フィリピンでの成功のきっかけは現地サプライヤーとの連携
カネパッケージは自社工場を持たないファブレス企業である。このため、フィリピンでは、製品の現地サプライヤーとの連携が最重要項目だった。しかし、当時の現地のサプライヤーは、納期もばらばらである上に、数カ月もさかのぼって価格を引き上げてくることもあった。
納品された製品に対して、印刷のずれや傷などの苦情を言っても、「納品したのだから」と代金の支払いを求めてくる。これが当時のアジアのパッケージ業界の一般的な状態だった。しかし、フィリピンに赴任した現社長の金坂良一氏は、半年間でこの業界体質を変革することに成功した。
まず、金坂社長は朝早く起きてサプライヤーの工場に顔を出した。そして生産管理の責任者とコーヒーを飲みながら話をする。その後、カネパッケージが発注した製品に関する生産指示書を責任者から受け取り、金坂社長自ら工場に持って行く。すると、工場ではカネパッケージから発注された製品の生産に朝から取り掛かるようになる。金坂社長は、工場での機械の段取りと実際に製造が開始される様子を見てから、自分の会社に出社するということを続けたのだ。
仕事が終わると再びサプライヤーを訪問し、生産指示書通りに製品ができているかどうかを確認した。問題があったらそこで作り直してもらうのだが、それを見届けて帰宅すると深夜になっていた。メインのサプライヤーは3社ほどあったが、1人では回り切れない。そこで、帯同させている現地の従業員にも仕事の様子を見せた。食事も一緒にしながら仕事を教える。その手法を理解した現地の従業員が自ら率先して仕事を代わってくれるようになった。
その後、サプライヤーに自社の社員を常駐させ、工程管理や納期管理、品質管理をサプライヤーの会社側で行うようにした。工場は24時間稼働していたため2-3交代制だったが、これらの取組みにより、顧客にスムーズに製品が納品されるようになった。取引先の日系企業からは、「すぐに納品してほしい」という要望も多いが、この製品供給体制を作り上げたことで、遅くとも翌日くらいまでには製品を納品できるようになったのである。
ファブレス企業においては、現地の設備をどう活用するかが重要な課題だ。現地企業と競合するというのは長続きしない。現地企業が努力し技術力や品質力が向上すれば、10年後は自社の優位性が保てないかもしれないからだ。そこで、現地のサプライヤーに品質や生産の指導しながら仕事を依頼していくことにしたのだ。その結果、サプライヤーにとっては、自分たちの営業ではなかなか受注できない日系企業の仕事が増えていくため、カネパッケージと一緒に仕事をすると売上が伸びるということを実感してもらえる。これでこそ現地サプライヤーとのWin-Winの関係になる。
金坂社長は、「どれだけ苦労しているかはお客様に見せないようにしよう」と、従業員に伝え続けてきたという。努力していることを認めてほしいという社員は多い。カネパッケージでは、自己評価と上司評価を行い年2回の物価上昇率を加味して昇給させるようにしている。これは現地の感覚を考慮した成果であるといえる。また、部門長に確認した上で、能力の高い社員であれば2-3階級上がる人もいる。努力した人を認めることで社員は成長する。
モチベーションを高くできる仕組みがこの昇給・昇格制度なのだ。制度だけでなく、毎日の対話も重視している。今苦労してもこれから変わることを伝える。そして、できたら褒め、できなかったときは叱るのだが、褒める割合を8-9割にした。
驚きを与えるためには感情を表に出すことが重要だったのだが、努力すれば必ず達成できるという自信が彼らについてきた。売上、利益も伸び、次なる海外展開のための人材育成もできた。フィリピンで育った人材は、その後展開した国に派遣した。フィリピン人は英語が話せる上に海外に行きたいという人は多い。日本人の社員を派遣するよりコストも抑えられる。また、生産管理や品質管理などのノウハウはフィリピンの工場で作り上げ、そのスタイルを他の国でも再現している。
カネパッケージがフィリピンで成功した要因は他にもある。取引先のパッキングラインの工場に自社のトレーラーのコンテナを並べ製品を即トラックに積載できるようにし、工業団地間の移動の際の煩雑な手続きをバーコードのチェックだけで済ませる仕組みを取り入れた。
また、納品先やサプライヤーとはすべてドルで取引を行った。原材料輸入の際にはドルでの支払いが一般的であるため、この取引条件はサプライヤーにとっても有利な話であった。サプライヤーとしてはドルを必要とするため、ドルで支払いが行われるカネパッケージにはすぐに納品してくるようになったという。
カネパッケージはアジアに多くの拠点を持っている。
タイ現地法人(上)、フィリピン現地法人(左下)、ベトナム現地法人(右下)