肝心の“パフォーマー警備員”として採用したのが劇団員だった。阪神地区を中心に活動する劇団の座長、阪口亮さんは、実家が梶屋氏宅の隣だった縁で声をかけられたという。舞台で演じる劇団員は人前でのパフォーマンスに慣れている。さらに、稽古や本番でまとまった休みが必要な劇団員にとって単発の仕事が多い警備員の仕事は相性が良く舞台と両立できる。阪口さんは同じ劇団の柏木滉介さんらとともに採用された。
パフォーマンス付きの警備は主に各種イベントでの需要を見込んでいた。「イベントの来場者が最初に目にするのは誘導に当たる警備員。そこでパフォーマンスを見せればイベント自体の印象も良くなる」と梶屋氏は考えていた。そして、通常の警備用の制服とは別に、パフォーマンス用として目にも鮮やかな赤い制服をオーダーメイドで用意した。
これで準備万端と思った矢先、コロナ禍に見舞われてイベントは軒並み中止。仕方なく、近くの警備会社にお願いして阪口さんらは工事現場などで通常の警備に従事することに。ところが、その際の経験が警備員としての基本を学ぶ修業となり、災い転じて福となったという。「パフォーマンス要員として採用したのに実際には普通の警備の仕事となり、当時は心苦しかったが、結果的には良かった」と梶屋氏は振り返る。身に着けた警備の基本動作をもとに、近くのダンススタジオでパフォーマンスを監修してもらったことで、「単に目立つだけではなく、警備の動作としても文句のつけようのない動きに仕上がった」という。