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イベントとネット通販の相乗効果で参加事業所の販路拡大へ【むなかたアートコレクション】(福岡県宗像市)

2022年7月20日

地元の逸品を販売する「むなこれ」はネット通販との相乗効果でさらに盛り上がる
地元の逸品を販売する「むなこれ」はネット通販との相乗効果でさらに盛り上がる

1.コロナでどのような影響を受けましたか

むなこれのイベントには食品類も数多く出品される
むなこれのイベントには食品類も数多く出品される

むなかたアートコレクション(略称・むなこれ)は、福岡県宗像市を中心に福津市など近隣市町の事業所で構成する任意団体で、現在、工芸品や食料品など34事業所が参加している。商工会や行政などからの支援は一切受けておらず、催事の手数料で運営している。百貨店や地元自治体のイベントなどで声をかけてもらい、都合があえばできる限り出店して参加事業所の商品を対面販売してきた。

発足は2014年。当社(粋工房)がかねてから取引のある岩田屋本店(福岡市中央区)より「宗像市内の工房をいくつか集めて工芸関係のイベントができないだろうか」と打診されたのが始まりだった。参加者を集めていくうちに話はどんどんと大きくなり、「大きな催事スペースを確保するから食品も含めてできないか」という流れになった。しかし、ガラス工芸品を扱う当社は、市内の食品事業所との繋がりがあまり多くなく、出店者集めに苦労した。そこで、私(伊藤幹生社長)の長男の先輩にあたるマルヨシ醤油の吉村一彦専務に協力してもらうことにした。おかげで食品関係の出店者も集まり、約20事業所で岩田屋のイベントに臨んだ。むなかたアートコレクションという名称は、そのイベントのために付けたものだった。

イベント自体は、岩田屋の担当バイヤーが驚くほどの盛況で、参加した事業所も大変喜んでいた。すると、「むなこれを一度きりの集まりにするのはもったいない」という意見が出て、その後、会として発足することとなった。それまでの経緯から当社が事務局となり、私が会長、吉村専務が副会長を務めている。

岩田屋でのイベントはとてもいい宣伝となったようで、その後、北九州市内の百貨店などから声がかかってきた。また、玄界灘の「神宿る島」沖ノ島(宗像市)が2017年に世界文化遺産に登録された際には、市のイベントに呼ばれることが多かった。むなこれとして窓口が一本化されているので、イベント主催者側にしてみれば、事業所ごとに打診する手間が省け、声をかけやすいのだろう。多い時は2カ月に1回のペースでイベントに出店していた。

新型コロナウイルス感染症の影響でイベントが軒並みなくなり、出店が皆無となった。もちろん各事業所は、むなこれのイベントだけで生計を立てているわけではないが、イベントがなくなると、それに合わせて実店舗での売り上げも落ち込んできた。参加事業所の中には店を畳むところもあり、「このままでは、コロナ禍が明けてイベントができる状態に戻る前に、むなこれの参加事業所は全滅してしまうのでは」と危惧されるほどだった。

2.どのような対策を講じましたか

むなこれ参加事業所の商品を販売するYahoo!ショッピング店
むなこれ参加事業所の商品を販売するYahoo!ショッピング店

こうした深刻な状況を受け、むなこれの役員が集まり、「イベントに出店できないかわりに、インターネット通販でお客さまに商品を届けよう」ということとなった。実は、その前からネット通販の話は出ていたが、通販サイトの運営方法など具体的内容は決まらないままだった。結果的にコロナ禍で通販が一気に具体化した格好だ。最初の緊急事態宣言が解除された直後の2020年6月、当社が運営していたYahoo!ショッピング店をリニューアルし、むなこれ参加事業所の商品の販売を始めた。単品のほか、事業所の商品を詰め合わせた「むなかたの贈り物」というセット商品も考案した。

当初は「500円、600円ほどの商品に900円もの送料をつけて買ってくれる人がいるだろうか」と心配する声も聞かれた。しかし、ふたを開けてみると、思いのほか売れ行きは好調。とくに東京など首都圏の購入者が目立った。宗像まで来ることを考えれば、送料なんて安いもの、ということだろう。また通販用の商品開発も進めた。参加事業所の中には、通販に向かない商材を扱っているところもあるが、通販向けに冷凍商品を開発するなどして、なるべく多くの事業所が通販に加われるようにした。現在、Yahoo!ショッピング店に参加しているのは21事業所となっている。

むなこれの参加事業所は、夫婦で営んでいるパン屋や、家族経営の和菓子店など小さい事業所がほとんどで、通販には興味があったものの、これまで手が回らずにいたところが多かった。それだけにネット通販はそういった事業所の販路拡大にもつながったと思う。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

むなこれ会長の伊藤幹生氏(上)と副会長の吉村一彦氏(下)
むなこれ会長の伊藤幹生氏(上)と
副会長の吉村一彦氏(下)

新型コロナウイルス感染症の影響がなくなれば、かつてのように各種のイベントに出店することができると思う。実際、少しずつだが、イベントが開催されるようになってきた。これまでは百貨店など相手から声がかかるのを待っていたが、今後は自分たちでイベントを企画して主体的に進めていきたい。

ネット通販にもさらに力を入れたい。現在、通販サイトのリニューアルも準備中だ。コロナ禍前には、福岡市や北九州市でのイベント中にお客さまから「この商品は宗像のお店以外で売っているのか」と聞かれることが多々あった。「宗像でしか売っていないんですよ」と答えると、「ちょっと宗像まで行くのは遠い」と、お客さまはがっかり。宗像は福岡市と北九州市とのほぼ中間に位置し、どちらからも1時間半ほどかかる場所。公共の交通機関も利便性があまりよくない。せっかく商品を気に入ってもらい、リピーターになる可能性があったとしても、その場限りで終わっていた。

しかし、これからは「宗像の実店舗とインターネットで販売しています」とお客さまに案内できる。イベントとネット通販の相乗効果を高めるような仕組み作りを進め、参加事業所の販路をいっそう拡大していきたい。

企業データ

企業名
むなかたアートコレクション
Webサイト
設立
2014年7月
代表者
伊藤幹生 氏(粋工房株式会社代表取締役社長)
所在地
福岡県宗像市田野2331番地
Tel
0940-62-0272
事業内容
参加事業者の物品販売
参加事業所数
34事業所

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