創業からわずか2年という短期間にもかかわらず、なぜ大手企業から多くの相談をもらえるように成長できたのか。そこには、COOである澤村氏の前職での経験が生かされている。
澤村氏は総合人材サービス会社で、事業戦略や新規事業を担当。プロフェッショナル人材を大手企業にマッチングする事業を手掛けていた。自身が手掛けた、そのサービスを活用したのだ。前の会社も澤村氏の独立をサポート。創業から間もなく、大手自動車系企業とのマッチングが成立した。その後も継続的に取り組みが成長し、顧客から新たな顧客を紹介してもらうことも多いという。
請け負ったミッションはデジタル教育やデジタル人材の育成だった。教育・育成の対象となったのは、定年目前の50代後半の現役社員。デジタル教育をスタートさせると、2人は受講生たちの吸収力の早さに驚かされた。「みんな一生懸命パソコンに向かって、着実に上達している。中には、プログラミングを使いこなせるレベルの受講生まで出てきた」と小林氏。受講生の中では、AIやチャットGPTなど最新のデジタル事情の学習にとどまらず、その後、会社全体のデジタル分野を主導する部署のコアメンバーに抜擢された受講生も現れたそうだ。
少子高齢化を背景に大手企業といえどもデジタル人材の確保は難しい。そこで、デジタル人材を内製化しようとする動きが目立ち始めている。デジタルとは縁遠かった50代の社員のリテラシーを高めることで、再雇用を視野に新たな戦力として活躍する環境を整えることが可能になった。「この年代の人たちは社内の幅広い業務に精通し、社内にどんな課題があるかもよくわかっている。業務に対する深い知識と知見をデジタル技術に紡ぐことで、解決できなかった課題の解決法を導き出す期待も大きい」と小林氏は指摘する。
AIの進化は著しく、ビジネスへの活用が大きな注目を集めるが、小林氏は「AIはあくまで手段であり、道具に過ぎない」と強調する。人間がしっかりと使い道を考えて使ってこそAIはその力を発揮する。デジタル人材の育成はMETRIKAの事業の柱の一つになった。また、デジタル教育での成果が高く評価され、若手社員のデジタル教育、社内の人事や評価制度のシステム開発まで引き受けることになったという。
大手企業との安定した取引は信用に直結する。金融機関もMETRIKAの業務実績を評価し、資金面をはじめ、さまざまなサポートを提供するようになった。また、「AIを使って、こんなことはできないか」という相談が数多く寄せられるようになった。会社の立ち上げにあたっては、中小機構が慶応大学と連携して運営しているインキュベーション施設、慶應藤沢イノベーションビレッジを活用した。「ハードの部分だけでなく、サポートが手厚く、ファイナンス面の相談にも乗ってくれて、金融機関とつないでくれたのも中小機構のおかげ」と小林氏は話していた。