激変する時代を乗り越える中小企業

沖縄発 安心・安全を全面に、顧客の心をつかむ化粧品製造販売【株式会社ポイントピュール(沖縄県島尻郡久米島町)】

2023年 7月 20日

代表取締役社長 大道 敦氏
代表取締役社長 大道 敦氏

1. 事業内容をおしえてください

久米島の海洋深層水を使い、沖縄の自然由来成分をシンプルに配合した化粧品シリーズ
久米島の海洋深層水を使い、沖縄の自然由来成分をシンプルに配合した化粧品シリーズ

当社は久米島の海洋深層水を中心に、沖縄に自生する植物から抽出した天然由来成分や、クチャ(海泥)の吸着成分、海藻から得られる保湿成分など、沖縄の地域資源をふんだんに活用した化粧品、医薬部外品を開発、製造、販売している。

創業は2001年。もともと理美容院を経営していた際に、シャンプーを使うことによる手荒れに悩んでいた経験から、久米島の海洋深層水を使えば、手が荒れない安全なシャンプーができるのではないかと考えた。久米島の人口が減少し、理美容院の売上にも限界があることから、この島にいながら世界に売れるものとして「安心・安全なものをお客様のためにも自分のためにも使いたい」と考え、本社を立ち上げた。

地元久米島の海洋深層水の他、沖縄由来の植物や海藻等の効果・効能を研究し、天然素材にこだわりながら、現在では、1,200以上の商品を開発。2015年には、「がんばる中小企業・小規模事業者300社」、2017年には「地域未来牽引企業」に選定され、2018年には、「第7回ものづくり日本大賞 優秀賞」を受賞した。

イスラム圏から日本に訪れた方が使用できる製品が少ないことに着目し、イスラム教徒向けの製品やサービスを認証する制度の一つであるローカルハラルの認証を取得した。また、2022年度末には、高付加価値の商品づくりと海外展開の拡大を目指し、化粧品製造の品質や安全性に関する国際規格「ISO22716」を取得している。

製造だけではなく、自社商品を販売する店舗も現在那覇市内に2店舗、北谷町に1店舗、久米島に1店舗展開しており、地元客だけではなく、観光客にも選ばれる商品になっている。

売上高は2020年に約5億円だったものが、2021年には約10.5億円と成長することができた。

沖縄、久米島の豊富な地域資源を活用した「安心・安全な商品の提供」や大学等と連携した研究開発体制、微粒化技術などを採用した高付加価値商品を製造する設備・機器の導入、コロナ禍でさらにオンラインの営業力を高めて通信販売のノウハウも構築できたことが大きい。また、社長と同じベクトルで取り組むことができる社員、企業組織体制が構築できていることも成長を実現させた要因と言える。

2. 昨今の外部環境の変化でどのような影響を受けましたか

本社工場はISO9001、ISO22716(化粧品GMP)、ローカルハラルの認証を取得している
本社工場はISO9001、ISO22716(化粧品GMP)、ローカルハラルの認証を取得している

もともと小離島ゆえに物流費の負担が大きかったが、エネルギー価格の高騰がそれに拍車をかけている。原材料からパッケージまで全ての価格が高騰している。大きいものだと9%上昇したものもある。

コロナ禍の物流網への影響として、一時期海外からの入手が困難な材料(ひまわり油等)があったことから、国産に切り替えることも検討している。しかし、原材料を一部変えてしまうだけで、品質(香りなど)が変わってしまうため、そう簡単に変えるわけにはいかない事情もある。

コロナ禍前には海外輸出の具体的な動きが出ていたが、それがほとんど休止に追いやられた。

一方で、巣ごもり需要も相まって、安心・安全な基礎化粧品への関心が高まり、OEMも含め通信販売の売上が大きく伸びたことは幸いだった。

3. どのような対策を講じましたか

合成乳化剤を使用しない基礎化粧品を開発中
合成乳化剤を使用しない基礎化粧品を開発中

可能な範囲で販売価格を見直した。材料の入手が困難な場合は、一時的に商品量をコントロールすることや、仕入れ先の変更を行った。海外展開は、取引先との情報交換を粘り強く継続することで、取引再開のめどがたっている。同時にコロナ禍においても、可能な限り情報収集のため、展示会などへの出展は実施した。商品力をあげるための研究開発や、付加価値の高い商品を製造するための機器の導入も積極的に行った。

また、中小企業基盤整備機構のハンズオン支援を活用して、通販事業をブラッシュアップさせた。内閣府の沖縄域外競争力強化促進補助金を活用し、SDGsに対応した合成乳化剤(PEGなど)を使用しない基礎化粧品の製造を行うための製造装置を導入するなど、国の支援策を有効活用して製造、販売両面の強化に取り組んだ。

4. 今後はどのように展開していきますか

人材育成にも取り組んでいる
人材育成にも取り組んでいる

通販が伸びたことから、ここ数年の売上は好調だ。ただし8割はOEM受託であることから、自社ブランドの売上を伸ばしていきたい。コロナ禍前から海外展開にも積極的に取り組んでおり、量産体制の構築、生産性向上や商品の付加価値向上に向けた設備投資、人材育成にいち早く着手できていることから、今後さらに売上を伸ばしていく。利益率をしっかり意識した売上倍増計画にしたい。

そのためにも、昨年度設置した最新鋭の装置を活用し、自然や肌に負担のない合成乳化剤を使用しない基礎化粧品を開発する。この装置を導入したことで、製品に配合する前の原料を分散、粉砕、乳化、均一化することができるようになった。その結果、浸透性・吸収性・テクスチャーが向上し、化粧品としての効果を実感してもらえる。また、乳化剤などの特定の成分を配合しない、または微量添加での処方の提案が可能になる。

また、久米島町では、近年コーヒー生産に取り組む企業が出始めた。その企業と連携してコーヒー関連の商品作りも仕掛けている。

企業データ

企業名
株式会社ポイントピュール
Webサイト
設立
2001年3月9日
資本金
6,000万円
従業員数
62名
代表者
大道敦 氏
所在地
沖縄県島尻郡久米島町字真謝486-12
Tel
098-896-8701
事業内容
化粧品製造販売、医薬部外品製造販売