される。空き家には鉄筋コンクリート(RC)構造なども存在するため、二級建築士以上の資格の保有が望ましい。
その他の代表的な資格:建築施工管理技士、建築設備士、電気や水道などに関する資格など
空き家再生に有用な資格
空き家再生診断士:空き家や空き地の所有者に対し、活用、処分、維持管理、継承などについて専門的なアドバイスを行う専門家。単なる片付けではなく、物件の分析や再生、補助金申請の支援、売買の仲介などを通じて空き家問題を解決できる。民間資格だが、やや取得難度が高い。
その他の代表的な資格:空き家再生士、空き家管理士、空家空地管理士など
古民家再生に有用な資格
古民家鑑定士:築50年以上の古民家を対象に、構造、意匠、文化的価値を評価する専門資格。再生可能性の判断や補助金申請時の資料作成に役立つ。観光資源を目指す物件を取り扱う場合は、取得が望ましい。
伝統再築士:伝統構法を生かしつつ、現代の建築基準に適合させる設計を行う専門資格。建築士資格を保有していることが取得条件。文化財登録物件や景観条例の対象となる古民家を扱う際に必要となる。
その他の代表的な資格:古家再生士、伝統建築診断士、古材鑑定士など
これらに加えて、廃材や残置物の処理に関わる資格もある。ただ、産廃系の資格や許可を取得することは難しい。一方で、残置物の再販は、取得が容易な古物商許可だけで対応が可能だ。
開業資金と運転資金の例
空き家・古民家再生業の開業と運営には、事務所開設の費用、物件取得費、設計施工費、設備費、人件費、事務所維持費など多額の資金が必要となる。ここでは、以下の条件の事業所を想定して、開業資金と運転資金をシミュレーションした。
<条件>
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地方都市の郊外(移動は主に車)
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空き家の再生がメイン
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仕入れて再販する事業モデル
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企画と設計は自社で行い、施工は外注
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開業者自身を含む5名のスタッフ(うち1名は事務や業務サポートを行うアルバイト)
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宅地建物取引士と建築士の資格は開業者が所持
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得意な価格帯は300〜1,200万円程度で仕入れる物件
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リフォームとリノベーションの双方を行う
開業のための資金調達には、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金などが利用できる。銀行よりも有利な条件で借り入れができるため、相談する価値は高い。また、各地方自治体が独自の融資制度を用意しているケースもあるため、都道府県庁や市区町村役場に確認してみるとよい。
売上計画と損益イメージ
空き家は短期回収型の事業が多く、古民家は長期運用型の事業が主流となる。ここでは前項と同じ条件の事業者を想定し、売上計画と損益イメージのシミュレーションを行う(一例)。
地方では、再生後の空き家が一般的に1件あたり800万〜2,000万円程度で販売されている。今回の事例では、200万円と800万円で物件を仕入れ、それぞれ800万円と2,000万円程度で販売することを想定した。
年間の収入から支出(上記運転資金例)を引いた損益は下記のようになる。
このシミュレーションは、月に2件の物件を仕入れから販売まで全て完了したケースを想定している。開業当初からスムーズに仕事を回せることは考えにくいため、あくまでも理想的な事例であることを付け加えておく。
空き家・古民家再生業の経営で最も大切になるのは「地域と物件に最適な設計施工を行う」こと。社会課題の解決と事業性を両立し、地域に親しまれる事業者になれれば、その後の経営も安定していくことだろう。
※開業資金、売上計画、損益イメージなどの数値は、開業状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)
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