ペットの犬を連れての宿泊ができないか考えている。言うなれば、「ワ—ケーション」ならぬ「ワンケーション」。実は武蔵御嶽神社は「おいぬ様信仰」でも知られ、犬と縁がある神社。日本書紀によると、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際、御岳山で邪神を退治したが、そこで道に迷ってしまった。すると白い狼が現れて日本武尊を道案内した。別れ際、日本武尊は白狼に、「大口真神(おおくちまがみ)として、この御岳山に留まり、すべての魔物を退治せよ」と命じたという。その言葉に従って山に留まった狼はその後、親しみを込めて「おいぬ様」と呼ばれるようになった。
この「おいぬ様信仰」に加え、最近のペットブームで御岳山には犬を連れて訪れる人が多くなってきた。神社では犬連れの人たちの要望に応じる形で、愛犬の祈祷を行うようになった。また、神社までは車で来ることができず、御岳登山鉄道のケーブルカーを利用するのだが、ケーブルカーには「ペット共有エリア」が設けられた。そのエリアでは、犬をケージに入れることなく、飼い主と犬が一緒に乗車できる。
父はこの愛犬祈願を取り入れようと働いたうちの一人だった。御師である父は神社に仕える神主であり、みたけ山観光協会の会長もつとめた。全国的にもペットの同伴を禁止しているお社も多いなか、御嶽神社も例外ではなく、当初は父の提案に対し、神聖な神社で犬の祈祷を行うなんてもってのほか、と反感をかったが、父は反対を押し切った。それが今や地域活性化策の一つになっている。
犬連れの宿泊については、やはり犬が苦手という人もいるので、現在ある客室を利用することは難しい。そこで別棟の小屋を宿泊用に改装して、一棟丸貸しという形で犬と一緒に宿泊できないか、検討している。今のところ犬連れの参拝客や観光客は日帰りするしかないが、宿泊したいとの要望が寄せられる。犬連れの宿泊が実現すれば、神社を訪れる人は増えると見込まれ、いっそうの活性化につながるだろう。
御師として神社の歴史や文化、そして御岳山の自然を守り、後世に伝えたいと考えている。そのためには、守るべきものは守りながらも、時代の変化に対応していかなければならない。まだ20代で経験は浅いが、歴史や文化を次世代につなげるために、地域の活性化に貢献していきたい。