中小企業のイノベーション

子育てのQuality of lifeをぐっと上げる離乳食のサブスク 当事者目線だからこその共感と支持【FUNFAM株式会社(東京都西多摩郡)】

2024年 3月 27日

じっくり調べ、実際に使ってみてよかったものを自身の言葉で伝える。離乳食研究家としてファンも多いYASUYOことFUNFAM代表の藤岡康代氏
じっくり調べ、実際に使ってみてよかったものを自身の言葉で伝える。離乳食研究家としてファンも多いYASUYOことFUNFAM代表の藤岡康代氏

FUNFAM株式会社(ファンファン)の離乳食サブスクリプションサービス、『ごかんごさい』は発足後2年も経たずに大手企業や自治体のビジネスパートナーに抜擢。小さな企業でありながら、絶大なサポートを受けて事業展開する。高評価の理由は、少子化問題や産後クライシスを改善するポテンシャルがあること。ユーザーの生活や意識を革新するアイデアは、代表のYASUYO氏自身の経験から生み出されている。

悩み多き離乳食づくりの救世主

贈答品としてデパートで、また、高級ホテルのキッズ用食器としても利用されている竹食器。SDGsの観点から、こちらの食器も注目度が高い
贈答品としてデパートで、また、高級ホテルのキッズ用食器としても利用されている竹食器。SDGsの観点から、こちらの食器も注目度が高い

毎月子どもの月齢に合わせた離乳食用食材が届くサブスクリプションサービスの『ごかんごさい』。添加物が少なくアレルゲンを避けた食材とレシピ、月齢に合わせた育児雑誌や絵本がセットになった内容で、生後5~6か月の「初期」から「完了期」、そして離乳食卒業後の「幼児食」まで成長に合わせた5段階のメニューがそろう。定期契約すると育児雑誌や赤ちゃんに読み聞かせをする絵本が届き、かつLINEで子どもの食に関する相談をいつでも受け付ける。月に一度、月齢ごとのオンライン教室も開催されるなど、トータルサポートが魅力。しかし最大のポイントは、まったくのレトルト食品ではなく、必ずひと手間かけるようになっていること、そして5歳までに身に付くといわれる味覚や触覚、嗅覚といった五感を養うための工夫がされていることだ。「ごかんごさい」は「五感を五歳までに養う」という意味が込められている。

FUNFAM株式会社はもともと竹の食器を製造するものづくりの会社。老舗家具屋の社内ベンチャーとして2011年に設立し、森林伐採や竹害といった問題をクリアすべく竹を用いた子ども用の食器を作っていた。はじめはたった1品しか商品がなく、トレードショーでも「ウチのブースだけすごく寂しかった」というほどだったが、3度目の出品で大手デパートから買い付けてもらうことができた。

お客の質問がきっかけに

YASUYO氏のお話はエビデンスに基づいた食育から、同じ悩みを持つ主婦としての悩みまで内容が幅広い。離乳食スクールが人気になるのもうなずける
YASUYO氏のお話はエビデンスに基づいた食育から、同じ悩みを持つ主婦としての悩みまで内容が幅広い。離乳食スクールが人気になるのもうなずける

出産祝いなどのプレゼントや、スタイリッシュな食器を求める人に注目され、大きくはないが安定的に売り上げを伸ばしていったおり、購入者から「この食器にはどのような料理を盛りつければいいのか」という質問があった。子ども用食器に盛りつけるなら、離乳食だ。独身時代は国際線のキャビンアテンダントとして世界中を飛び回っていたYASUYO氏。先輩から「いい体験をしている人はいい接客をすることができる」と聞かされ、世界各地で多くの美食体験をしてきた。その経験を活かして、レシピを開発しては——、とひらめいた。

百貨店と良好な関係を築いていたこともあり、エレベーター下の空きスペースを借りて、小さな講座を開かせてもらうと、簡単で見た目もよい離乳食を自社の食器に盛りつけて、とデモンストレーションの役割も果たす。足を止めてくれるお客も多く、ニーズの高さを実感。YASUYO氏のファンが増え、離乳食講座『Club YASUYO』は数年続く人気スクールとなっていった。

保護者の気持ちに寄り添って

ミルクの補助食としての離乳食ではなく、栄養や食育までも考えたうえでのレシピ提案と食材、そしていつでも使える相談窓口のセットだ
ミルクの補助食としての離乳食ではなく、栄養や食育までも考えたうえでのレシピ提案と食材、そしていつでも使える相談窓口のセットだ

実はYASUYO氏、自身の子どもに重度のアレルギーがあったため、離乳食に関してはかなりの知識をもつ。というのも、小児アレルギーに詳しい医師に理想的な離乳食について聞き取りをしたところ、「鳩だのワニだの、気軽に手に入れられる食材がほとんどなかった」。ふつうに一般家庭でできることはないのか? と勉強をはじめ、アレルゲンから添加物まで、子どもに与える食材はすべてつぶさに自分でチェックした。

程度の差はあれど、離乳食の食材選びは多くの保護者が気にしているところ。YASUYO氏自身も食品の安全性やアレルゲンの有無など、数ある市販の商品の中から子どもに合ったものを選ぶだけで疲弊していた。レシピだけでなく、食材選びからが離乳食づくりなのである。また、働きながら子育てする人でもとかく「手作り」が評価される傾向にある。オーガニックなど健康的であることをうたう離乳食レトルトは高いし、はっきり言って、離乳食づくりはしんどい。そのうえ、「子どもの五感は五歳までに養いたい」という教育目標を入れてしまうと、保護者の負担は計り知れないものになる。

だが、YASUYO氏の離乳食レシピではひと手間加えるだけ、といった簡単なものが多い。レトルトに頼りきると罪悪感をもつ人が多いなか、ひと手間かかっているだけでそれが払しょくされる。それも、それぞれの食材がもつ食感などの特徴を残すためのひと手間ゆえ、味覚をはじめ子どもの五感を刺激する食育を兼ねているのだ。「顆粒だしも使いますよ。でも、オーガニックや専門店の商品でも塩分が強いものはNG。濃い味付けのものばかり食べさせると、味覚が弱くなってしまいます」とYASUYO氏。このサービスを開始してから、食品メーカーからのラブコールも多いが、サンプルとして無償提供などどんな好条件を提示されてもここは絶対にゆずらないという。

離乳食づくりの意識改革に大きな期待

出版社の協力を得て作られる冊子と絵本。それぞれ偶数月と奇数月の交互に届く。絵本ももちろん子どもの月齢に合わせた内容になっている
出版社の協力を得て作られる冊子と絵本。それぞれ偶数月と奇数月の交互に届く。絵本ももちろん子どもの月齢に合わせた内容になっている

百貨店での人気講座は数年続いたが、2020年にパンデミックに突入すると、当然スクールも開催ができなくなった。そこでオンライン化して対応したが、それが思わぬ僥倖を呼ぶ。これまでは首都圏在住者がほとんどだったが、地方の人も参加してくれるようになったのだ。使っている食品などをお勧めするとそれも買いたいという人が多く、「どこで買えるの?」の言葉に、しっかり離乳食に特化した商品を作るべきだと考えたという。

そこでまず、サービスを開始する前にクラウドファンディングで「こんなサービスがあったら使いたい人」と意見を募集した。100万円を目標とし、リターンとしてお試しボックスを提供するというものだったが、70万円で未達成。だが、その後FUNFAMは出版最大手の小学館とその子会社ShoProが共同開催する『小学館アクセラレーター(※教育分野における新規事業への支援プログラム)』の支援企業に見事選出され、2020年11月から『ごかんごさい』を本格的にローンチした。定期購入者わずか10人というスタート。しかしこれは強力な援護射撃となり、付録となる絵本や冊子の制作などより充実したサービスを提供できるようになった。

オンラインスクールと宅配から成る『ごかんごさい』の反響は上々。ひとりで子育てに向き合ってきた保護者からは、スクールを通じて全国に“ママ友”ができ、悩みを共有し相談できる相手ができたことで気持ちが明るくなったという声が届く。また、「赤ちゃんの発語を促したり脳の発達に影響があるなど、離乳食の重要性やごはんのあげかたなど丁寧に書かれているため、夫も離乳食づくりに興味をもち参加してくれるようになった」とも。調べものや買い出しなどの手間が省かれ、かつ簡単にできる料理が多いことで気持ちに余裕ができ、付録の冊子にしたがって「これはとろとろしているね」などと声をかけながらゆっくり赤ちゃんとの離乳食時間を楽しむ。これこそが『ごかんごさい』の目的で、その意図は正しく利用者に伝わっているようだ。

信用と安心を礎に筋が通ったビジネスを

本社兼工房は、奥多摩の自然に囲まれた場所に。オンラインと通販がメイン事業であるため、都心部のオフィスを維持するコストを抑えることができる
本社兼工房は、奥多摩の自然に囲まれた場所に。オンラインと通販がメイン事業であるため、都心部のオフィスを維持するコストを抑えることができる

とんとん拍子に見えるが、ローンチしてから変えていったことも多い。YASUYO氏によると「まず、当初に設定していたペルソナが間違っていました」。都心部に住む、高級ママファッション誌を愛読するような層としていたが、百貨店に行けばすぐにモノが手に入る都会の人より、地方の人の利用者が多かったのだ。

YASUYO氏は、サブスクの継続率を高めるため、料金体系と解約方法を改善した。1回ごとに支払うスタイルでは、継続率が低く、幼児食までずっと続くとなると抵抗感があることがわかった。また、YASUYO氏自身がほかのサブスクを利用した際に、解約の難しさや面倒くささを痛感したことから、解約がしやすいようにプランを変更。様々なプランを設け初期費用の負担を軽減し、よさを理解してもらいやすくすることで、LTVの向上を図った。

現在は300人を超える定期購入者と、東京都の出産支援カタログにも採用されており、徐々に人気を伸ばしているが、儲かっているか?というとそうでもないという。ただ、「資金を借りて大きく広告を打ったりはしない」とYASUYO氏。もともと『Club YASUYO』のファンだった人たちも、信頼できるYASUYO氏のおすすめだからと安心して購入してくれていた。それは他ならぬ、YASUYO氏自身が苦労して見つけ、試行錯誤して編み出したレシピや安全食材だからであって、そこに共感しているのである。だから先述のように企業案件でもお断りするし、自分たちだけの資金でやりくりする。

FUNFAMは厚生労働省が主催する『第9回 健康寿命をのばそう! アワード』でも「厚生労働省子ども家庭局長優良賞」を受賞している。これは子育て・教育・保護者のメンタルや健康に貢献する事業であると厚労省から認められた証だ。有名人に広告に出演してもらうよりも強い信頼ではないだろうか。

企業データ

企業名
FUNFAM(ファンファン)株式会社
Webサイト
設立
2011年
資本金
1000万円
従業員数
9名
代表者
藤岡康代 氏
所在地
東京都西多摩郡檜原村本宿702-1
Tel
042-519-9520
事業内容
食器及び調理器具類の企画デザイン製造卸販売業
生鮮品及び加工食品の企画デザイン卸販売業
料理イベント及びスクール運営業
飲食店プロデュース及びコンサルティング業
飲食店への人材派遣業
レシピなどの出版及び広告代理業