植原社長は起業して間もないころから、奈良商工会議所の会員となり、青年部で活動していた。経営について学びたいという思いが強かったからだ。植原社長は「入っていなかったら、2~3人程度の社員を雇う規模で満足していたかもしれない。会議所でさまざまな経営者と交流をすることで衝撃を受け、今のままではだめだ、会社組織をもっとしっかりと作らないと、と気づかされた」と振り返る。ちょうど、自分が考える会社の将来像を、どうやって従業員に理解してもらい、行動に移してもらうかを悩んでいた時だった。そこで、会議所の講習会で聞いた経営理念の明文化に取り組もうと考えた。
経営理念の明文化は多くの企業が行っている。理念や具体的な行動指針を額に入れて掲示したり、「経営ハンドブック」や「クレド」などの名称で冊子にしたりしている企業もある。植原社長は、「作るならもっと具体的に、社員に求める行動指針を示すものにしたい」と考え、「コーポレート・デザイン・ブック」を作り上げた。企業理念は「『ありがとう』が溢れる未来を創る」とし、「わが社は上質な解体工事を通じて、顧客満足度を追求します。全社員が仕事を通して自分の未来を描くことができ、教育活動を通して社会貢献することを目的とします」と記した。工夫を凝らしたのは「部門別職務分掌」の項目だ。部門や役職ごとに取り組むべき業務内容や行動規範を詳細に示した。例えば、現場の総責任者を担う職長に対しては、「作業前に朝礼をする」「マニフェストの登録(しっかり確認して登録する。委任してもいいが責任は職長にある)」など35項目を、営業事務は「各現場への持ち出し道具の種類・数量等の把握」「工事着工前の近隣挨拶」など22項目と、事細かに記してある。「現場で判断に迷った時に、このデザイン・ブックを読んで基本に立ち返ってほしい」との考えからだ。
コーポレート・デザイン・ブックの初版は、植原社長が2023年4月に一人で完成させた。ポケットに入るサイズにして社員が持ち歩けるようにしている。受け取った社員は「最初はびっくりしたが、経営理念は毎日唱和して頭に入っている。今では取引先に見せて、『当社はこのようなものを作っています』と言うと、相手の反応が変わる。営業トークのきっかけにもなっている」と言い、社員が誇れるものとなりつつある。植原社長は今後も改定を重ねていく考えで、「改定版の作成は、現場の責任者や営業のトップに委ねる」ことにしているという。社長が強い思いで取り組んでいることは、社員にも浸透している。