同社は障がい者雇用を実践している。そのきっかけは2001年のこと。当時は直営店だった長崎市内の店舗を見学した際、こずえ氏は同店で働き始めた知的障がいを持つ20代の男性スタッフの様子を目にした。男性は掃除やゴミ出し、洗い物といった簡単な仕事だけを担当しており、その時は「障がいがあるから、できるのはこの程度だろう」と思ったという。
男性はその後、別の直営店に移って働き続けていたが、2007年に同店がFC店へ移行。6年ぶりに男性と再会したこずえ氏はその姿に衝撃を受けた。男性は努力を重ね、肉を焼いたりポテトを揚げたりと、他のスタッフと同じ業務をこなしていたのだ。その働きぶりを目の当たりにし、それまで障がい者に対して抱いていた固定観念が覆されたという。「覚えるのに時間はかかるが、一度覚えれば確実に仕事をこなしてくれる」とこずえ氏。と同時に、男性を根気よく指導してきた同店スタッフの努力にも敬服したという。
それを機に同社は障がい者の雇用を進め、現在13人がスタッフとして働いている。そして、一緒に仕事をすることで思わぬメリットがあったという。「指導するスタッフが相手に合わせ、じっくりと教えるようになり、店内全体がやさしさと余裕を持ったムードになっていった」(こずえ氏)。障がい者雇用がスタッフ全員にとって働きやすい職場づくりに一役買っていたのだ。
こんなこともあった。10年ほど前の冬、長崎市では珍しく雪が降った。坂が多い市内ではバスの運休など交通網の混乱が予想されたことから、坂の上にある長崎ミスターマックスS.C店では、当時店長だった伸一郎氏が前日から泊まり込んでいた。ところが出勤予定のスタッフからは「バスが走っていないので休みます」との連絡が相次いだ。「これでは店は開けられない」と諦めかけたところ、障がいを持つ20代の男性スタッフが出勤してきた。聞くと、雪が降りしきるなか坂道を歩いて上ってきたという。これで営業することができた。あいにく雪のため来客も少なく開店休業の状態だったが、外の寒さとは裏腹に、伸一郎氏は男性と2人で心温まる一日を過ごしたという。
「彼らは真面目で、遅刻はしないし仕事を休むこともほとんどない。会社にとっては長く働いてくれる貴重な人材だ」とこずえ氏は強調する。さらにこんな気づきも。「彼らは働くことで人の役に立ち必要とされていることを実感し、そこに幸せを感じている。実は、それは障がいの有無に関係なく、すべてに人に当てはまることだ」