奥州市との共同研究では、閉鎖されていた酒蔵を借り、市の職員らとともに3年間実験を重ねたという。「米からエタノールをつくる技術は確立できた。また、蒸留かすも家畜のいい餌になった」という。だが、実用化にはコストの壁が立ちはだかり、共同研究は終了することになった。
「循環型社会を構築するプロジェクトに取り組むことができたのは大きな成果だった」と酒井氏。「このままやめてしまったらもったいない」と、自らこの技術を燃料以外の用途で活用する道を模索。2013年から化粧品や食品関連の企業などに向けの新たな事業展開にチャレンジした。「奥州市との共同研究では、オーガニックの原料を使い、トレーサビリティもしっかりしている原料開発ができた。当社の技術が絶対に必要になる」という確信を持っていた。
まだ、SDGsという考え方も生まれていない時期。「企業を回りながら、説得する」という感じだったという。BtoB向けに素材を供給するビジネスを目標にしていたが、当初はなかなかその意義が理解されなかったそうだ。事例をみせようと、自社の素材を活用した化粧品など消費者向け商品の販売にも取り組んだ。展示会にも出展して自社の技術をアピールした。やがて、「貴社のようなコンセプトの素材でモノづくりをしたい」という顧客が現れるようになった。
企業からの協業も目に見えて増えてきた。特に新型コロナウイルスの感染拡大以降、問い合わせは大幅に増加しているという。ゲリラ豪雨など気候変動の脅威を実感するような出来事が増えてきていることも企業の意識に変革を起こしたようで、「『必要だ』と思ってもらい、『そうだね』と共感してもらうまで、結構時間がかかったな、という感じがする」と目を細めた。