安藤氏によると、多能工化が軌道に乗るまでは苦労だらけだったという。有休ポストを始めた当初は、一人の従業員が一つの工程の仕事しかできない「単能工」の状態。ほかの生産ラインにしわ寄せがくることもあり、残業が増え、従業員から不満が出ることもあった。安藤氏ら管理職が休みをとった従業員の業務を引き受け、残業して作業をこなすこともあった。
ベテランの従業員に任せきりにして属人化している業務も多く、その人がいないとどこに何があるかわからない。他の作業者に円滑に業務の引き継ぎができるよう保管場所を整理したり、作業方法をマニュアル化したりするなど作業環境を整備した。
ベテラン社員からの業務・ノウハウの引き継ぎでは、こんな工夫をした。
「1人に引き継がせるのではなく、同時に2人に引き継ぐ形をとった。引き継ぎの失敗例では、定年間際の社員に若手1人を充ててノウハウを伝えたが、その若手が辞めてしまい、ノウハウが断絶してしまった、ということが起きている。『2人なら怖くない』というのはキーワード。リスク対策だけでなく、引き継ぐ側の心理的・身体的なプレッシャーも下げられる」。
「多能工化」はさらに進化している。従業員の資格取得を支援。フォークリフトやクレーン、溶接の免許や衛生管理者、簿記など複数の従業員がさまざまな資格を取得している。これまで男性管理職が一人でやっていた業務を女性従業員に権限移譲できるようになった。「同じ生産現場での多能工化から他部署・他機能への多能工化と社員のスキルが広がっている。資格を持った従業員が増えれば、事業展開の選択肢も広がってくる」と安藤氏は語った。
多能工化が軌道に乗り、有休ポストをきっかけに残業や休日出勤も同様に「できない日」の申し出ができるようにした。「有休がコントロールできるということは、残業や休日出勤もコントロールしやすくなる」と安藤氏。管理表を作成し、事前に残業ができない日に「×」をつけ、定時に帰宅できるようになっている。