研修では、参加した商工会議所の職員が主体的に動き、経営者に課題を提案するまでの支援を行う。経営者だけでなく、経営幹部や従業員らへのヒアリングを通じて本質的な経営課題をあぶりだす。2024年5月末にキックオフチームミーティングを開催。関東経産局の担当職員、中小機構のOJTインストラクターらが集まり、支援先企業の経営状況や業界動向、支援先企業をヒアリングするための質問内容などをチームで共有した。
6月上旬に支援先を訪問。経営者に対して最初のヒアリングを実施した。経営者が抱えている課題は何か。事業内容や財務や労務など幅広い視点から対話を行い、課題を探った。そのヒアリングの内容を踏まえて、6月下旬に2回目のチームミーティングを開催。次回のヒアリングに向けて追加して聞く必要のあるテーマなどを確認し、7月に第2回ヒアリングに臨んだ。経営者に加えて、妻である総務部長の話も聞き、8月上旬に開いた第3回のヒアリングでは、現場を支える従業員の見方を探った。
経営者だけでなく、社内の複数の当事者をヒアリングすることで別の視点からの課題を導き出す。「経営者から『これが課題』と言われたものは、課題として見えやすいが、水面下にある課題をいかに発掘・発見するかが大事。ヒアリング後にチームミーティングを開き、『これが課題ではないか』と仮説を立て、メンバーで検証した」と大友氏と田部井氏は話す。仮説として立てた課題を第3回ヒアリングで経営者に提示し、意見を聞いた。インストラクターら専門家からも幅広い視点に立った意見をもらい、提案内容に磨きをかけ、8月下旬に経営者との最後の面談に臨んだ。
ヒアリングの中で浮き彫りになった課題の一つは、経営者の経営に対する思いを若手の従業員に伝え切れていないことだった。以前は経営者自身も従業員と現場に出ていたが、ベテラン従業員に仕事を任せるようになり、コミュニケーションの機会が減っていた。また、会社の経理を取り仕切っていた総務部長が過去に入院した際、事務作業が1カ月停止したことがあり、事務要員の確保も問題として浮かび上がった。
そこで、2人は「経営者が考えるビジョンの言語化」「従業員の育成」「従業員の新規雇用」という3点を取り組み課題として提示した。課題の解決に向けて、経営計画書の作成支援や人材育成計画の作成や見直し、専門家派遣による雇用契約内容の見直しなど商工会議所としてサポートできるさまざまな支援策を経営者に提示した。また、取り組み課題に加え、後継者問題を大きな課題としていたことから、後日、事業承継の公的な相談窓口である「事業承継・引継ぎセンター」の活用を働きかけた。