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段ボールでBtoCビジネスを開拓「株式会社FUJIDAN」

2024年 3月 4日

本田展稔社長
本田展稔社長

一般的な段ボールの市場エリアは段ボール工場から60キロメートル圏内だと言われている。それ以上の距離だと輸送コストがかさみ採算が合わなくなる。しかし、人口減少や産業の衰退で商圏が60キロ内で賄えなくなればどうすればいいのか。株式会社FUJIDANは、“おもしろい”と“スピード”の二つの切り口でこの難局を切り抜けようとしている。

個人向け工作キットhacomo事業

hacomoの姫路城 シートを切り抜いて組み立てる
hacomoの姫路城 シートを切り抜いて組み立てる

同社は四国・香川県の東端に位置する東かがわ市に本社を構える。段ボールの設計・デザインから製造まで一貫で手掛けている。ただ、四国の段ボール市場は毎年1~2%のペースで縮小している。本田展稔(のぶとし)社長は「このままでは先細りは目に見えている。企業を顧客とするBtoB型でやってきたが、個人向けのBtoC型商品が必要だ」と考え、社内の包装設計部門に開発を指示した。そこから誕生したのが、工作キット「hacomo」だった。段ボールを切り抜いて組み立てていくもので、かわいい動物シリーズやカプセルガチャ、クリスマスツリーなど、さまざまな商品を展開している。全国の城や名所を再現した「PUSUPUSU」シリーズは、みやげものとして海外からの旅行者にも人気だ。また、世界の名所シリーズは海外にも販路を拡げている。コロナ禍で観光需要が消滅した時期には、YouTubeで作品を投稿した。巣ごもり需要もあり大きな反響を得られた。ある自動車メーカーから、「当社の製品を段ボールで作ってほしい」という思いがけない提案も寄せられたという。

レーザー加工機で微細な部品を切り出す
レーザー加工機で微細な部品を切り出す

本田社長はhacomo事業を早い段階から分社化し、hacomo株式会社を設立した。その狙いを「目的を明確にして独立採算で成り立つようにするため」と説明する。段ボールでBtoC商品を開発するアイデアは、他社でも行われていた。しかし、大半はその後事業として継続できていない。hacomoは開発段階から原価意識を徹底するとともに、あえてマーケティングは行わず市場に多数の商品を投入し続けることで、売れ筋を見つけ出す手法を採った。一つヒット商品が出てもそれに安住することなく、常に新しいものを開発し市場に投入し続けることで、市場を確立させていった。販路も大半の商品は直販しており、消費者の声を直接聞いて商品の改良につなげている。ヒット商品が出れば、それを模倣した商品も出てくるが、かわいさを設計図に落とし込むデザイン力とレーザーカッティング技術で、他社の追随を許していない。「こんなものが紙で作れるの」というおどろきが開発のコンセプトとなっている。hacomoは順調に売り上げを伸ばし、利益率も高い。本田社長は「今では優良企業に育ってくれた」と目を細める。

高くても売れる15の条件チェック

さまざまなBtoC商品を展示する本社工場エントランス
さまざまなBtoC商品を展示する本社工場エントランス

本業の段ボール事業で力を入れているのが、スピードだ。「コンビニで売られている商品は安くはないのに、それでも買っていく。当社も価格以外の付加価値を認めてもらう努力が必要」と言う。その価値の一つが短納期。同社の工場には段ボールシートを製造ラインに投入する大型ロボットや人と共同で作業をするロボットを多数導入している。積極的な設備投資で1日400~500種類以上もの多品種小ロット生産を行っている。この生産体制があるからこそ、短納期も実現できる。また、段ボールを組み立てて納品することで顧客の手間を省くなど、既存事業の周辺で新たな付加価値を提供している。同社には本田社長が考え出した「高くても売れる15の条件チェック」がある。「他社にスピードで優っているか」「身だしなみはきれいか」「相手が求める以上の提案ができているか」などだ。社員にもこの意識は浸透しており、価格競争に巻き込まれない提案力を磨き上げるのに役立っている。同社は原材料やエネルギーコストの上昇を踏まえ、値上げも2回実施したが、ほぼ取りこぼしなく契約を維持できているという。

また、既存の商圏にこだわらず全国に販路を求められる商品として、特殊強化段ボールを開発した。数百キログラム以上の重量物梱包を目的に、既存の樹脂ケースや木箱を代替できる。機械や素材、フイルム業界など、従来の段ボールとは異なる顧客の獲得にも役立っている。

自起自動と二歩先を見据える経営

組み立て作業は生産性向上を常に意識している
組み立て作業は生産性向上を常に意識している

人材育成にも力を入れている。本田社長は社員に「自起自動(本田社長の造語。『自分で起きて自分で動きなさい』という意味)型の社員になりなさい」「二歩先の未来を見据えなさい」と言い続けている。言われてから行動を起こすのではなく、自分で発想して自分でやる。そして全てにおいて二歩先を目指し続ける。中小企業が大手に伍して事業をするには、それぐらいの行動力と知恵がなければならないとの考えからだ。

同社には本田社長が独自に考案した原価計算の手法があり、商品一品ごとに原価が把握できるようになっている。営業担当者はどの商品がどれぐらいの利益率なのかを理解して商談に臨むことができる。財務データは部門ごと、工場ごとに月次で管理できており、市場の変化を迅速に察知して、対策が打てるようにしている。データを攻めと守り両面で活用している。また、カーボンニュートラルへの取り組みとして、本社工場に自家消費型太陽光発電システムを導入し、本社で消費する電力の大半を賄えるようにしたり、CO2 削減につながる主力製造機械の導入、廃材を使用した段ボールパレットを開発したりするなど、温室効果ガスの排出削減に率先して取り組んでいる。こうした取り組みが評価され、2023年に香川県が実施する「第1回かがわ脱炭素促進事業者表彰」の大賞を受賞した。

特殊強化段ボールの販路は全国に広がっている
特殊強化段ボールの販路は全国に広がっている

人材育成への投資も惜しまない。中小企業大学校に中堅クラスの幹部候補生を派遣し、工場革新やチームマネジメント強化、次世代トップリーダー育成などのさまざまなカリキュラムを受講させている。「中小企業大学校は経営スキルを学ぶだけでなく、他社の人との交流を通じて、自社とは異なる経営を知る機会にもなる」と評価している。また、社長や役員が講師を務める社内セミナーも開催し、自起自動型の社員や二歩先の未来を見据えるといった同社の経営の根幹を伝授する取り組みも実施している。

女性活用を本格化

工場の屋根に太陽光パネルを設置
工場の屋根に太陽光パネルを設置

明確な経営方針のもとに堅調に事業を拡げる同社だが、足元で人材確保に課題を抱えている。そこで同社が考えているのが、女性と高齢者の活用。工場の作業を見直し、フォークリフトの運転など、今まで男性が担っていた業務を女性に担ってもらおうとの考えだ。すでに必要な免許を取得した女性社員も登場しているという。「いずれは企業内託児所も作り、工場周辺の子育て世代の女性採用にも取り組みたい」という。同時にロボット導入による自動化も進めていく考え。二歩先の未来へ、本田社長の行動もゆらぎがない。

企業データ

企業名
株式会社FUJIDAN
Webサイト
設立
創業1948年、設立1957年
資本金
4,000万円
従業員数
約110名
代表者
本田展稔 氏
所在地
香川県東かがわ市白鳥1820
事業内容
ダンボールケース製造・販売、特殊三層段ボール製造・販売、印刷紙器など