茨城県茨城町生まれの植崎さんは、高校生のころ、テレビ番組の「料理の鉄人」に憧れた。いつかは自分で店を持ちたいと、卒業後は地元に近い水戸市で、次いで都内の飲食店で働き、さらに水戸に戻って2013年から今年3月まで森永製菓の関連会社でプロ向けの商材を商う森永商事(横浜市)に勤めた。18歳で抱いた志を25年間温め、43歳で実現した。
茨城で独立したのは実家があるからだけではない。この地がおいしい農産物の宝庫だからだ。店の一番人気のモンブランは実家の父が栽培している生栗を、両親が拾って渋皮を剥いた状態で届けてくれる。「遠い産地のものは流通の手間を考えると必ず早摘みになる。できるだけ産地に近い材料を一番美味しい状態で使うのがポリシーだから、茨城県内の車で30分~1時間以内で手に入る材料でないと。宮崎のマンゴーや熊本のイチゴは絶対に無理」と強調する。
出店は綿密な準備に基づいている。まず「今後の人口増加が見込まれ、片側2車線の生活道路に面し、中央分離帯が切れているところの角地で、かつ前後左右が空いている土地」を約5年かけて探した。つくば市の人口増加率は全国でもトップクラスで、これから着実な発展が見込まれる。これまでの経験で、早朝から夜遅くまで大型冷蔵庫やエアコンが稼動する洋菓子店は「うるさい」と近所からのクレームが多いことを知っていたから、空いた場所に後から新参者として参入するのではなく、周りになにもない土地に最初に店を出して古顔になっておくことも重要だった。
他店で製菓の技術を磨いた後は、素材や業界のしくみを知るため森永に入社した。研究開発部門でチョコレートのテクニカルアドバイザーを担当し、専門知識を手に入れた。「業界でも手と頭を両方使っている人はそんなにいない。僕の一番のアドバンテージです」と胸を張る。店で使っているチョコレートは森永の業務用。これも培ったコネクションの成果だ。