ドライバーの労働環境の改善に向けて、菱木氏が次のテーマとして取り組んでいるのが、乗務員時計のシステムを生かした「待機時間」の解消だ。
運送の業務では、発送側の「発荷主」から荷物を引き受け、受け取り側の「着荷主」に引き渡す。その間のトラックへの荷積み、荷降ろしの作業になかなか入れず、トラックが待機する時間が発生してしまう。菱木氏によると、長ければ、3~4時間も待機することが少なくないそうで、「『待機』がなくなれば、通常の8時間程度の就業時間を実現することが可能になる」と指摘する。
菱木氏は、「乗務員時計」に記録された待機時間のデータを荷主側と共有し、サプライチェーン全体で待機時間を削減できるような仕組みの構築を目指している。
待機時間は荷主、運送会社、それぞれの都合で発生する。トラックが現場に来る指定時間を設定し、それより早い時間は運送会社の責任、遅い場合は荷主側の責任という形で切り分け、荷主側の都合で発生する待機時間を「見える化」する。そのデータをAIで分析するなどして、待機時間が多く発生する曜日や時間帯に荷主側に作業員を増やすなどの対策を取ってもらうというものだ。
待機時間の問題は荷主を含むサプライチェーン全体での対応が求められる。運送会社が持つデータを荷主側と連携して活用することで、問題意識を共有し、問題の解決を図る。「運送会社にとって、荷主は大事なお客様。こちらから強く言えば、カドが立つ。『パートナーシップ』というところからコミュニケーションをうまくとりながら進めていきたい」と菱木氏は話していた。
運送業界の「働き方改革」に対しては、「2024年問題」で取り上げられるようなネガティブな課題が根強く残る。しかし、菱木氏のように積極的にDXに取り組むことによって課題解決につながる期待は大きい。ドライバーの労働環境が改善されることで、若い人材が安心して仕事として選択する土台をつくることも可能だ。
「運送の仕事は自分の空間で仕事ができ、人間関係にわずらうことも少ない。そういう仕事が向いている人もいる。他業種と同じ労働条件に持っていければ、逆にドライバーの方がいいという形にもなりうる」と、「働き方改革」を前向きにとらえることの大切さを菱木氏は説いている。