明治時代から続く蔵元を1952年(昭和27年)に先々代の祖父が引き継ぎ、以来、球磨焼酎の伝統を守り続けている。球磨焼酎は人吉球磨地区で製造されている焼酎で、米を原料としている。「本来の米焼酎とは何か」を追求し、伝統製法を焼酎の原点ととらえ、古い製法の再現に取り組んでいる。
父から経営を引き継ぎ、代表社員になったのは2010年。大学を卒業して県立高校で社会科の教師をしていた。教師を天職だと思って跡を継ぐことを考えたことはなかったのだが、後継者がなく父が事業を手放そうとしていた。「それはもったいない」と感じた。中小企業が日本の経済を支えていて、地域の産業としていかに重要なのかを説いていたのに「自分は何をやっているのか」と感じ、2003年に教師を辞め、大和一酒造元に入社した。
機械に頼らず、蔵人の五感をフルに活用しながら石造りの麹室で麹を育て、すべての焼酎を手造りで作り上げている。また、伝統製法の「兜釜蒸留機」を独自に開発した。伝統的な製法は時間やコストがかかり、また簡単な方法とは言えないが、焼酎本来の深い味わいが残ると高い評価を受けている。
一方で、自由な発想を生かした焼酎づくりも行っている。先代の父は、焼酎蔵から湧く温泉を使った焼酎づくりに取り組んだ。アルカリ性の温泉水は発酵に不向きと指摘されていたが、試行錯誤を重ね、10年をかけて全工程で温泉水を使用した「温泉焼酎」を商品化し、看板商品になっている。また、酪農が盛んな熊本の特色を生かし、牛乳と米を発酵させて造った「牛乳焼酎」はフルーティーで甘い口当たりが人気となっている。