「当社のコア技術であるチタンコーティングの妖艶な輝きを何とか生かすことができないか、と新たな商品づくり取を始めたのが2011年頃のこと。それがB to Bの下請け企業からの脱却を目指す、自社ブランド開発の第一歩でした」。そう語るのは、日翔工業で新ブランドのプロデュースを一手に引き受ける小長井克久さんだ。
もともと宇宙開発や自動車など部品加工のOEMを中心に、技術屋として最先端の加工技術を提供していた同社。まず小長井さんが考えたのは、海外で話題づくりをして逆輸入するというブランド戦略だった。「例えば“ハリウッドで流行った”といえば日本人も惹きつけやすい。そこで海外をはじめ、ファッション業界やアートシーンなど感度の高い人たちのアンテナに響くような情報発信を積極的に行いました。彼らは既にその業界にマーケットを持っていますから、我々がゼロからアプローチするより早いのです」。小長井さんの狙い通り、イタリアの美術館やニューヨークの店舗ディスプレイといった案件のオファーが舞い込むようになる。
その後も、自社ブランドの構築を目指してroomsや素材展、Magicなど多様なカテゴリーの展示会へ出展し、多様な形状や素材にチタンコーディングを施したプロトタイプを使ってプレゼンテーションを行う。そこで特に商品化の要望が高かったグラスを、ライフスタイルの細部まで確立されたペルソナを想定してブランディングし、高級路線の〈PROGRESS〉として開発。国内展示会への出展などを通して、発売からわずか3年ほどで順調に販路を拡大し、実に売上の7、8割を占めるほど急速な成長を遂げた。