江戸時代に川越藩の城下町として栄えた埼玉県川越市—。蔵造りの町並みや「時の鐘」をはじめとした歴史的な建造物が立ち並び、平日でも観光客で賑わう。パルテノン神殿を思わせる川越商工会議所の建屋も1927年(昭和2年)に武州銀行川越支店として建造され、国の有形文化財に指定されている。
川越商工会議所は1900年(明治33年)に埼玉県内で最初に設立された商工会議所で、120年以上の歴史を持つ。商工会議所が音頭をとって始まった地域イベントも数多いため、「夏まつりや正月のだるま市といった地域振興業務の比重が高く、逆に個社の経営支援業務は遅れをとっていた」と栗原良則事務局次長兼経営支援部長は振り返る。
現在の会員数は4190社(2月17日時点)。これに対し正規職員は20人で、このうち個社支援を担う経営指導員は9人、経営支援員3人の計12人。ただ、ここ5年間でベテラン指導員が断続的に定年退職し、若手指導員の経験不足による「おっかなびっくり」の姿勢が目立っていた。このため県連合会が広域指導員制度を創設するという話を聞いた段階で、真っ先に飛びついた。
その効果は著しく現れた。高度な経営課題を抱えた事業者に対し、広域経営指導員の第1号となった黒澤元国氏のサポートを受け支援を行った。OJT形式で支援手法を直に学んだ結果、多くの職員が、経営支援に対して前向きな姿勢となり、1社1社本気で課題解決しようとする心意気が感じられるようになった。経営支援部の須山正規副部長は「黒澤さんと同行したことで、とにかくチャレンジしてみようという考えに変わったことと、どういった支援をすればよいか理解できたことが大きい」と語る。個社への経営支援は、課題が多岐に渡ることが多く、支援の組み立て方が非常に難しいが、OJTではこうした点も学ぶことができた。
また課題を一人で抱え込まず、相談し合う土壌が生まれたほか、対話と傾聴の実践力が身についてきたという。広域指導員制度は初年度に集中的に活用し、支援した企業は昨年夏までに17社、これまでに19社に上った。
並行して、人事制度改革に着手した。企業からの経営相談ニーズの高度化・多様化に対応した人材や、マネジメント人材の育成につなげるためで、コンサルタントとともに1年間かけて検討を重ね、等級・給与・評価の各制度を決めた。例えば役職と等級をリンクさせたり、複数部署を経験しなければ昇格できないようなルールを確立。目標チャレンジ制度を導入し、賞与に反映させるなどの運用を進めている。目標チャレンジ制度では、目標を、職員個人が上司と面談をしながら個々で設定する。こうすることで、画一的な評価基準や、支援数などの量では測りきれない性質を持つ個社支援業務への適切な評価が可能となった。