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アクト

公共事業から自然環境を取り戻す事業へ転換

アクトは、1983年の創業、測量設計や公共下水の設計を中心に公共事業の補償コンサルタントを手がけてきた。しかし、バブル経済崩壊と同時に公共事業も年々減少していく。尾北俊博社長はこんな状況に直面し「下水の設計をしている過程で、これからは環境浄化、とりわけ排水が問題になる」と判断、新たな道を選んだ。2002年、「土壌汚染対策法」が施行されたのを機に環境分野に参入する。水質・土壌浄化技術の研究に邁進した。

  • 柱になる絶対的な2つの製品
  • 情報を分析し次々と新規事業を創出
  • 大学や高専と幅広い連携、地域との信頼

公共事業から舵を切る

EU(欧州連合)の国々では二酸化炭素(Co2)や揮発性有機化合物(VOC)の削減が進んでおり、「日本でも洗浄などの工程で環境規制が厳しくなる」と考えたのだ。2004年の大気汚染防止法の改正などにより、日本でも水溶性の接着剤や塗料に切り替えが徐々に進んだ。ただし「溶剤のように容量が減少しない水溶廃液は処理費用の負担がかかるため水溶性廃液の処理が問題になる」と考え、排水を減容化する廃液処理剤の開発に取り組んだ。そうして開発したのが「水夢」(すいむ)だ。

水夢は減容化だけでなく、汚水や泥水、産業排水を無害化する機能をもつ無機系の凝集剤。これに続き、セメント洗浄排水などの処理剤「アルカリ中和剤」も開発した。建設現場で用具の洗浄などに使用されている。手に触れても安全な中和剤として販売を伸ばしている。今では同社の2本柱。ともに絶対的な製品となっている。

主力製品である濁りやアオコを除去するタブレットとアルカリ中和剤

新製品を次々と共同開発

その後も次々に新製品を生み出している。2009年には高松工業高等専門学校(現香川高専)の多川正教授と新製品開発で連携し、処理剤と廃液の処理装置を開発した。さらに、2010年には約30分で水槽の濁りやアオコを除去するタブレット(錠剤)を共同で開発、ペット用品の企画・製造・販売会社に業務提携を提案し販売を開始した。

最近では来日した中国人観光客による購入も増えており、2015年度は対前年比で10%の伸びを見込む。尾北社長は産学官連携には「中小企業と大学、高専などの間を取り持つコーディネーターの役割が大きい」と分析、成功に向けては「企業と研究者側とのニーズがずれていることも多い。また、実際に市場に受け入れられるか検証することが大事」と話す。アクトが新事業を次々に生み出せるのは、常にアンテナを広げ情報収集に努めているからだ。社員7名の会社だが共同研究相手は幅広く、複数の開発を同時進行させることが多い。

取水源である湖やため池は季節や環境によってアオコが発生し、悪臭を放って人や家畜に健康被害を及ぼすことが懸念される。アオコが湖沼などの底にたまり、アンモニアを発生させるためだ。

尾北社長は徳島県内の大学が、科学雑誌で藻の成長を高める新薬剤を発表したとの情報を知りすぐに訪問した。ため池などで発生するアオコの成長を逆に抑制・消滅させることにより、悪臭や水槽生物の死滅、腐敗を防止する方法を提案、実用化に向け共同研究を行っている。

香川県と香川高専、アクトの三者契約により香川県小豆島の醤油工場や佃煮工場の煮汁などの食品汚泥の削減の実証実験にも取り組んでいる。また、東日本大震災で放射能被害を受けた福島県のため池除染作業に伴い出てくる放射性物質洗浄排水(セシウム)の浄化処理剤として「水夢」が選択されるなど研究開発は確実に評価されている。尾北社長は「根底にあるのは私が子供の頃、近所の川にドジョウやフナがいて、きれいな水の流れる川や自然を取り戻したいとの考えがあるから」と話す。これからも地域貢献を念頭に、新市場の開拓をする進める考えだ。

One Point

地域との信頼が強み

尾北社長は、徳島県中小企業団体中央会の理事など多くの要職を務める。常に地域貢献を考えながら、次なる事業の戦略を実行する。そのため、産業界を始め、教育機関や研究機関、自治体などの信頼が厚い。産学連携をするうえで、地元との信頼関係が強いことも同社の強みになっている。

企業データ

尾北俊博社長
企業名
株式会社アクト
Webサイト
法人番号
1480001004439
代表者
尾北俊博社長
所在地
徳島県吉野川市鴨島町上下島66番地3
業種
環境商品の製造販売