DXの最初のきっかけは2021年。2人のパートスタッフの家庭の事情によるもので、1人が名古屋市に転居することになり、もう1人も子どもの小学校入学を機に働ける時間が短くなりそう、という状況となった。「非常にいい関係性を築いている今のメンバーで仕事を続けたい」と考えた西谷氏はまずZoomによるリモートワークを導入。スタッフの子どもについては、“子連れ出勤”を認め、西谷氏のオフィス兼自宅で預かるというアナログ的な手法で対応した。それでも業務の効率化に向けたDXの必要性を強く感じ続けたという。
そんな折、地元の浜松商工会議所が「DX経営塾」(全10回、2022年11月~23年3月)を開催することに。これが次の大きなきっかけとなった。西谷氏は迷うことなく同塾に参加。講師は、前職の建設会社でDXを担当し、2021年の全国中小企業クラウド実践大賞で最高賞を受賞した和田正典・モノデジタル代表取締役。同塾では和田氏がとくに重視する「可処分時間」の創出をテーマに掲げた。
「学んだことを定着させるには(学んだことを)人に教えることが一番」をモットーとする西谷氏は、受講するたびに講義内容をスタッフらにプレゼンテーションするとともに、すぐさま実践に移した。無料のアプリやクラウドサービスを中心に、まずは試しに導入し、1週間ほど使用して選別し、自社の業務に適したものを採用するという手順を繰り返した。その結果、グーグルが提供するアプリ開発プラットフォーム「Google Apps Script(GAS)」など15のツールを正式に導入。「従来は、受注後に顧客と連絡を何度も取り合うなど、実際に仕事に取りかかるまでの時間が長くかかっていたが、DXによって大幅に圧縮できた」(西谷氏)などの成果が、ツールを導入するたびに即座に表れ、最終的には年間約252時間の可処分時間を生みだすことになった。時間に余裕が生じたことで、西谷氏はそれまで多忙を理由に断っていた既存顧客のHPリニューアルを引き受けるなどの営業活動を展開。スタッフを増員することなく、しかも多額の費用をかけることなく、売上高を30%程度アップすることができた。